指先の技法の練習
フルスは約2ヶ月半の泰安滞在期間中、週1回で、合計8回のレッスンを受ることになった。
3回目までは基礎的な指使いの練習で、打音やトレモロやビブラートなどの装飾音の練習である。このような練習はしていないし、若者とは違うので、うまく指が動かない。しかし、1週間の練習の中で何とか次の回には格好がつくぐらいにはなった。練習していないとはいえ、2年間の経験があったからだろう。
このような基本練習の最後に腹筋を使ったピブラートの練習があるのだが、この奏法だけは今までにもずっと使っていた。合奏には あまり個性的な装飾音は不向きだが、腹筋ビブラートだけは違う。なぜならば、すべての装飾音符は音程を故意に変化させるのだが、腹筋ビブラートだけは音の強弱の変化である。だから、これは合奏の場合も音が濁らないのでいいのだと思って多用してきた。
それで、他の装飾音符はだめだが、「腹筋ビブラートの練習だったらうまく行ける」とちょっと自信を持っていたのだが、先生はこれはフルスではあまり使わないので、飛ばしましょうと言って、あっさり省略された。「えっ」、と驚いたが、中国のフルス曲の演奏ではそれが実際だ。
こんなところに中国のフルスと、日本のフルス事情の違いがちょっとかいま見えてくる。
3回の練習でそれぞれのテクニックについては不十分ながら、何とか合格した。