高知の自然 Nature Column In Kochi

南四国で見かけた蛾をおもに紹介していましたが、現在更新を中止しています。

シマカラスヨトウ 本州中部編6

2009年10月31日 09時13分54秒 | Weblog
四国では見られないシマカラスヨトウも長野県や山梨県ではよく灯火に飛来した。

四国には同属のよく似たオオシマカラスヨトウやナンカイカラスヨトウがいるが、こちらはもっと赤黒っぽくもう少し大きい。
シマカラスヨトウに出会ったのは初めてであるが、灰色がかっていることと前翅中央の一文字の幅広い黒紋がよく目立つので違う種であることがすぐにわかった。
オオシマカラスヨトウも見つかったのでこのあたりでは混生しているらしい。

北海道や本州中北部では普通種となり、四国や九州では正確な記録がないことから東日本の蛾といえるだろう。
年1化で7月頃から秋にかけて見られ卵で越冬する。
幼虫はサクラ、クヌギ、コナラ、ミズナラなど各種広葉樹を食べる。

(撮影:長野県松本市 2009.10.13)

シロシタバ 本州中部編5

2009年10月30日 09時10分18秒 | Weblog
シロシタバも本州の蛾屋さんにとっては見慣れたカトカラだろう。

大型で前翅の地衣類模様と後翅の白黒模様はとても美しく魅力一杯で思わず見とれてしまう。

日本では北海道、本州、四国、九州に分布している。
本州では普通種のようだが北海道や西日本では少なく、特に四国では年に1度出会うか出会わないかというほど希種となる。
そんなシロシタバが毎夜1~2頭もの割合で見つかり、しかも10月中旬で台風18号が通り過ぎたばかりというのにどれも羽化したてのような新鮮な個体ばかりだったのに驚かされた。

幼虫はウワズミザクラとイヌザクラを食べることが一般に知られているが、サクラの類なら何でも食べるようでソメイヨシノ、ヤエザクラ、オオヤマザクラなどもよく食べることがわかっている。

(撮影:長野県松本市 2009.10.13)

キイロキリガ 本州中部編4

2009年10月29日 09時26分09秒 | Weblog
「なあんだ、ド普通種のキイロキリガじゃないか。」と思われる方も多いと思われる。
それほど今回は各地で灯火にたくさん飛来してきたのだ。
斑紋は個体変異がある。

日本では北海道、本州中部以北に分布している普通種で秋に発生し、西日本からの記録は見あたらない。
ということで私にとって初めて見たこの黄色く可愛いキリガはとても新鮮に見えうれしかった。
幼虫の食草ははっきりしないが、ヨーロッパではヤナギやポプラを食べることがわかっている。

同属には外観のよく似たモンキキリガやオオモンキキリガがいるが少なく、
キイリキリガだけは頭部付近が黒っぽくなっていることで簡単に判別できることを先日蛾LOVEさんから教わった。
この見分け方を知っていたらモンキキリガやオオモンキキリガをもっと多く採集できていたのにと今更ながら残念な思いがわいてくる。

(撮影:長野県松本市 2009.10.13)

オオシロシタバ 本州中部編3

2009年10月28日 10時02分34秒 | Weblog
今回の遠征で一番よく出会ったカトカラはオオシロシタバである。
オオと名前がついているが、オオがつかないシロシタバの方が大きいのは何だか違和感がある。
8~9月に発生するためか、飛来した個体はどれも色あせたり傷ついているものが多く残念だった。

この個体は右前翅が一部欠けているが、これはおそらく天敵に襲われてはねをかじり取られたビークマークと思われる。

講談社の蛾類大図鑑には「日本では北海道には多産するが、本州では比較的少なく近畿地方以西では記録がない。四国、九州では高地に産する稀少種である。」と記述されている。
幼虫はシナノキを食べる。

四国では以前中央山地で見つかったと聞いたことがあるが未だに出会ったことがないし、近年見つかったという噂すら聞いたことがない。
現在も生存しているかどうか疑わしいカトカラである。

それほど少ないオオシロシタバが今回毎夜見られたのには感激した。

(撮影:長野県松本市 2009.10.13)

ウスゴマダラエダシャク 本州中部編2

2009年10月27日 10時18分22秒 | Weblog
ウスゴマダラエダシャクは開張55mmほどある大型のエダシャクで秋に発生する。

灰色の地に小黒紋が列状に並ぶその色模様は派手さはないがとても美しく感じる。

北海道、本州、四国に分布している。
幼虫はモクレン、コブシ、タムシバなどモクレン科を食べる。

四国では中央山地でこれまで1度しか出会ったことのないとても少ない憧れの種である。
そのウスゴマダラに再び出会えたのは久しぶりで嬉しさがこみ上げてきた。
翌日も別の場所で見られたのでこのあたりは四国と比べるとやや多いのかもしれない。

