健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

鳥賊骨

2012年02月16日 | 健康
鳥賊骨(うぞくこつ)

 日本の近海や中国の沿岸に生育する軟体動物コウイカ(Sepia esulenta)などの内殻、すなわちイカの甲を用いる。日本近海には100種以上のイカが知られているが、コウイカ類は楕円形をした胴の左右に薄いひれを有するという特徴がある。

 一般にイカの甲はセルロイド質であるが、コウイカ類の甲は石灰質である。コウイカの甲は長さ10~15cmくらいの紡錘系で、後端にはするどい針がある。成分は主に炭酸カルシウムであるが、そのほかリン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなども含まれる。炭酸カルシウムには制酸作用があり、胃・十二指腸潰瘍に効果がある。

 薬用には細かく砕いて使用するが、一般には焙って粉末にしたものを用いる。漢方では止血・止帯・固精・生肌の効用があり、鼻血、吐血、血便、性器出血、帯下、皮膚潰瘍等に用いる。代表的な収斂薬の一つで、収斂作用には各種の出血に対する止血、傷口や潰瘍に対する斂瘡、精液の漏れるのを防ぐ固精、婦人の帯下を止める止帯などがある。

 不正性器出血や帯下には茜草・オウギなどと配合する(清帯湯)。胃酸過多や胃・十二指腸潰瘍などによる疼痛、出血などに白芨と配合する(烏芨湯)。外用薬としての応用範囲も広く、鼻出血や外傷性の出血、中耳炎、臍周囲炎、皮膚潰瘍、湿疹などに粉末を塗布する。とくに分泌物の多い化膿瘡や湿疹、潰瘍などに適している。日本でも膿の吸い出しに有名な破敵膏に配合されている。

鬱金

2012年02月15日 | 健康
○鬱金(うこん)

 熱帯アジア原産で、インド、東南アジア、中国南部などで栽培されているショウガ科の多年草ウコン(Curcuma longa)の根茎を用いる。ウコンの根茎の皮を除いた乾燥し、粉末にしたものが香辛料のターメリックである。カレー粉の黄色の主原料として、また沢庵やピクルスの着色料としても用いられている。

 日本には江戸時代中期に渡来し、沖縄県や九州南部で栽培されている。ウコンのことをウッチンというのは沖縄県の方言である。ところで日本と中国ではウコンの植物名や生薬名が錯綜しているので注意が必要である。

 植物名では日本でいうウコンは中国では姜黄といい、日本のキョウオウ(春ウコン)は中国では鬱金という。一方、生薬名では日本でいう鬱金は、ウコンの根茎と規定されているのに対し、中国の生薬で鬱金といえば、ウコン、キョウオウ、ガジュツの根の先にある紡錘形の塊根のことであり、姜黄といえば、ウコン、キョウオウの茎と続いている根茎の部分をいう。すなわち、日本市場の鬱金は、中国の姜黄のことであり、その中のウコンを基原植物とするもののみをいう。一方、中国の鬱金は玉金とも呼ばれ、市場ではウコン(C.longa)のものを広玉金、キョウオウ(C.aromatica)のものを川玉金と称している。

 ところで、健康食品市場において利用されているウコンには、秋ウコン、春ウコン、紫ウコンの3種類がある。秋ウコンはC.longa、春ウコンはC.aromatica、紫ウコンはガジュツC.zedoariaのことを指している。これとは別にインドネシア原産のクスリウコン(C.xanthorrhiza)というウコンも注目されている。また、白ウコンと呼ばれているのは、ハナショウガ(Zingiber zerumbet)のことであり、ショウガ科ではあるが、全く種類の違う植物である。

 このうち秋ウコンは香辛料ターメリックの原料として、また健康食品として最も多く利用されている。春ウコンは秋ウコンに比べ強い苦味と辛さがあるため、食用には不向きであり、専ら薬用として栽培されているが、生産量もあまり多くない。根茎の切断面では秋ウコンは赤みがかった黄橙色であり、春ウコンは明るい黄色である。ガジュツは根茎の切断面が紫色がかった青白色のため紫ウコンと呼ばれている。

