高知の自然 Nature Column In Kochi

南四国で見かけた蛾をおもに紹介していましたが、現在更新を中止しています。

コベニシタヒトリ ♀

2009年09月10日 09時26分03秒 | Weblog
高原の草地でライトトラップをしたら10頭ほどコベニシタヒトリが飛来した。

前翅は黄色、後翅は赤くきれいなヒトリガで、その中に1頭だけ前翅がオレンジ色のひときわ目立つ個体が目についた。

実は前翅が黄色い個体は♂、オレンジ色が♀なのである。
個人的には♂の色合いの方が落ち着いた感じで好ましく感じる。
♀は派手だがこちらもなかなかいい。

日本では北海道から沖縄まで全国に分布している。
幼虫はアヤメを食べることが知られている。

これまで発見した場所はおもに草原や草原に近い森林なので、草原にいる蛾といってよいだろう。
発生場所周辺の環境から幼虫はアヤメのほかにも似た単子葉類を食べている可能性が高い。

四国では中央山地の標高の高い場所で発見されている。

(撮影:新宮町 2009.8.29)

ウスエグリバ

2009年09月09日 09時35分23秒 | Weblog
エグリバの仲間でこのウスエグリバは前翅を斜めに横切る筋が曲がっていることで区別できる。

北海道から沖縄まで日本全国、ユーラシアに広く分布している。
成虫は年3~4回の発生で、幼虫はカラマツソウやアオツヅラフジを食べる。

寒地性の種で、中部地方の内陸部、関東地方の内陸部、北陸地方、東北地方に多産するのに対して、四国や九州では少ないようだ。
私はこれまで北海道で出会ったのみだったが、やっと今年になって四国でも発見することができた。

成虫の口はよく発達しており固くて鋭い。
この口で果実に穴をあけて果汁を吸う。
被害果樹はおもにブドウ、モモ、リンゴがあげられる。
一方、ナシ、ミカン(柑橘類)、トマトなどはそれより南方で栽培されるせいか被害例がほとんどないようだ。

(撮影:新宮町 2009.8.29)

アカマダラヨトウ

2009年09月08日 10時27分20秒 | Weblog
今朝、飼育ケースをのぞいてみると昨日採取した蛹から2頭のアカマダラヨトウが羽化していた。

白地に赤いまだら模様は他に似た種がなく特徴的で魅力高い。

日本では伊豆諸島、本州の紀伊半島南部、四国、対馬、九州から沖縄にかけて分布している。
幼虫はハマオモトやタマスダレを食べる。

同じ植物を食べるハマオモトヨトウと比べるとさらに南方系の種といえるだろう。
ハマオモトヨトウが高知県の太平洋沿岸全体で見つかるのに比べて、アカマダラヨトウは局地的な分布発生をしている。

ハマオモトヨトウと違って蛹は真冬でも羽化してしまい蛹越冬の習慣はついていない。
当然冬の寒さに弱いが、四国南部では毎年見られるので何とか細々と死なずに越冬しているのではないだろうか。

幼虫はハマオモトの葉の縁を食べるのでハマオモトヨトウの食痕と区別できる。

成虫が灯火に飛来するかどうかはさだかではない。

(蛹採取:宇佐町 2009.9.7  撮影:自宅 2009.9.8)

ハマオモトヨトウ

2009年09月08日 10時12分35秒 | Weblog
ハマオモトについている幼虫や蛹を探して葉をめくっているとハマオモトヨトウの成虫が止まっているのに気がついた。

本州、四国、九州、種子島、屋久島の分布している。
幼虫はハマオモト、タマスダレ、アマリリスを食べる。

蛹越冬で、成虫は春から秋遅くまで発生し時折灯火にも飛来することがある。
高知県では海岸に面した道筋のハマオモトではどこでもよく幼虫が見つかる。

幼虫は葉の中ほどにぽっかり穴をあけるように食害するので、食痕を見るとすぐにわかる。

(撮影:宇佐町 2009.9.7)

2009年09月08日 09時40分38秒 | Weblog
残暑が厳しいけれどよく晴れていたので気分転換も兼ねて、昼間久しぶりに近場をドライブしてまわった。

まずは道筋のキョウチクトウを見る。昨年秋はキョウチクトウスズメが大発生してが、今年は現時点ではどこも食害して様子は見あたらない。

次はクロマダラソテツシジミを探してソテツを見てまわる。
今年の夏は高知県東部の室戸岬で発生が確認されている。
この分では高知市に進出するのは時間の問題であろう。
海岸付近も含めて調べたが、高知市西部や南部ではまだ確認できなかった。

一方、ハマオモトを見るとかなり食害されている。
そこは昨年アカマダラヨトウが見つかった場所で、葉の食痕を見ると越冬した同じアカマダラヨトウのようだ。
葉は見苦しいためか、すでにほとんど切り取られていて幼虫は見あたらなかったが、それでも切り取られた葉の付け根から蛹を見つけることができた。

