健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

苦参

2012年08月16日 | 健康
○苦参(くじん)

 日本各地、朝鮮半島、中国、シベリアなどに分布するマメ科の多年草クララ(Sophora flacescens)の根を用いる。苦参という名は苦い根という意味で、和名のクララも苦いためにクラクラとすることに由来する。

 成分にはアルカロイドのマトリン、オキシマトリン、アナギリンやフラボノイドのクラリノールなどが含まれ、マトリンには中枢神経抑制や血管や子宮を収縮する作用、利尿作用、抗真菌・駆虫作用などが報告されている。

 このマトリンや種子のシチシンなどのアルカロイドは有毒であり、誤飲すれば痙攣などが発現する。またクララの茎や葉の煎液は農業用の殺虫剤としても知られている。漢方では清熱燥湿・止痒・利水の効能があり、さまざまな炎症や細菌性の下痢、排尿障害、湿疹や皮膚掻痒症などに用いる。

 下痢には木香・甘草などと配合し、黄疸には竜胆・山梔子などと配合し、帯下などには黄柏・蛇床子などと配合する。皮膚疾患には外用薬としても用いる。近年、中国では細菌性腸炎や肺炎、扁桃炎などに苦参注射液、急性肝炎などに苦参の粉末カプセル、白癬菌症に苦参エキスの配合された軟膏などが応用されている。

枸櫞皮

2012年08月15日 | 健康
○枸櫞皮(くえんひ)

 日本ではミカン科の常緑果樹レモン(Citrus limon)の成熟果実の皮を枸櫞皮という。ところで中国の植物名で枸櫞というのはシトロン(マルブッシュカン:C.medica)のことで、その生薬名は香櫞という。レモンはインド北東部原産とされ、シトロンから派生したといわれている。ちなみにレモンのことをフランス語でシトロンという。

 レモンは中国も宋の時代に伝えられたが、あまり栽培されなかった。日本には江戸時代末になって伝わり、瀬戸内海の島々などでもかなり栽培されていたことがある。クエン酸という名はレモン汁から最初に単離されたことに由来し、かつてクエン酸の製造原料にもされていた。

 レモンの皮には精油が含まれ、主成分のd-リモネンやシトラールのほか、フラボノイドのヘスペリジンなどが含まれる。レモンは古くから航海などにおけるビタミンCの補給源として利用され、また果汁のクエン酸には殺菌効果がある。枸櫞皮は芳香性健胃薬や芳香料として用いられるほか、レモンパックやレモン風呂などの美容面にも利用されている。

枸杞葉

2012年08月14日 | 健康
枸杞葉(くこよう)

 ナス科の落葉小低木クコおよびナガバクコの柔らかい葉や茎を用いる。果実は枸杞子、根は地骨皮という。クコの若葉は和え物にしたり、ご飯に炊き込んで枸杞飯などにも利用できる。

 仙人の薬といわれる地仙丹とは、春のクコの葉「天精草」、秋のクコの果実「枸杞子」、冬のクコの根「地骨皮」を併せて丸薬にしたものと伝えられている。

 葉にはベタイン、ルチン、β-シトステロール、ビタミンCなどが含まれ、動脈硬化の予防や降圧作用がある。漢方では滋養・清熱・明目の効能があり、体力の低下や精力の減退、微熱、視力低下などに用いる。ただし、葉は漢方生薬としてより茶剤として利用されている。一般にクコ茶として動脈硬化や高血圧の予防によく利用されている。民間では安眠薬としても用いられる。また茎や葉を煎じた液は毛髪のクセを治す作用があるともいわれる。

枸杞子

2012年08月13日 | 健康
枸杞子(くこし)

 日本から朝鮮、中国、台湾、マレー半島に分布するナス科の落葉小高木クコ(Lycium chinense)、およびナガバクコ(L.barbarum)の成熟した果実を用いる。クコの根皮は地骨皮といい、葉は枸杞葉という。

