音盤工房

活字中毒&ベルボトムガール音楽漂流記

最近読んだ本、読んでいる本(経済篇)

2008年08月30日 | 本と雑誌

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 オリンピック熱も漸く冷めたこの頃は、急激に秋めいて、朝晩は肌寒い。しかし世界に眼を向けると、寒いのは何も気候ばかりではない。グルジア紛争、アフガン邦人殺害、国内の経済状況も相変らず芳しいものではない。あの「毒入りギョウザ事件」も北朝鮮拉致問題も未だ未解決のまま、先送りになっている。民主党から離脱した参院議員らが結成した新党「改革クラブ」は姫井参院議員の離脱撤回で立ち上げ早々に頓挫の情勢になりつつある。姫井参院議員は熟慮した結果、離脱しないことを決断したと釈明してたけど、5人の中で一番説得し易い女性議員を狙って政治的圧力を掛けた民主党のやり口が露骨に見え隠れした一幕だったなぁと思う。 

日経マネー 2008年 10月号 [雑誌] 日経マネー 2008年 10月号 [雑誌]
価格:¥ 650(税込)
発売日:2008-08-21
 さて前置きはこれくらいにしてそろそろ本題へ移ろうと思う。冒頭で「秋めいた」と書いた。秋といえば、読書。読書欲は春夏秋冬問わず常にある。最近は余り行かなくなったが、本屋に行くと雑誌コーナーで経済関係の雑誌を読んだりしている。殆ど立ち読みなんだけど、以前知り合いに薦められてから取敢えず眼を通すようにしている『日経マネー』は僕からも特にお薦めしておきます。普段は前述したように購入はせず専ら立ち読みで済ませているんだけど、今回ばかりは「株主優待厳選40銘柄」の特集という事で、つい購入してしまった。そのほかにもインフレに打ち勝つインフレ対策など興味深い特集が満載だ。インフレには悪いインフレと良いインフレとがあって、日本で起こっているインフレが物価が上がるだけで収入が上がらないたちの悪いインフレなのだ。昔と違って最近は若い人でも給料が上がらない。原油高の高騰などで原材料費が上がれば、企業収益が悪化して尚更賃金は上がらない。企業は収益を従業員ではなく、株主に還元する傾向が強くなっている。今までのインフレだと好景気で企業の収益が上がり、株価も同時に上がる。債券から株式への資金流入が株価上昇に拍車を掛ける。そうなると、投資家はホクホクだ。けれど原材料の高騰と消費者の購買意欲の低下により、企業収益も下がって、株価も同時に下がる悪循環なインフレが投資家から投資意欲を殺いでいく。株式市場がこんなだから個人投資家はリスク回避で、早々市場から撤退し、預貯金に廻す傾向が生まれる。この時期追加投資をしないのは最大の安全パイだ。新興国株はそもそも僕は信じていないので、買う買わないは別にしても、国内株でなるべく配当利回りが良い銘柄を選ぶようにしている。『日経マネー』には悪いインフレに強い銘柄の一覧を載せてあるので、参考まで。でも株価はかなり高いので、購入には躊躇すると思うけれど。

 2年前に比べると株主優待を用意している企業はめっきり減ってしまった。「業績悪化」と「配当重視」が主な理由なんだけど、株主優待は企業でいうところのボーナスのようなもので永遠に約束された特権ではない。だからたとえなかったとしても文句は言えないのだけれど、株主優待がある企業は取敢えず業績が安定している指針にはなるので、投資をする上でも僕は重要視している。食事券や商品券など企業によって優待額は様々だが、概ねそれだけでも年間数千円分に相当する金額になる。配当と合わせれば、1単元保有株主でも1万円近くになる企業さえあるので、見逃せない。但し、優待には権利確定が必要になるので、優待獲得にはある程度の保有期間が必要となってくる。優待目的で買ったのに株価が下がってしまっては元の木阿弥だ。そこで優待を確保し、尚且つ利益も確保するやり方として最低2単元の内、1単元を残して売却すれば優待を確保できるし、底値打ちした時にもう一度買い直せばいいわけである。こんなふうに優待株の買い方の指南もしてある。予断だけど、僕がちょくちょく覗きに行っているブログがあるんだけれど、これは元証券マンの僕の叔父さんのブログだ。特別に紹介しておきます。働きながら鴨米を作っている根っからの百姓なんですが、冬になると我が家に鴨肉を届けにやってくる。鴨鍋は最高に美味いのだ。いつも感謝してます。鴨米のホームページも運営しているんだけど、鴨米の購入者が殺到して迷惑らしいので今回は見合わせることにしました。

