「牧歌」はのんびりと草を喰む馬
そして、高原を疾走する馬を表現する。
最後のレッスンが終わった。
ただ、そのとき、これからの課題曲として10級(最上級)の「牧歌」を与えられた。級別曲目リストの中でも一番最後の載っている文字通り最上級の中の最上級の曲だ。
これは内モンゴルの高原の様子を表した曲で、後半の疾走する馬、鞭でたたく音などを表現するところが指使いが難しい。しかし、その部分の良さは十分に表現は出来ないけれどゆっくり吹きさえすれば何とか出来る。
ところが、この曲も前の「漁歌」と同じく導入の部分が難しい。譜面づらを追っかけて吹くのは簡単だが、独りよがりにならずにいかにこの曲の雰囲気を
作り上げていくかが、最上級の曲としての醍醐味だろう。私は足元にも及ばない世界だ。
これはもう先生に見てもらう機会はない曲なのだが、一応全曲通して練習した。そして、土曜日に先生の教室を見学させて頂くことにしているので、そのときに見てもらうことに自分で勝手にきめた。そうするといつもは1週間まるまる練習できるが今回は中三日しかない。しかし、せっかくだからやってみることにした。
ところで、どうして先生が初級もろくに吹けない私に急ぎ足で10級まで課題を与えられたかがこのときになって分かった。私は日本に帰ったら先生につくことが出来ない。したがって自分で勉強しなければならない。そのときに自信をもって練習できるように、とにかく最上級までの課題を与えられたに違いない。
確かに、2ヶ月前までは中級の楽譜を見るだけでも私とは違う世界の曲に見えたのだが、今はどの曲を見ても時間さえかければ、自分でやれるという自信のようなものがある。