人生の謎学

―― あるいは、瞑想と世界

アペイロン、エナンテオドロミア、プシコイド

2008-08-29 00:22:24 | 随想
■エナンテオドロミア(エナンティオドロミア)は、古代ギリシアの哲学者ヘラクレイトスに由来する概念です。
自然哲学の用語で、一方に偏ったものが他方の極に向かって変化することを指し、ユング心理学では、一面的になった意識を無意識がバランスを保つべく作用することを意味します。

アナクシマンドロスは、無限定であるところのアルケーは、神的で不滅なアペイロンから、暖かいものと冷たいもの、乾いたものと湿ったもの、などの性質の対立するものが分離したと主張しました。さらに争い合うこの対立するものからは地・水・火・風が生じ、また星辰や生物が生じたとして、こうした掟にしたがって、やがて争いの罪を贖って死滅すべきもので、すべてはアペイロンへ戻ると唱えました。

アペイロンはペラス(有限)に対立しますが、アナクシマンドロスはそれがすべての生成の源であると考え、人生とは、個人の内面にあって、外在的現実への没頭、執着から顔をそむけ、内面的世界の探求へ視線を移す動向の予兆を示すものとなります。またその逆の過程も考えられます。このような契機において、個人の探求は、それ自体無限に深化するだけでなく、深化の過程で再びエナンテオドロミアの動向をはらむこととなります。

――ユングは、無意識層のさらに深部には、プシコイドとよぶ領域があり、精神と物質が渾然一体となって万象のカオスに繋がっていると考えました。私たちが出来事の偶然として認識する、説明不可能でふしぎな体験には、集合的無意識と現実との作用を同時共調させる未知のエネルギーが働く場合があるのではないかと考え、シンクロニシティの仮説をたてました。そしてシンクロニシティの現象は、プシコイドを循環するエネルギーの強弱や方向性によって惹き起こされると推論したのです。


アペイロン、エナンテオドロミア、プシコイド

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