[これだけは知っておきたい] 「経済」の基本と常識 [これだけは知っておきたい] 「経済」の基本と常識
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2008-04-05
 続いて紹介するのは、『これだけは知っておきたい「経済」の基本と常識』なんですが、サラリーマン諸氏は興味あるなしの如何は問わず是非、読んでおきたいビジネス書だ。文字通り、これだけは知っておきたい「経済」の基本と常識ですな。とても判り易くて、結構な本なんだが、興味深い箇所は付箋を貼って読み返している。
野口悠紀雄の「超」経済脳で考える 野口悠紀雄の「超」経済脳で考える
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2007-10-26
 最後は『野口悠紀雄の「超」経済脳で考える』である。これはとても良い本だ。以前から野口悠紀雄氏の著作は時々読ませて頂いていたのだが、これはその中でも抜きん出て良い。経済に疎い僕のような人間にも理解し易く、しかも文学的に解説してあるのですこしも退屈ではないのだ。今回は経済本紹介に終始した。次回は小説篇としたい。当分音楽ネタは書かないと思うけどそれもたまにはいいかなと思う。


音楽的な出会いが傑作を生む

2008年08月07日 | Al Green

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 最近はインターネットの利用頻度が増えて専らCDAmazonで購入している。値段が安い事とAmazonのギフト券が使える事でさらにお得になっている。こんなふうに値段がリーズナブルなのも理由のひとつなんだけれど、確実にしかも逸早く欲しいものが買えるシステムは見逃せない最大の魅力のひとつといっていいだろう。それでもたまに行くお店で予想だにしない出会いがあったり、偶然に好きなシンガーの新譜が発売されているのをそこで知ったりするので、おいそれと馴染みのお店も軽視できない存在ではある。販売店のメリットは、実際現物を手に取って買うので「買った」という実感がある。インターネットだと未だにアナログ的な思考回路をしている僕は便利な事はわかっていても手に届くまでは「買った」という実感がいまひとつ湧かないのだ。

レイ・イット・ダウン-愛の詩 レイ・イット・ダウン-愛の詩
価格:¥ 2,500(税込)
発売日:2008-06-18

 ―収録曲―

  1. LAY IT DOWN
  2. JUST FOR ME
  3. YOU'VE GOT THE LOVE I NEED
  4. NO ONE LIKE YOU
  5. WHAT MORE DO YOU WANT FROM ME
  6. TAKE YOUR TIME
  7. TOO MUCH
  8. STAY WITH ME(BY THE SEA)
  9. ALL I NEED
  10. I'M WILD ABOUT YOU
  11. STANDING IN THE RAIN
  12. PERFECT TO ME(LIVE)