画像左の赤みを帯びた11個の蛹がアカマダラヨトウ(一夜置いたため2つ羽化した抜け殻が混じっている。)、右の4個の黒い蛹がハマオモトヨトウである。


(蛹採取:宇佐町 2009.9.7  撮影:自宅 2009.9.8)

ヒナシャチホコ

2009年09月07日 08時33分49秒 | Weblog
今年出会ったシャチホコガ科で79番目となるのはヒナシャチホコである。

シャチホコガ科では日本最小でこの個体は開張23mmしかなく、これでもシャチホコガか?とつい思ってしまう。
色模様はかなり個体変異がある。

北海道、本州、四国に分布している。
幼虫はポプラやヤマナラシを食べる。

西日本では少なく四国ではまれと思われる。
私の手元にはこれまで1970年8月と2000年9月に得た2個体の標本しかない。
今回が四国では3頭目の発見ということで、実に9年ぶりの再会となった。

撮影下手のため残念ながら頭部がピンボケになって見苦しいがお許し願いたい。

(撮影:四国中央市 2009.8.29)

ベニシタバ

2009年09月06日 09時47分12秒 | Weblog
ベニシタバは大型のカトカラ(Catocala)で、後翅は鮮やかな濃いピンク色でとても美しい。

日本では北海道、本州、四国、九州に分布していて本州では普通種になるようだが、講談社の蛾類大図鑑によると「四国、九州ではわずかの採集例が知られるのみである。」と記載されており、西日本では少ないようだ。
幼虫は渓流沿いのヤナギ類を食べ、成虫は夏に発生する。

私の経験では場所によるのかもしれないが、1960年代は夏に四国中央山地に行くと当時の弱い光源にもかかわらずいつも一夜に10頭近くも飛来するごく普通種だった。
しかし年々数が減り、近年は図鑑の通りなかなか出会えないまれな種となってしまったことは残念で寂しい。

(撮影:瓶ケ森林道 2009.8.27)

エグリシャチホコ

2009年09月05日 09時15分33秒 | Weblog
今年出会ったシャチホコガ科で78番目となるのはエグリシャチホコである。

エグリシャチホコ(Ptilodon)の仲間はどれもよく似てまぎらわしいが、この個体は後胸部の冠毛の内側の毛が白色がかって見えることからそう判断した。

北海道、本州、四国、九州に分布している。
成虫は年2回の発生で四国では6~8月にかけてみられる。
幼虫はシャブシ、ヒメヤシャブシ、ヤナギ、カツラなどを食べる。

Ptilodon属のエグリシャチホコは四国ではスジエグリ、エジエグリ、クワヤマエグリ、クロエグリの4種すべてが分布しているが、クワヤマエグリはまれなようで未だに出会ったことがない。
残り3種の個体数はあまり違いがないようだ。
どれも普通種にはなるがそれほど多くなく、飛来しても1~2頭程度にしかすぎない。

一方、別属になってしまうが同じエグリと名のつくハガタエグリシャチホコやオオエグリシャチホコは多数飛来することがある。

(撮影:瓶ケ森林道 2009.8.27)

カタシロムラサキヒメハマキ

2009年09月04日 09時40分51秒 | Weblog
小さな蛾の紹介が続いてしまうが、これは開張10~14mmのカタシロムラサキヒメハマキである。
はねを閉じたこの形では体長6~8mmといったところだろうか。

小さくて一見茎の枯れた切れ端にしか見えない。
しかしこれもれっきとしたハマキガの仲間で、もっと小さい種も数限りなくいるのだ。

種名のカタシロ(肩白)の通り肩にあたる部分が白いことで同定しやすい。

日本では本州の関東以西、太平洋岸に沿って奄美大島までと対馬に分布している。
講談社の蛾類大図鑑では「四国からは未発見」となっているが、高知県の低山地では少なくない。

成虫は5月から10月下旬にかけて見られ、秋になるとよく見かける。
幼虫はヒサカキの葉をつづるという。

(撮影:横波半島 2009.8.25)

アトシロモンカバナミシャク

2009年09月03日 09時17分26秒 | Weblog
前回紹介したシンジュサンは開張134mmと大型の派手な模様をしている。
それに比べて今回のアトシロモンカバナミシャクは開張15mmしかない小ささで地味な色をしている。

ライットトラップに集まる蛾は大小さまざまだが、どうしても大型の目立つものに目がとまってしまう。
キバガやハマキガなどのミクロ蛾になるといても気づかなく、撮影した時も画像の隅に写っていていて後で画像整理するときになってこんなものがいたのかと気づくことも多い。

時々は目をミクロ用に切り替えて探す必要を感じるがそれでも、もはやこの老眼では見落としてしまうことが多い。

ということで、このアトシロモンカバナミシャクも小さく地味で見過ごすところだった。
種名のように後翅後縁に白紋があることで何とか初見の種とわかった。

全国的にかなり少ない種で、本州、四国、九州、屋久島、沖縄本島に分布している。
幼虫はカンコノキを食べる。

(撮影:三好市 2009.8.23)