高知の自然 Nature Column In Kochi

南四国で見かけた蛾をおもに紹介していましたが、現在更新を中止しています。

サザナミシロアオシャク

2009年11月30日 10時10分17秒 | Weblog
灯火にサザナミシロアオシャクが次々と4♂も飛来してきた。

薄緑色をした美しい色で、細かいさざ波模様があることからこの名がついている。

この属には他によく似たものがあり同定には注意がいる。
サザナミシロアオシャクは顔面が緑色で♂は後脚脛節が太く溝に長毛束があることで区別できるが、♀は明確な違いがなく判別しづらい。
この属は♂の触角が櫛歯状、♀は糸状なので触角を見ると簡単に雌雄の区別ができる。

講談社の蛾類大図鑑によると、日本では九州から沖縄にかけて分布していることになっているが、四国では高知県の足摺岬から海岸に沿って室戸岬にかけて秋にぼつぼつ見つかっている。

沖縄では多いようで冬を除いてごく普通に見られる。
幼虫は多食性で、イスノキ、クスノハカエデ、ホルトノキ、ハゼノキ、フトモモ、モクタチバナ、アカギなどを食べることがわかっている。

(撮影:室戸岬 2009.11.16)

アカウラカギバ

2009年11月29日 09時37分33秒 | Weblog
アカウラカギバは高知県ではおもに低山地でよく灯火に飛来する。

はねの表は赤紫色をしている個体と灰色がかっている個体があり、前翅先端がカギ状にとがっている。
この画像は前方から撮影したものだが、頭部の周辺が赤く脚も赤い。
目が黒いので異様な感じに見える。
腹部下面も赤い。
はねの裏側も赤茶色なのでアカウラ(赤裏)という名前は覚えやすい。

日本では本州、四国、九州、対馬、屋久島から沖縄にかけて分布している。
本州中部から北は少ないようなのでやや南方系の種といえるだろう。
幼虫はユズリハやヒメユズリハを食べる。

高知県では成虫は4月から11月まで長期間見られ、二桁灯火に飛来することもよくある。
夏の後半から秋にかけて発生数が増える。

(撮影:横浪半島 2009.11.14)

ナカジロヒメハマキ

2009年11月28日 09時03分40秒 | Weblog
前翅中央が広く白く覆われている特徴のある初めて見るハマキガが灯火に飛来した。
自宅に帰りさっそく図鑑で照合してみるとこれはナカジロヒメハマキであることがすぐにわかった。
他に似た模様の種が見つからないので同定を間違うことはまずないだろう。

日本では本州、四国、対馬、屋久島、奄美大島、沖縄に分布している。
南方系の種で九州は含まれていないが、おそらく分布しているだろう。
春から秋にかけてみられる。
初めて見たので四国では少ない種ではないだろうか。
幼虫の食草はわかっていない。

通い慣れたこのポイントだが、それでも行くと時々このような真新しい種に出会えるのでやめられない。

(撮影:横浪半島 2009.11.14)

フクラスズメ

2009年11月27日 08時57分44秒 | Weblog
晩秋になり蛾の数が減ってくると大型のフクラスズメが目立つようになる。

前翅は樹木の表皮に似た黒い目立たない色模様をしているが、後翅は青い紋があって美しい。
止まるとすぐにこの青い紋を隠してしまうので生態写真を撮ろうとしてもカトカラのようには後翅を見せてくれないのが悔しい。
蛾によってはからだに触れると威嚇のためか前翅を持ち上げて後翅の派手な紋を見せることがあるのだが、フクラスズメはそのようなことがなくすぐに飛び去ってしまうのだ。
どうも後翅の青い紋は威嚇とは関係なさそうに思える。

日本では北海道から沖縄まで全国に分布している普通種である。
幼虫はカラムシ、ヤブマオ、コアカソ、イラクサ、ラミー、カナムグラ、クワ、マルバウツギなどを食べ派手で毒々しい色模様をしている。
幼虫は見かけと違い毒はないのだが、その姿を見ると触れてみる気は全くおきない。
高知県では成虫は1年中平地から標高1000m以上の四国中央山地までどこでもごく普通に見られる。

晩秋から春にかけて糖蜜トラップをすると一番多く飛来するのがフクラスズメで、これが来たときは他のキリガ類はまず来ない。
真冬は週宅の中にも成虫越冬のためもぐり込むので住民が驚き気味悪く思って時折問い合わせがくる。

蛾の中でも好かれない方だろうが、毒もなく繁殖力も強いので路縁の除草という点で人間に役立っているといえないだろうか。

(撮影:横浪半島 2009.11.14)

クロホウジャク

2009年11月26日 08時47分12秒 | Weblog
スズメガ科の黒いホウジャクの仲間はどれもよく似ている。
この仲間で高知県で一番灯火に多く飛来するのがこのクロホウジャクである。
多いときには10頭以上も集まる。
昼間みられるが夜間も飛び回って訪花活動をしているようだ。

からだつきは戦闘機を思わせる流線型で飛翔力も強く空中で飛びながら静止して吸蜜するのでハチドリと間違えてしまう人がいる。
この画像を見るとからだの上は黒で下が白とはっきり分かれているのがとても興味深い。
晩秋の個体のからだはかなり傷んでいるようだ。

ホシホウジャクによく似ていて灯火に飛来するため、どちらなのか野外ではよく迷わされる。
2種の違いはクロホウジャクの方が大きいことが多く、慣れると前翅先端付近の模様を見てほぼ判別できるが、後翅の黄色帯の形を見比べるのが一番間違いない。

