音盤工房

活字中毒&ベルボトムガール音楽漂流記

何か違うぞ、エモーショナル・レスキュー

2009年07月26日 | インポート

 雨が降っている。朝からずっと降っていた。やみ間もあった。陽も差した。でも油断をすると集中豪雨のような激しい雨が降ってくる。天に向かって「せっかくの日曜なのに!」といつもなら怒りをぶつけている僕の顔はなぜかきょうばかりはにんまりとほころんでいる。

 予定されていた行事が雨のために流れた。雨が降ればいいのに…。できれば中途半端な雨ではなく、豪雨になればと願っていた。そのとおりになった。二ヶ月近くこの日のために準備に追われていた関係者の方々には誠に不謹慎な発言ではあるが、僕はこんな風に豪雨となって中止になることを心から願っていた。

 考えてみろよ。日本にいる殆どの人は働いている。確かにこんな世の中だ。職にありつけない気の毒な人もいれば、経済的にゆとりがあり、今は職に就いていない人もいるだろう。でも誰しもに共通して言えることは、誰にもそれなりの労働意欲はあるということだ。そう、日本人の大部分の人が労働に飢えている。そして運よく職に就いている人も、明日の見えない日本にわずかな希望を持ちながら懸命に生きている。そんな勤労者がたまの休みぐらいはのびのびと自由を謳歌したいと思う気持ちを持つことは罪悪なのか。そんなことないだろ? だから僕は雨が降る休日は大歓迎だ。と、いうことで今日はどこにも行かず、部屋で好きな音楽を聴くことにする。

エモーショナル・レスキュー(初回受注完全生産限定)

 先日、ローリング・ストーンズの何度目かのリマスター盤を買ってきた。ヴァージンからユニバーサル・ミュージックに移籍した時から噂にはあったが、初回生産分はなんと、SHM-CDで発売された。僕はストーンズがソニー・ミュージックに移籍した頃から少しずつCDを集めてきた。すでにLPで持っているアルバムをCDで買い揃えるということは無駄なようにも思えたが、いい音で聴けるストーンズの誘惑に負け、80年代のものは殆ど、ソニー・ミュージック時代に揃えた。その後は、レーベルがヴァージンに変わってから、初期の名盤からベロのロゴからのレーベルをこの頃に多量に買って揃えた。

 初めて買ったストーンズのCDは『エモーショナル・レスキュー』。続いて『女たち』と『刺青の男』を買った。いずれもソニー・ミュージック・レーベルだ。けれど、いくらSHM-CDとはいえ、今回ばかりはすでにCDでもっているアルバムばかりなので、改めていい音でCDを聴く気持ちは湧いてこないし、第一おんなじアルバムを何枚も持つなんて、不経済だ。ずっとそう思っていた。

 ところが、いざ、店頭に並んでいるストーンズのSHM-CD盤をみると、どうしてだか、聴きたくなる。そんなとき、BARIさんのブログでこのリマスター盤のことが紹介されているのをみて、すぐさま買いに出かけた。端からすべてを揃える気はなかったので、ひとまず、無難な『エモーショナル・レスキュー』で聴き試すことにした。このアルバムならたとえだめでもよく聴くアルバムだし、最初に買ったアルバムということもあり、傷みもそれなりにほかのアルバムよりもひどくなっている。

 それで、さっそくプレーヤーにセットし鳴らしてみたところ、1曲目の「ダンス」から普段の『エモーショナル・レスキュー』に比べて、何かが違うと思い始めた。こう、胸にずしんと来る重低音とパーカッシブルな歯切れのいいチャーリーのドラムがいつもより明瞭に聴こえてくる。ドラムばかりではない。ギターもヴォーカルもいつもより、クリアーで、旧盤が緩やかな凪にしか聴こえなかったのに対し、今回のリマスター盤は演奏と歌が総動員した波が押し寄せてくる感じ。たぶん僕の錯覚だと思い、改めて旧盤をセットして聴き比べてみたが、やはり最初、僕が抱いた感想どおり、音の層が分厚く、旧盤に比べて奥行きを感じる。「ダンス」がいいね。紹介している曲はオリジナル盤に入っていたヴァージョンと『レアリティーズ』に収録されていたアウトテイク。

</object>
 これでまたしてもリマスター盤を買ってしまった呵責の念は拭うことができた。けれど、もうこれで旧盤は聴かなくなるだろうな、とは思う。結局、無駄ではなかったとしても、聴かなくなったCDの在庫が増えたことは確かである。