 そんな訳で今夜は少し前にお店で購入した愛すべきソウルの巨人の新譜を紹介しよう思っている。アル・グリーンの『レイ・イット・ダウン-愛の歌』。これはブルーノート移籍後のサードアルバムだ。お店で見つけたときはなんともハイペースなリリースに少し眼を疑ったけれど、手にしたときは思わず胸にこみあげてくるものがあった。さっそくレジで清算を済ませて、それから家に帰り着くなり聴こうと思っていたのだが、すぐに聴くのは何か惜しいような気もしてしばらく棚に入れておいたのだ。僕の場合こんな事はしばしばあって最長で半年くらい置いてから聴くこともあるので少しも不思議ではない。それよりもこういったものは気持ちの熟成期間というものが必要な時もあって、なかなかすぐには聴けない場合がある。すこし誤魔化し気味に書いてはいるけど、実際のところ、期待度が余りに大きいと、落胆した時の心境はというとこれがまたそれに輪をかけて大きくなる訳だ。だからその時の僕の気持ちもややそれに近い半ば手探りな期待感が強かったのだろうと思う。全くこの辺は巧く表現しがたい。それにしてもアル・グリーンがブルーノートレーベルに移籍した当時は物凄く驚いたけれど、発表されたアルバムにかつてのハイサウンドが甦っていることにも随分驚かされたものだ。でもこれ以上のサプライズは最早ないだろう。そんなふうに考えると後は出来るだけハイサウンドを壊さない程度の音楽的な進歩をファンとしては願うばかりなのだ。 

The Dana Owens Album The Dana Owens Album
価格:¥ 1,567(税込)
発売日:2004-09-28

 そんなこんなでついレビューが遅くなったけれど、この『レイ・イット・ダウン-愛の歌』は予想に反して聴き応えがあるアルバムとなってます。いきなり変な感想を述べさせて貰ったけど、ここにはいつものアル・グリーン節というかハイサウンドが影を潜めており、もっとブラックテイストなR&Bに仕上がっているんです。「なんだこれは!」とまずは驚き、次に来る思いは「こんなのが聴きたかったんだよなぁ」という渇望感と渇きを癒された時の満ち足りた感情。そしてついには「こういうアルバムがきっと後世に残っていくんだろうなぁ」という確信となって根付いていく。今回のアルバムではゲスト陣も眼を瞠る。コリーヌ・ベイリー・レイ、ジョン・レジェンド、アンソニー・ハミルトンなど今やR&BHIP-HOPを代表するアーティストが参加してまさしく和気藹々とした雰囲気の中で作り上げたという感じのアルバムになっている。アル・グリーンがブルーノートで復活する際にも手を貸した旧知の間柄のウィリー・ミッチェルが今回は彼の許を離れ、代わりにエリカ・バドゥを手懸けたジェイムス・ポイザーがプロデューサーに抜擢されている。この辺りが前作『Everything's OK 』との大きな違い、大きな進歩であろう。そういえば僕が最近気に入って良く聴いているクイーン・ラティファのサウンドに良く似ているなぁと思ったりして…。彼女の『The Dana Owens Album』というアルバムにはアル・グリーンが参加していて、クイーン・ラティファと素晴らしいデュエットソング「Simply Beautiful」を歌っている。こういう出会いが音楽の方向性を少しずつ変えていくんだろうなぁと微笑ましく、嬉しい。彼女は歌も巧いし、ソウルは勿論、ブルースからポップスまで歌いこなす幅広い音楽性を兼ね備えたシンガーだ。その歌の実力と音楽センスはアル・グリーンと拮抗した確かなものだ。こんなふうに考えると、これからの黒人音楽が豊穣とし、ますますこの音楽ジャンルから眼が離せなくなる。

♪Queen Latifah (Feat. Al Green) - Simply Beautiful

*アル・グリーンは70年代にハイ・レコードで一世を風靡したソウルの貴公子。彼は80年代の低迷期にゴスペルを歌っていたこともあるんだけど、90年代の終わりにソウル界に復帰している。しかし事実上はハイサウンドを導入したブルーノート移籍第一弾の『I Can't Stop 』で完全復帰したといわれている。このアルバムは素晴らしい。サム・クックやボビー・ウーマックが好きな方は是非おさえておきたいシンガーである。