 神農本草経の上品にも枸杞の名があり、古くから不老長寿の効があるといわれ、日本でも平安時代から強壮薬としてよく知られている。果実は2cm程度の長楕円形で、成熟した果皮は赤く光沢がある。枸杞は中国の薬膳料理にもしばしば用いられ、また日本でも枸杞酒として親しまれている。

 果実にはベタイン、ゼアキサンチン、フィサリエンや各種ビタミンなどが含まれ、降圧作用や抗脂肪肝作用などが報告されている。漢方では肝腎を補い、血を補い、目を明らかにする効能があり、視力の低下や眩暈、腰や下肢の倦怠感、性機能障害などに用いる。すなわち枸杞子は不老長寿、抗老薬の代表的な生薬である。枸杞子は寒熱に偏らないため陰虚と陽虚のどちらにも使用できるが、おもに陰虚に用いられる。

藕節

2012年08月11日 | 健康
藕節(ぐうせつ)

 インド、中国、ペルシャ、オーストラリアに分布するスイレン科のハス(Nelumbo nucifera)の根茎の節部を用いる。ハスは部分によりいくつかの生薬に分けられ、葉は荷葉、花托は蓮房、雌しべは蓮鬚、果実は蓮実、種子は蓮肉、子葉は蓮子芯という。

 日本にも古代からハスは渡来していたが、鎌倉時代以降に食用品種が導入され、さらに明治時代に優れた中国系の食用バスが導入されてハスの栽培が盛んになった。ハスの根はレンコン(蓮根)であり、中国や東南アジア、日本などで食用にされている。中国では根茎を藕といい、節のところだけを藕節といって生薬に用いる。

 藕節にはタンニンやアスパラギンが含まれる。漢方では止血の作用があり、新鮮な新藕節には涼血・止血、炒った藕節炭には去痰・吐血の効能がある。一般には下血や血尿、喀血、鼻血、不正性器出血などに広く用いるが、炎症性のものには新鮮な藕節の汁のほうが効果がある。例えば鼻血が止まらないときには新鮮な汁を飲むと同時に鼻にたらす。しかし薬力は弱いので、一般には他の止血薬と配合して用いる。中国南部では止血以外にもハスの節やレンコンを咽の痛みや咳嗽などに用いている

キンマ

2012年08月09日 | 健康
○キンマ

 マレーシア地域を原産とするコショウ科の常緑つる性植物キンマ(Piper betle)の葉を用いる。中国では果穂を蒟醤、葉を蒟醤葉という。現在ではインド、アフリカ、中国南部、台湾などでも栽培されている。

 葉には香りがあり、刺激的な味がする。東南アジア、インド、ミクロネシアなどでは、古くから檳椰子を割ったものと、消石灰をキンマの葉で巻きつけ、ベテルと称するチューインガムのような嗜好品として知られている。地方によってはこれに阿仙薬やタバコ、丁香も肉豆蔲なども混ぜて供されている。

 ベテルは酒やタバコに匹敵する嗜好品で、口臭を除き、消化を助けるとともに興奮剤としての効果もある。檳椰子の中の成分が石灰と反応して、噛むと真っ赤な汁が出て、唾液や唇が赤くなり、歯や歯茎は赤黒く染まる。タンニンが多いため歯槽膿漏の予防になるともいわれている。

 キンマの葉にはカビコール、カビベトールなどの精油成分が含まれ、降圧、抗菌、抗寄生虫作用などが知られている。中国医学では止咳・止痛・消腫の効能があり、咳嗽や胃痛、脚気、湿疹などに用いる。

金沸草

2012年08月08日 | 健康
○金沸草(きんふつそう)

 日本の各地、朝鮮半島、中国に広く分布するキク科の多年草オグルマ(Inula japonica)、および同属植物の全草を用いる。中国では地上部を用いる。また頭花の部分だけを旋覆花という。よく似た同属植物のオオグルマ(I.helenium)の根は土木香として用いる。

