この曲はデンゼル・ワシントン主演の『ザ・ウォーカー』の劇中で流れるアル・グリーンのヒット曲である。
実を云うとこれはアル・グリーンのオリジナル曲ではない。ビージーズが1971年にリリースした『Trafalgar』に収録されている。
あいにく僕はビージーズのオリジナルを聴いたわけではないし、このカヴァーが収録されたアル・グリーンの『Let’s Stay Together』も持ってはいない。
たまたま何年か前に買った『FREE SOUL.the classic of Al Green』にたまたま収録されていた「How Can You Mend A Broken Heart」を聴いていて知っていたわけである。
劇中ではデンゼル・ワシントン扮する薄汚れた旅人が、雨風をしのぐ一夜限りの廃墟でこの曲を聴いていた。
この曲のイントロが流れた時、歌っているのがアル・グリーンなのは即座にわかったのだけれど、どうも歌っている曲がどのアルバムに入っていたかは思い出せない。
しばらくは日頃の忙しさに紛れてそのことは忘れてしまっていたのだが、つい最近、彼の古い曲を聴いていて思い出したわけである。
『ザ・ウォーカー』は戦争によって文明が崩壊した後に起きる混乱や略奪を描いたアルバート・ヒューズとアレン・ヒューズの兄弟監督の近未来SF。
この世界にたった一つ残された一冊の本を西へ運ぶ神からの啓示を与えられた男を主人公に独裁者との壮絶なバトルが繰り広げられる。
一冊の本を巡ってこんなに血が流されるのが初めはとても奇異に思えたし、ストーリー自体に些か強引さも感じたが、デンゼル・ワシントンの演技者としての魅力についつい引き込まれて最後まで観てしまった。
格闘シーンで刀を操るところなどは日本の時代劇のようだし、セピア色の映像がとても殺伐感を見事に表現出来ていてとても凝った作りに仕上がっていた。
見所の多い作品だが、町の修理屋役として登場したトム・ウエイツには吃驚したし、あの『フラッシュダンス』で見事にダンサーを演じきったジェニファー・ビールスが盲目で、独裁者の情婦という思いがけない役で登場している。