年の瀬に身内の葬儀で何かと大変な一週間だった。例年であれば、年末にある特別番組を観たり、間近に迫ったクリスマスを祝ったり、自宅でゆっくりと過ごすのだが、今年はクリスマスを祝う心境にもなれず、結局、書こうと予定していた記事も書けなかった。漸く本日、ひと段落着いて、PCの前に坐ったものの、いまだぼんやりとして何も手につかず、仕方なく先週から聴き出したアレサ・フランクリンの『貴女だけを愛して』を家人に気を遣いながらこっそり聴きいている。この『貴女だけを愛して』はコロンビアレコードからアトランティックレコードに移籍したアレサの移籍後初のアルバムである。同時にこのアルバムはコロンビア時代にポピュラーシンガーとして売り込み、パッとしたヒット曲もなかったアレサが、強烈なインパクトと共にスターの座に躍り出た、まさに歌手として最大の転機となったアルバムでもある。
貴方だけを愛して 価格:¥ 1,500(税込) 発売日:2006-12-20 |
一曲目があのオーティス・レディングのオリジナルのカヴァー「リスペクト」。初めてこの曲を聴いたのはアレサの2枚組ベストだったけれど、ここに入っていたのか!と見つけたときは感動であった。YouTubeではリスペクトのライブ映像をいくつか検索できるけれど、僕にとっては一番記憶に新しいアリスタ時代にベスト盤をリリースした頃(1990年)のアレサがとても色気を漂わせていて好きだ。アルバムをリリースするたびに髪型を変えるアレサは、時に奇抜で時に魅力的でアルバムをリリースするたびに吃驚させられるけど、このソバージュヘアーは良く似合っていると思う。有名なチェーンスモーカーで、ストーンズのキース・リチャーズがアメリカの遺蹟と評したそのダイナミックな歌声に当時から僕は魅了されていた。サム・クックやオーティス・レディングのような天才肌のヴォーカリストはいつしか”クイーン・オブ・ソウル”と呼ばれるようになった。
ブラックミュージックに興味を持った切っ掛けは僕の場合、ストーンズの影響が強い。中でもアレサ・フランクリンとの出会いはストーンズと同じくらい衝撃的だった。「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」をキースやロニーを初め、ワイノーズのスティーヴ・ジョーダンや今やストーンズのピアニストには欠かすことの出来ないチャック・リーベルをメンバー据えて、この60年代の代表的なロックナンバーをゴスペルナイズして歌っているアレサを見た時、僕の中で電流が走った。「このオバサン、誰?…」。ゴスペルなんだけど余りに強烈なロックビートに僕は参ってしまった。とにかくこのナンバーはトータル的に凄かった。この曲は映画『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』のテーマソングに使用されたものだが、曲の依頼はまずアレサにあり、キースに連絡を取り、「ねぇ、こんどジャンピン~レコーディングするんだけど、参加しない?」とアレサがキースに打診し、二つ返事で了解したものらしい。「その曲なら知ってるぜ(笑)。OKだ!」という具合に。ロニー・ウッドやスティーヴ・ジョーダンなどキース人脈でレコーディングされた。「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」のPVには主役のウーピー・ゴールドバーグもバックコーラスで参加している。
ジャンピン・ジャック・フラッシュ(紙ジャケット仕様) 価格:¥ 2,310(税込) 発売日:2007-12-19 |
好きなソウル歌手は誰かと訊かれたなら、ある人は、オーティス・レディングというかもしれないし、サム・クックと答えるかもしれない。…でも僕は迷わずこう答えることにしている。
「アレサが一番だよな」と。