音盤工房

活字中毒&ベルボトムガール音楽漂流記

そこのけそこのけストーンズ様が通る

2009年07月27日 | インポート

 諸君は、映画『SHINE A LIGHT』のDVDはもう観ただろうか? 映画館で観た人も観なかった人もロック史の生き証人であることには間違いない。これは過去のストーンズライヴの中でも秀逸だ。映画だというわけではないが、とてもカメラワークがきめ細やかだ。メンバーひとりひとりを捉えた移動カメラはメンバーにぶつかりそうになるくらい肉薄する。

 前半のドキュメンタリー映像は、ミックとスコセッシとの舌戦。まぁ、こんなのもあるから映画なんだろうけど、観ているほうはこの焦らせる演出にイラつく。本当にミックとスコセッシはこんなにやりあってたの? だとしたらミックはスコセッシに何もかも主導権を握られるのを嫌ってわざとセットリストを渡すのを遅らせたのかな。元アメリカ大統領のビル・クリントンやその家族の前ではメンバーはとても紳士に振舞っていた。

 それにしてもミックはリップサーヴィスが巧くなったよな。キースは相変わらず皮肉たっぷりで、チャーリーは思わず本音をこぼす。ロニーはいつも飄々としてにこやかに話す。ステージが始まる前のストーンズはいつもこんな風にリラックスしていてとても数時間のライヴをこなす体力があるとは思えない。これこそが、40年以上もロックンロールに君臨し続けたバンドの本領なのか。

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 この映画では本編には『UNDERCOVER』からの選曲は「SHE WAS HOT」の一曲だったけど、特典映像では「UNDERCOVER OF THE NIGHT」が収録されていた。これが嬉しい限り。それで最近買ったSHM-CD盤『UNDERCOVER』でもう一度スタジオ録音を聴き直してみたのさ。音は格段に進歩した感じだけど、僕が持っているのは、ヴァージン・レーベルのリマスター盤だからSHM-CD盤と聴き比べてもさほど遜色は感じられんね。

 けど、凪と荒波の違いはないにしても、今後どちらを聴くかとなると迷わず、SHM-CD盤を選ぶな、確かに。 『UNDERCOVER』の発売当時はこのアルバムに対する評価は賛否両論があったが、僕は当時からずっと大好きなアルバムだった。人呼んで、「血と暴力とセックスのロックアルバム」。まさしくロックンロールの王道。緩んだ時世に喝を入れるダークなアルバムだった。このアルバムから実に二曲の選曲は意外だったな。

 振り返ると僕はストーンズがツアーに出るための口実として作るスタジオアルバムを聴き、ツアーDVDを見るたびに過去のアルバムを聴き直している。そうして、あるときは少年になったり、町工場で働いていたときの自分に戻ったり、愛する女とキスをしたときの淡い想い出をつい最近のことのように思い出す。

 そこに『UNDERCOVER』もある。このアルバムが発売されたとき、僕は何をしていただろうか。おそらく、僕は「UNDERCOVER OF THE NIGHT」のPVが流されるMTVを齧りつくように弟とみていたような気がする。僕が二十歳で、弟が十八歳だった。二人とも若かった。