 黄色い色素成分はクルクミンであり、秋ウコンには春ウコンの約10倍も多く含まれ、一方ガジュツにはクルクミンはほとんど含まれていない。黄色色素のクルクミンはウコン(秋ウコン)の方が多く含有するが、クルクモール、クルクメンなどの精油成分はキョウオウ(春ウコン)のほうが豊富である。動物実験で、クルクミンに皮膚癌の発生を抑制することが報告され、クルクモールにも抗癌作用が認められており、中国では子宮癌の臨床に用いられている。

 日本では中国名の鬱金(玉金)はほとんど流通していないが、中国医学では鬱金に関して次のように説明されている。中国医学では鬱金は姜黄と同じく活血・理気薬であるが、鬱金(日本名:川玉金)の薬性は寒であるのに対し、姜黄(日本名:鬱金)は温として区別して扱われている。

 漢方では理気・活血・止血・退黄の効能があり、胸脇部や腹部の疼痛、乳房の痛み、月経痛、鼻血、吐血、煩燥、黄疸、肝炎などに用いる。鬱金は血中の気薬といわれ、気滞と同時にお血を改善して疼痛を緩和する。ストレスなどによる胸や腹の痛みや月経痛には柴胡・香附子などと配合する。腹部の腫塊には丹参・ガジュツ・青皮・別甲などと配合する。熱病による意識障害には牛黄・黄連などと配合する(牛黄清心丸)。またや切り傷には粉末を水に溶いて外用薬として用いる(中黄膏)。

烏骨鶏

2012年02月14日 | 健康
○烏骨鶏

 キジ科の鶏の一種、ウコッケイの肉または内臓を除いた全体を用いる。鶏冠は紫色であるが、皮膚や足、くちばし、肉や骨まで黒いため烏骨鶏と呼ばれ、全身は柔らかい糸状の絹糸状に覆われている。羽毛の色は白や黒などがあるが、一般に白毛烏骨鶏が珍重される。普通のよりもやや小型で、性質は温順であり、美しいため愛玩用に飼育されている。

 江西省泰和県が原産地であるが、現在は世界各地で飼育されている。日本にも江戸時代に輸入され、天然記念物に指定されているが、特別指定ではないため鶏肉や鶏卵は流通している。成分としてビタミンA・B2・E、カルシウム、鉄などが豊富に含まれている。

 漢方では滋陰・清熱の効能があり、虚労や胃腸虚弱、慢性熱性疾患などに用いる。虚弱体質や結核などの慢性消耗性疾患、慢性胃腸炎などの時には肉や骨を煮て食べるとよい。薬膳料理に烏骨鶏の腹の中に種々の生薬を入れて煮込む料理がよく知られている(烏骨鶏湯:オゴルゲタン)。また虚弱な女性の月経不順や生理痛などには四物湯をはじめ人参・枸杞子・鹿茸などを配合した烏骨鶏白鳳丸を用いる。

烏きゅう根皮

2012年02月13日 | 健康
○烏桕根皮(うきゅうこんぴ)

 中国原産のトウダイグサ科の落葉高木ナンキンハゼ(Sapium sebiferum)の根の皮を用いる。日本には江戸時代に中国から渡来し、紅葉がハゼノキに似ているためナンキンハゼという。九州では野生しているところもある。落葉した後の白い小さな果実の様子は晩秋特有の風情がある。

 ナンキンハゼの種子を烏桕子といい、これは過熱・圧縮すると蝋様物質が得られる。これは中国木蝋といい、油煙の少ないローソクの原料となる。また油脂は石鹸や灯油としても用いられる。薬用には根の皮を剥ぎ、コルク層を除去して用いる。

 樹皮にはキサントキシリン、セビフィル酸などが含まれる。また葉に含まれるTPAは強烈な皮膚刺激性の発癌プロモーターとして知られている。

 漢方では逐水・消腫の効能があり、浮腫や腹水、湿疹、腫れ物などに用いる。とくに全身に浮腫があって大小便の排出が悪いときに用いる。巴豆や牽牛子などより薬効は穏やかだが、副作用で嘔吐することがある。このほか外用薬として毒蛇による咬傷や湿疹や虫刺されに用いる。烏桕子も薬用とするが毒性が強いので内服はされず、ひびやあかぎれ、湿疹の外用薬として用いる。

茴香

2012年02月11日 | 健康
○茴香(ういきょう)