ビリー・ジョエルと経済学

2008年08月03日 | Billy Joel

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 僕の車のカーオーディオには最近ずっとビリー・ジョエルの『ビリー・ザ・ベスト』が入れっぱなしになっている。だから聴くともなく聴く事もあれば、この懐かしい楽曲の数々に芯から浸ることもしばしばだ。実のところこのアルバムは最初に発売されたLPレコードとその後にCDとなって発売された時に買ったものが一枚とリマスタリングされて再販された時にもう一度買っているのでアルバムとしては3枚持っている事になる。同じものを3枚も持っているなんてなんて不経済な事かと思う方もいると思うけれど、聴かないアルバムを3枚持っているよりかはずっとマシだと思っている。ともあれ僕は最新のリマスタリング盤の『ビリー・ザ・ベスト』をよく聴いている。ビリーのベスト盤といえばこの後にもいくつか発売されているんだけど、僕は最初に出た『ビリー・ザ・ベスト』が一番好きだ。先月の半ばにとあるお店でビリー・ジョエルの来日公演のニュースを知った。しかし今度こそ行こうかと思っていた僕の気持ちに蓋をするように公演は東京ドームの一夜限りのメモリアルライヴという事だった。大阪公演がもしも実現するのならチケットを買っていたかもしれない。東京公演だけだと外部的な問題も含め気持ちが萎えてくるのが判った。

 今回どうして公演がたったの一回しか行われないかは、ビリー自身体力的な問題というよりも公演回数を拡げてその都度会場を満杯にする自信がないのだと思う。知名度と人気は必ずしも一致しないものだ。それよりももっと濃密で、下世話な話をすればもっとビジネス的に「儲かる」方法に切り替えたのだと思う。確かに日本に於けるビリーの人気は一時の熱狂的ファンを獲得した80年代に比べて明らかに低迷している。要因は色々あると思うけど、その中でも一番の要因と思えるのは今ひとつ若い世代にビリーの音楽が浸透していないせいだと思う。それなら僕のようなまさしくリアルタイムにビリーの音楽に親しんだ世代はどうだろう。この世代はおそらく高い確率でコンサートに足を運ぶ公算が高いように思う。しかしその一方で発売当時僕が『ザ・ブリッジ』というアルバムに幻滅したようにおそらく多くのファンが新境地を拓くビリーを冷ややかに視つめ、彼の音楽から離れていったのを忘れてはならない。

ビリー・ザ・ベスト ビリー・ザ・ベスト
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2003-11-06

 今回の「一夜限りのメモリアルライヴ」についてはある番組でも華々しく取り上げられていたけど、やはり米国の白熱ぶりに比べ、日本との温度差を否応なしに感じてしまう。果たしてあの頃のようにビリーは熱狂的ファンに迎えられるのだろうか。エルトン・ジョンとのジョイントコンサートが実現した10年前とはまた状況も変わっていよう。風貌も体型も変わってしまったビリーには以前のような若い溌剌さはないけれど、その代わりに年季を帯びたシンガーとしての老練さを感じる。しかしその老練さを感じているのは彼の歴史を共に歩んだ世代だけのように思う。晩年、若い世代にアピールしなかったビリーのビジネス的戦略みたいなものがここにきて悔やまれる。いずれにしろ、僕にとって『ビリー・ザ・ベスト』は僕のライブラリーの中でもとりわけよく聴いた愛聴盤であり、コンサートの成功云々を論じるまえに一度は聴いておきたい、そんな必聴盤である。

 さて今夜も音楽ネタを披露する事にする。映像は1999年に開催された「ロックンロール・ホール・オブ・フェイム」で見事ロックの殿堂入りを果たしたビリー・ジョエルとポール・マッカートニーがビートルズのヒット曲「レット・イット・ビー」を歌う姿が収められている。当時からビリーの声質はポールとよく似ているといわれていたけれど、今改めて聴くと、老成が彼らから類似性を奪い取り、長年のキャリアが全く異にする個性を開拓しているように聴こえる。映像には同時授賞のブルース・スプリングスティーンの姿も確認できる。みんな歳を取ったな、そんな感想である。そして思うのだ。ありがとう。あなた達のお陰で素晴らしい青春を送る事ができた、と。

 こうして聴くとビートルズの曲もいいね。ずっとビートルズの曲は意味もなく避けてきたけど、もうそろそろその封印も解こうかな。良い曲に境界線を引く事はないのだから…。

♪LET IT BE - PAUL MCCARTNEY & BILLY JOEL