音盤工房

活字中毒&ベルボトムガール音楽漂流記

さよなら、山田辰夫さん

2009年07月28日 | インポート

 またひとり僕の好きな俳優が亡くなった。知ったのは今朝のニュースでであった。本当に悲しいとき、人はまず、呆然となる。そして、続いて、なぜこの人が…という疑問符と、どうしょうもない怒りが湧き起こる。そしてそれが静まると、やがて深い喪失感が訪れる。

 忌野清志郎のときもそうだったように、山田辰夫さんが亡くなったときにも似たような感情が僕の中で錯綜していた。山田辰夫さんをはじめてみたのは長渕剛が主演していたTVドラマであった。その頃からガリっと痩せて見るからに脆弱な印象であったが、その存在たるや主演者を凌ぐほどだった。

 最近観た『おくりびと』では納棺師という職業に偏見を持つ人物を演じていた。出番はそんなになかったのに彼が現れると、映画自体が急に引き締まって見えた。僕は彼のどこかすれたような演技と内側から沸いてくる人の優しさみたいなものにずっと憧れていた。

 またひとり、日本の映画界から貴重な俳優が消えてしまった。もしももっと長生きして俳優を続けることができたら、どんな俳優になっていたのだろう。ある種の悲壮感を漂わせながら瞳の奥はとても暖かな光を湛えていた、山田辰夫という俳優を一生僕は忘れないだろう。心より冥福をお祈りする。