健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

威霊仙

2012年02月04日 | 健康
○威霊仙

 沖縄県、台湾、中国南部、インドシナ半島東部に分布するつる性低木キンポウゲ科のサキシマボタルヅル(別名:シナセンニンソウ Clematis chinensis)の根を用いる。そのほか中国では同属植物のセンニンソウ(C.terniflora)や東北鉄線蓮(C.manshurica)などの根も使用されている。日本でも同属のテッセン(C.florida)やカザグルマ(C.patens)などの根を威霊仙として代用している。これらはいずれもクレマチス属(センニンソウ属)のつる性植物である。ただし、中国ではセンニンソウの根を特に鉄脚威霊仙と称している。また「開宝本草」や「救荒本草」などではゴマノハグサ科のクガイソウ(Veronicastrum sibiricum)を威霊仙あるいは草本威霊仙と記しているが、現在は使用されていない。生薬名の威霊仙の威とはその性質が猛、霊仙とはその効果が速やかなことをいう。

 威霊仙の成分にはアネモニン、アネモノール、有機酸などが含まれ、血糖降下作用や鎮痛作用が報告されている。ちなみにセンニンソウには毒性があり、生汁が皮膚につくと発赤・水泡ができるが、生の葉を手首に貼り、水泡を作って扁桃炎を治療するという民間療法もある。かつて葉は魚毒やウジ退治などにも利用されていた。

 漢方では去風湿・通経絡の効能があり、リウマチや痛風などによる関節痛や筋肉痛、手足のしびれ、脳卒中後遺症による半身不随などに用いる。また魚の骨がのどに刺さったときには威霊仙を水あるいは米酢で煎じて、ゆっくりと飲めばよいといわれている(去骨湯)。

委陵菜

2012年02月03日 | 健康
○委陵菜(いりょうさい)

 日本の本州以南、朝鮮半島、中国、台湾などに分布するバラ科の多年草カワラサイコ(Potentilla chinensis)の根または根のついた全草を用いる。川原や海岸の砂地などに生え、根の形がセリ科のミシマサイコ(柴胡)に似ているためカワラサイコといわれる。この全草は中国の東北・華北地区で翻白草、中国南部の地区では白頭翁として作用されている。日本では柴胡の代用品として解熱薬に用いられたこともあるが、効果は疑問視されている。

 中国医学では清熱解毒・去風湿の効能があり、アメーバ赤痢や細菌性腸炎などによる下痢や腹痛、あるいはリウマチなどによる関節炎や四肢の麻痺に用いる。また出血や皮膚化膿症に止血・解毒薬としても外用する。

伊保多蝋

2012年02月02日 | 健康
○伊保多蠟(いぼたろう)

 カタカイガラムシ科の昆虫イボタロウカイガラムシ(Ericerus pela)の幼虫がモクセイ科の樹木の枝や幹に分泌した蠟状の物質を精製したものを用いる。この昆虫の寄生する樹木として日本ではモクセイ科のイボタノキ(Ligustrum obtusifolium)やトネリコ(Fraxinus japonica)が知られているが、中国ではトウネズミモチ(L.lucidum)やシナトリネコ(F.chinensis)が有名である。

 イボタノキは日本各地の山林中に見られる落葉低木である。伊保多蠟は富山県や福島県で多く産する。イボタロウカイガラムシの成虫のオスは翅開張は4mmくらいの小さな虫である。メスは受精すると著しく膨大して球形となり、イボタノキに産卵する。孵化した幼虫のオスは枝にじっとしたまま樹液を吸って体から白色の蠟物質を分泌し、体外を包み、この蠟が相互につながって枝が白く覆われる。夏の早朝にこの枝を切り、沸騰した湯の中に入れて蠟を溶かし、水面に浮いたものを冷やして固めたものが伊保多蠟(虫白蠟)である。このロウは戸のすべりや家具のつや出しに、中国ではロウソクの原料に用いられる。

 成分には脂肪酸のセロチン酸、イボタセロチン酸、セリルアルコールなどが含まれる。民間では疣(いぼ)の根元を絹糸で縛り、その上からロウをつけて治療するため、イボタノキ(イボ取リノ木)の名前がある。漢方では止血・生肌・止痛の効能があり、おもに膏薬として外科の治療に用いる。

イヌサフラン

2012年02月01日 | 健康
○イヌサフラン

 北アフリカ、ヨーロッパ南部を原産とするユリ科の球根植物イヌサフラン(Colchicum autmnale)の種子(コルヒクム子)や根茎(コルヒクム根)を用いる。秋にサフランに似た花が咲くが、葉がないうちに花が咲くので「裸の貴婦人」という呼び名もあり、日本でも観賞用に栽培される。

 古代エジプトにおいてイヌサフランを種々の痛みに用いたといわれているが、非常に有毒であるため、その後はあまり利用されなかった。摂取すれば嘔吐、下痢、皮膚の知覚障害、呼吸困難などが出現し、死に至ることがある。6世紀にヒマラヤ地方に成育するイヌサフランの近縁植物が痛風に効果があることが記述されているが、イヌサフランが薬用として注目されたのは18世紀以降である。フランスにおいて薬用酒が痛風の特効薬として売り出され、ヨーロッパ大陸やイギリスで大変よく売れた。

 イヌサフランの全ての部位にアルカロイドのコルヒチンが含まれ、コルヒチンには中枢性の知覚麻痺、末梢性の血管麻痺作用があり、痛風の痛みに特異的に奏功する。コルヒチンは痛風の原因である尿酸の合成や排泄には作用せず、白血球の代謝活性を抑制し、尿酸の微細結晶に対する食作用を減少させ、結晶沈着の循環を阻害すると説明されている。

 ヨーロッパではチンキ剤として、日本では精製した純品が痛風の治療に用いられている。近年ではベーチェット病の眼症状の治療にも用いられる。副作用として悪心や嘔吐、下痢、脱毛などがみられる。このほかコルヒチンは植物の細胞分裂を妨げるが、染色体の分裂は阻害しないため染色体数を倍化させる特異な性質があり、種なしスイカや収穫量の多いワタなど新品種の開発などに応用されている。