健康食品辞典

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麻黄

2015年06月24日 | 健康
○麻黄(まおう)

 中国東北部、モンゴルなど乾燥地帯を中心に自生しているマオウ科の常緑小高木マオウ(ephedra sinica)や木賊麻黄(E.equisetina)などの地上茎を用いる。

 マオウはスギナに似た植物で地上部の茎は草質であるが、茎の下部は木質化している。根は麻黄根という。なめるとわずかに舌にしびれ感(麻性)があり、黄色いために麻黄と名づけられたとされる。

 マオウの主成分であるエフェドリンは1887年に東大の長井長義博士らにより単離され、構造式が決定された漢方生薬初のアルカロイドである。その後、1924年に中国において陳、シュミット両博士によりエフェドリンの鎮咳作用が発表され、喘息の特効薬として世界中に広まった。ちなみにエフェドリンから合成されるメタンフェタミン(ヒロポン)は覚醒剤としても有名である。

 マオウの成分としてアルカロイドが1~2%含まれ、その40~90%がエフェドリンで、そのほかプソイドエフェドリンや微量のメチルエフェドリンが含まれている。現在、マオウに関する薬理作用として中枢神経興奮、鎮咳、発汗、交感神経興奮、抗炎症、抗アレルギー作用などが報告されている。

 一方、エフェドリンの構造式はアンフェタミンに似た中枢神経興奮作用とアドレナリンに似た交感神経興奮作用である。ただしアドレナリンが経口では分解されて効果がないのに対しエフェドリンは経口でも分解されずに吸収され、またアドレナリンに比べて持続的かつ緩和な作用である。エフェドリンの血圧上昇作用は短期間の反復投与で作用が減弱するタキフィラキー現象がみられる。

 鎮咳作用に関して、エフェドリンは気管支の細胞膜にあるβ受容体を直接的あるいは間接的に刺激し、気管筋を弛緩させて気管を拡張させる。肥満細胞のβ受容体にも作用してヒスタミンやSRSA(アナフィラキシー遅延反応物質)の放出を抑制し、抗アレルギー作用を発現する。また抹消血管を収縮させることにより鼻づまりの症状を改善する。一方、抗炎症作用は主にプソイドエフェドリンによることが証明されている。

 マオウの副作用として不眠、動悸、頻脈、発汗過多、排尿困難(尿閉)、胃腸障害などがある。中国では古くから麻黄は重要な治療薬として利用され、「神農本草経」にも発汗鎮咳、平喘作用などが明記されている。漢方では発汗・止咳平喘・利水消腫の効能があり、発熱、頭痛、鼻閉、骨関節痛、咳嗽、喘息、浮腫、麻痺、しびれ感、皮膚疾患などに用いる。

 麻黄の発汗作用は生薬の中で最も強いため、汗をかきやすい状態(表虚証)には用いないのが原則である。これに対し麻黄の節や根(麻黄根)には止汗作用があり、「傷寒論」では麻黄を用いるときには「節を去る」という細かい指示がある。なお、麻黄の配合された処方は虚弱体質者、不眠症、高血圧症、狭心症の人に対して注意が必要である。

 米国では、エフェドラがダイエットや運動能力増強などの目的で広く使用された結果、心臓発作、脳卒中、死亡などの健康被害がみられたとして、2004年2月、FDAはエフェドラを含む栄養補助食品の販売を禁止した。

 現在、中国は天然資源の保護の観点から麻黄の輸出を制限している。ちなみにエフェドリンはドーピングの規制対象であるため、葛根湯をはじめ麻黄の配合されている漢方薬はすべて問題となる。