とはいっても野外で止まったときは後翅が前翅に隠れて見えなくなるのでつかまえる以外後翅の黄色帯は確認しづらい。

日本では北海道から沖縄まで全国に分布している普通種である。
幼虫はユズリハを食べる。
高知県では低山地に多く3月から11月まで冬を除き長期間みられる。

(撮影:横浪半島 2009.11.14)

ユウグモノメイガ

2009年11月25日 10時04分10秒 | Weblog
立ち寄った公衆トイレの壁をふと見ると見慣れない美しいピンク色のメイガが止まっている。

近寄って確認するとそれはユウグモノメイガだった。
ずいぶん昔の1971年に室戸市で見つけてそれ以来38年ぶりになる懐かしい出会いとなった。

ユウグモは「夕雲」からついたものだろう。
気の利いたよい名前だなととても気に入っている。

日本では北海道、本州、四国、九州、対馬に分布している。
幼虫はスイバを食べる草原の蛾である。

草原の多い場所であまりライトトラップしないためかなかなか出会えない。

(撮影:香川県三豊市高瀬 2009.10.12)

ヒゴキンウワバ

2009年11月24日 09時36分49秒 | Weblog
ニシキキンウワバと思っていたらヒゴキンウワバであることをSさんが教えてくださったのでブログの中身を変更します。

ヒゴキンウワバは高知県南部の低山地でぼつぼつ見つかっていることがわかっていたのに頭からすっかり抜かっていた。

九州各地で見つかっていることは知られているが、四国ではこれまで高知県西部の足摺岬と中部の横浪半島の海岸に近い2カ所で発見されている。
今後内陸部でも発見されると思われる。
高知県の手元の標本では8月、10月、11月に見つかっている。

前翅中央の銀色紋はほぼ円形でニシキキンウワバは楕円形である。
ニシキキンウワバよりヒゴキンウワバの方が少し小さい。
前翅側縁近くのピンク色の帯も短いことでも区別できる。

幼虫はミヤマズミを食べる。

(撮影:横浪半島 2009.11.14)

シコクエンシスの会2009

2009年11月23日 08時53分47秒 | Weblog
一昨日の11月21日(土)はシコクエンシスの会が木の香温泉(高知県いの町本川)で開催され出席してきた。
この会は四国4県で毎年1回場所をかえて持ち回りで行っている。
参加者は蝶屋がほとんどだが、中には私のような変わり者の蛾屋が一部まぎれこんでいる。

今回参加した蛾屋は愛媛県のKさんと私の2名だけで寂しかったが、それでも昨年沖縄で2人一緒に採集して以来1年ぶりにお会いして情報交換ができ、とても有意義で楽しい時間を過ごすことができた。

午後5時開会で煌びやかなモンゴルの蝶の標本が多数並ぶ会場で「モンゴルの蝶」や「蝶の保護活動」などのお話を聞くことができた。
会場では昆虫や昆虫用品の販売もしていたので展翅テープを購入した。
7時からは別室で宴会を行う。

シロテンアカマダラヒメハマキ

2009年11月22日 09時50分09秒 | Weblog
この黒っぽくてまだら模様のあるハマキガはシロテンアカマダラヒメハマキと考えている。
わかりにくいが前翅中央付近に白っぽい点状紋が1つある。
大きさや模様は多少変異がある。

南方系の種で分布を調べてみると、講談社の蛾類大図鑑では屋久島が北限と記載されている。
また、サイトの「みんなで作る日本産蛾類図鑑」では九州も分布に含まれている。
これらのことから四国はこれまで正式な発見の報告はなかったものと考えられる。

以前は気づかなかったが、2008年に初めて高知県西部で発見して以来、県中部も含めて低山地でよく見かけるようになってきた。
今年は昨年より増えた気がしているが来年はどうなるだろう。
とはいっても今のところ二桁灯火に飛来するほどではない。
高知県東部の室戸岬あたりではどうなのか、今年はあまり調査に行っていないので今後注目していきたい。
近年四国で発見され続けているマエジロアカフキヨトウなどと同様、定着して次第に北上している種なのかもしれない。

幼虫はチャ、ミカン、ウラジロエノキを食べることがわかっている。
成虫は春から秋にかけてかなり長い期間みられる。

(撮影:宿毛市 2009.11.9)

アマミマルバネフタオ

2009年11月21日 09時44分55秒 | Weblog
普通種のマルバネフタオと思ったが、よく見るとそれとは少し違うようだ。
後で図鑑で調べてこれはアマミマルバネフタオではないかと判断した。

アマミマルバネフタオの♂は触角の葉片が長いのでマルバネフタオと違っていることがはっきりわかる。

講談社の蛾類大図鑑では屋久島以南に分布すると記載されているが、沖縄生物学会の琉球列島産昆虫目録を見るとトカラ列島以南の分布となっていて屋久島は含まれていない。

四国は双方とも分布に入っていないのでこちらで見つかるものは偶産蛾とも考えられるが、以前も足摺で見つけているので四国南部に定着している可能性が高いと考えられる。

沖縄では普通種で、幼虫の食草はアカミズキが知られているが、アカミズキは奄美大島以南に分布しているので四国では別の植物を食べているのだろう。
四国南部の山で見かける同じアカネ科で考えるとクチナシあたりかもしれない。

これまでフタオガの仲間はあまり注目していなかった。
日本未記録種のクロオビフタオの新発見もあったことだし、もっと積極的にフタオガを集めて調べると何だかおもしろそうな感じがしてきた。

(撮影:宿毛市 2009.11.9)