 オグルマの地上部にはイヌリンシンなどが含まれるが、詳細は不明である。漢方では解表・消腫の効能があり、感冒や咳嗽、脇の痛み、腫れ物などに用いる。旋覆花と効能はよく似ているが、化痰・化飲の効能は金沸草のほうが強いといわれている。感冒や気管支炎などによる咳嗽や喀痰には前胡・荊芥などと配合する(金沸草散)。

金蝉花

2012年08月07日 | 健康
○金蝉花(きんぜんか)

 金蝉花とはいわゆるセミタケ(Cordyceps sobolifera)のことである。セミの幼虫とそれに寄生したバッカクキン科の真菌であるセミタケの子実体とを合わせたものを金蝉花という。

 セミタケの属名を冬虫夏草属といい、同属のフユムシナツクサタケによる冬虫夏草も生薬として有名である。中国産のセミタケはセミ(山蝉)の幼虫の頭部から1.5~6cmの柄が叢生しているもので、新鮮なときは白色をしている。

 漢方では定驚・退翳の効能があり、小児のひきつけや癲癇、夜泣き、角膜混濁などに用いる。ちなみに日本各地でニイニイゼミに寄生するセミタケがしばしば採取されるが、この子実体は淡褐色の棍棒状であり、市場性はない。近年、ツクツクボウシの幼虫に寄生するツクツクボウシタケ(Lsaria cinclairii)の培養液から抽出された活性成分のミリオシンに免疫抑制作用が認められ、ミリオシンから合成されたFTY20は新しい特性を有する免疫抑制剤として注目されている。

銀柴胡

2012年08月04日 | 健康
○銀柴胡(ぎんさいこ)

 中国の陝西・甘粛・遼寧省などの乾燥地域に分布するナデシコ科の多年草フタマタハコベ(Stellaria dichotoma)、またはその近縁植物の根を用いる。銀柴胡とは銀州(陝西省神木県)に産する柴胡という意味であるが、柴胡はセリ科の植物で全く異なる。

 フタマタハコベは乾燥した草原や岩の間に生え、ハコベのような花が咲く。根にはサポニンが含まれ、加水分解するとギプソゲニンが得られる。漢方では清熱涼血・清虚熱の効能があり、虚労による発熱、マラリア、虚弱児の発熱などに用いる。

 虚熱とは結核やマラリアなど慢性の消耗性疾患にみられる長く続く微熱や盗汗などの症状のことをいい、銀柴胡はもっぱら虚熱の治療薬としてよく知られている(清骨散)。また小児の栄養失調や腺病質にみられる発熱にも用いる。

金銀花

2012年08月03日 | 健康
○金銀花(きんぎんか)

 日本、朝鮮半島、中国に分布するスイカズラ科の常緑つる性植物スイカズラ(Lonicera japonica)の花蕾を用いる。スイカズラの名は口に含むと蜜のよい香りがして甘い、あるいは花弁の形が子供が蜜を吸う口の様子に似ていることに由来する。

 漢名では花の色が白から黄に変化することから金銀花あるいは双花と呼ばれ、葉が冬でも枯れないことから忍冬の名がある。中国では茎や葉が忍冬という生薬名で古くから用いられていたが、明代以降はおもに花が用いられるようになった。一般に花のほうが茎葉よりも清熱・解毒の効能が優れているといわれている。

 花の成分には蠟質のセリルアルコール、イノシトール、タンニンなどが含まれ、抗菌作用、抗真菌作用などが認められている。漢方では解表・清熱解毒の効能があり、化膿性皮膚疾患や感冒、扁桃炎、乳腺炎、腸炎などの感染症に常用されている。日本の民間では花を酒に浸し、少し温めたのち1ヶ月間置いて薬酒を作る。愛知県犬山の忍冬酒が有名で、皮膚病や不老長寿の薬酒として知られている。