 ヨーロッパ地中海沿岸地方を原産とするセリ科の多年草ウイキョウ(Foeniculum vulgare)の果実を用いる。現在では世界中で栽培され、日本にも明治初期に渡来し、長野県、岩手県などで栽培されている。全草に独特の芳香があり、とくに果実は香りが強く、わずかに辛味がある。果実はフェンネルの名で香辛料として知られ、魚や肉の料理によく合い、フランス料理やイタリア料理などによく用いられている。欧米では新鮮な茎、とくに根に近い白い部分を生で食べることもある。

 古代エジプト時代には既に栽培され、また中世ヨーロッパでは魔術の草としても知られていた。中国には4~5世紀に西域から伝わり、腐った魚肉に混ぜると香気を回復するので「回香」と呼ばれたのが茴香の語源である。シキミ科のダイウイキョウ(大茴香)と区別するため、とくに小茴香とも称する。市場には中国からの輸入品がほとんどを占めており、90%は香辛料に使われている。日本産の茴香は精油の含量が多く最良の品質といわれている。芳香性の精油成分にはアネトール、エストラゴール、ピネン、フェンコン、アニスアルデヒドなどが含まれ、腸の蠕動運動を促進し、駆風作用がある。

 漢方では理気・止痛・健胃の効能があり、胃痛、嘔吐、下腹部痛、腰痛などに用いる。茴香は温裏薬のひとつで、冷えを原因とする胃痛をはじめとする種々の内臓痛に応用される。また蒸留して得られる精油のウイキョウ油は健胃薬、去痰薬、矯味・矯臭薬として用いられる。

淫羊かく

2012年02月10日 | 健康
○淫羊藿(いんようかく)

 メギ科の多年草で、日本の温帯から暖帯に分布するイカリソウ(Epimedium grandiflorum)や、本州中部以西に分布するトキワイカリソウ(E.sempervirens)の地上部全草を用いる。中国では主にホザキノイカリソウ(E.sagittatum)や心葉淫羊藿(E.brevicornum)などが用いられている。和名のイカリソウという名は花の形が錨に似ているためで、中国では葉の付き方から三枝九葉草と呼ばれている。

 淫羊藿は古くから代表的な強精、催淫薬として知られ、その名も雄の羊がこれを食べると1日に100回交合するという言い伝えによるものである。また、仙霊脾とか放杖草という別名もその効能を表している。

 成分にはフラボノール配糖体のイカリイン、エピメジンなどが20余種、そのほかアルカロイドのマグノフロリンなどが含まれる。イカリインには、一酸化窒素(NO)レベルを上昇させて海綿体血流を増やし、勃起状態を保つ物質を分解する酵素、PDE-5に対して阻害する作用があり、バイアグラと同じ効果があると説明されている。また、エピメジンには性ホルモンの分泌を促し、神経を刺激する作用がある。また淫羊藿の煎液には催淫作用のほか、抗ウイルス・抗菌作用、鎮咳・去痰作用などが報告されている。

 漢方では強壮・補陽・去風湿・強筋骨の効能があり、生殖機能の低下、老化に伴う衰弱、関節の痛みなどに用いる。インポテンツや遣精には仙芽・熟地黄・枸杞子・肉蓯蓉などと配合し、足腰の萎弱やしびれ感には杜仲・狗脊などと配合する。女性の月経不順や更年期の高血圧には仙芽・当帰・黄柏など配合する(二仙湯)。リウマチなどによる関節痛や筋肉痛、麻痺やしびれ感などに威霊仙・肉桂・川芎などと配合する。

 日本でも市販されている体力や精力の低下を補う滋養強壮薬やドリンク剤薬用養命酒などの薬用酒などに淫羊藿は幅広く配合されている。ただし淫羊藿は燥性が強く、服用しすぎると嘔吐・口渇・口苦・鼻血などの症状が出現する。

印度蛇木

2012年02月09日 | 健康
○印度蛇木(いんどじゃぼく)

 インド、ビルマ、マレー半島などに分布し、熱帯に生えるキョウチクトウ科の常緑低木インドジャボク(Rauwolfia serpentina)の根を用いる。日本でも九州南部で栽培されている。この植物の根が蛇に似ていることからインディアンスネイクウッド(インド蛇木)と呼ばれ、実際に蛇の咬傷に用いられていた。

 学名は、ドイツ人の植物学者ラウヴォルフにちなみラウオルフィア・セルペンチナという。中国では同属植物の根を羅芙木と称して用いている。インドでは、この木は「月の病(精神病)」と関係するチャンドラの名で呼ばれていた。ヒマラヤ地方では古くから子供が蛇に咬まれたときの薬草として知られていた。インド伝承医学の古典アユルヴェーダの中にも、精神病や不眠症、高血圧、さらに解熱薬として用いられていたという記載がある。

 根の成分にはインドール系のアルカロイド、レセルピンやレシナミン、アジマリンなどが含まれ、レセルピンには著しい中枢性鎮静作用及び血圧降下作用、アジマリンには抗不整脈作用がみられる。レセルピンは1950年代には血圧降下薬及び精神病治療薬として脚光を浴びたが、眠気、脱力感、性欲減退、さらには抑うつ状態をもたらす深刻な副作用があるため、精神病薬としては、近年あまり用いられなくなった。今日では、レセルピン(アポプロン)などのラウオルフィア製剤が降圧剤として、アジマリンは抗不整脈剤として利用されている。

茵ちん蒿

2012年02月08日 | 健康
○茵蔯蒿(いんちんこう)

 日本の本州以南、朝鮮半島、台湾、中国などに分布するキク科の多年草カワラヨモギ(Artemisia capillaris)を用いる。日本では専ら初秋に採取した花の蕾(頭花)を用いるが、中国では春に収穫した幼苗(開花前の地上部)も用いられている。この幼苗は特に綿茵蔯と呼ばれる。沖縄県では近縁植物のリュウキュウヨモギ(A.campestris)をハママーチと呼んで用いている。カワラヨモギの名は川原や海岸に生えているヨモギという意味で、日本では徳島県や長野県より出荷されている。

 葉の成分にはクマリン類のスコパロン(エスクレチン-ジメチルエーテル)、精油成分のカピレンやカピロン、カピリン、クロモン類のカピラリシンなどが含まれる。そのうちスコパロンやカピラリシンなどには利胆作用が知られている。ただし、このスコパロンは花や種子、蕾などに多く含まれるが、幼苗には含まれていない。そのほか茵蔯蒿の薬理作用として肝障害改善、抗炎症、解熱、利尿、抗真菌作用などが報告されている。

 漢方では退黄・清熱燥湿の効能があり、黄疸、尿量減少、湿疹、掻痒症などに用いる。茵蔯蒿は古来より黄疸を治療する代表薬として知られているが、このような退黄(利胆)作用のある生薬としてその他には大黄・黄柏・鬱金・竜胆などがある。

茵芋

2012年02月06日 | 健康
○茵芋(いんう)

 台湾や中国南部に分布するミカン科の常緑低木インウ(Skimmia reevesiana)の茎や葉を用いる。日本の関東地方以西には同属植物のミヤマシキミ(S.japonica)が自生している。沖縄に自生する変種のリュウキュウミヤマシキミを中国の茵芋と同一とする説もあるが定かではない。これらの属名はスキミアといい、シキミ科のシキミと混同されるが、葉が似ているだけでまったく別の植物である。

 日本のミヤマシキミと同様に、インウのは及び茎には毒性のアルカロイドスキミアニン、配糖体のスキミンなどが含まれる。ミヤマシキミは古くから有毒植物として知られ、殺虫作用があるため農薬として使用されていた。中毒症状は少量で軽い痙攣が生じ、大量の場合には血圧が降下して死に至る。

 漢方では去風湿・止痛の効能があり、リウマチなどによる関節痛や筋肉痛、下肢萎弱に用いる。日本の民間療法でも頭痛、めまいなどに応用されている。ただし内服には注意が必要で、漢方処方としてもあまり用いない。中国では一般に酒に浸すか丸剤として服用する。

岩ぢしゃ

2012年02月05日 | 健康
○岩ぢしゃ

 本州から琉球諸島、台湾に分布しているイワタバコ科の多年草イワタバコ(Conandron ramondioides)の全草を用いる。山地の湿った岩場に生え、葉の形がタバコの葉に似ていることからイワタバコという。「チシャ」というのは野菜のサラダ菜のことで、山菜として利用されてきたことを表している。

 苦味は少しあるが、独特の風味で天ぷらや和え物に適している。また淡紅色の花が美しいため、山野草として観賞用に栽培されたりもする。成分には苦味配糖体のコナンドロシドやアクテオシドが含まれる。民間療法では開花時に葉をつみとり日干しにし、健胃・整腸薬として煎じて服用する。中国では葉の汁を傷口に塗布して止血薬として用いている。