(撮影:長野県松本市 2009.10.13)

オオトビモンシャチホコ 本州中部編1

2009年10月26日 10時17分09秒 | Weblog
今年出会ったシャチホコガで82種目はオオトビモンシャチホコになる。

晩秋に発生するオオトビモンシャチホコはシャチホコガの中でもやや大きく貫禄がある。
今回長野県では数頭目撃できたがいずれも四国の個体と比べて小さいように感じられた。

北海道、本州、四国、九州、対馬に分布しているものを屋久島以北亜種、沖縄本島に分布しているものを琉球亜種と2つの亜種に分かれている。
卵越冬で幼虫はミズナラ、コナラ、クヌギ、アベマキ、カシワ、クリ、ウバメガシを食べる。

高知県では標高1000m以上の中央山地から低山地にかけて広く分布していて、一番早い発見が10月11日で、一番遅い発見が11月26日になるので10月中旬から11月下旬にかけて成虫が見られるといえる。

(撮影:長野県松本市 2009.10.13)


10月13~17日にかけて5夜連続で本州中部をライトトラップしてまわりました。
期間中取り立てて珍しい種は見つかりませんでしたが、四国では出会えない多数の蛾や蛾屋さんに出会えてとても楽しい旅ができました。
今日からしばらくそのとき心に残った蛾をこのブログで紹介してみます。

キエグリシャチホコ

2009年10月25日 09時49分27秒 | Weblog
今年出会ったシャチホコガで81種目として昨夜灯火に飛来したキエグリシャチホコを紹介します。

キエグリシャチホコの成虫は秋に発生し、卵で越冬して初夏から幼虫がカエデ類やクマシデを食べて育つ。

手元にある四国産の8♂6♀標本をもると一番早いのが10月2日で、一番遅いものが11月10日である。
四国ではおもに10月に発生すると考えられる。

先日遠征した本州中部では低山地でも多数の飛来が見られたが、四国では中央山地の標高のやや高い深山でないと見られず個体数もやや少ない。

本州産の個体と比較して四国産はやや大きく色も濃い傾向があるように感じたが、
本州の個体の色彩が薄く感じたのは発生が四国より早いため色あせてしまったのかもしれない。

♂は両櫛歯状で、雌は糸状をしているので触角を見ると雌雄の区別が簡単にできる。

(撮影:寒風山 2009.10.24)

クロオビフタオとの再会

2009年10月24日 09時56分28秒 | Weblog
紹介する地元の新ネタ画像が思いつかなくなり、少し以前のもので生態写真ではないが今回は特別に標本画像にすることにした。

クロオビフタオは昨年高知県西部で発見し、「みんな蛾掲示板」でご教示を受け、このブログで紹介するとともに今年「誘蛾灯No.196」で「日本未記録のフタオガを高知県で採集」としてクロオビフタオと命名して報告した種である。

このフタオガはインドや台湾に分布しているのでてっきり偶産蛾であろうと考えていた。
ところが今年高知県中部で再び発見することになりとても驚いた。

このことから偶産蛾というより高知県に生息している可能性の方が高くなったといえるだろう。
再発見場所は自宅から車で片道30分ほどの近い地点なのでその後数回出向いたがここでの2頭目を見つけることはできなかった。

今後高知県における3頭目の発見が期待される。

(採集:宇佐町横浪半島 2009.8.25)

ウスムラサキトガリバ

2009年10月23日 09時24分25秒 | Weblog
秋に発生する蛾のひとつにウスムラサキトガリバがある。

ウスムラサキトガリバは前翅中央付近が帯状に黒くなる傾向があるようだが、四国でこれまで発見した4個体はすべてこの画像のように明るい。
これは地域による変異なのだろうか。

北海道、本州、四国に分布している。
四国では深山で見つかるがムラサキトガリバと共に少ない。

先日は本州中部に行って5日連続各地でライトトラップしてみた。
ムラサキトガリバはどこでもよく飛来したがウスムラサキトガリバには全く出会えなかった。
本州でも少ないのかもしれない。

手元の標本をみると四国で一番早いものが9月22日、一番遅いのが11月7日となっている。

(撮影:いの町瓶ケ森林道 2009.10.9)

ナカジロネグロエダシャク

2009年10月22日 09時50分30秒 | Weblog
今年もナカジロネグロエダシャクが灯火に飛来した。

一見同属のネグロエダシャクに似るがナカジロネグロの方がやや大きく前翅中横線の曲がり方が異なることで簡単に区別できる。

講談社の蛾類大図鑑では北海道、本州に分布していることになっているが、四国にも分布していてネグロエダシャクより個体数が多いようだ。

両種とも晩秋に発生し、四国ではネグロエダシャクが9月下旬から10月にかけて見られるのに対してナカジロネグロの方はやや発生が遅れる。
手元の14♂5♀の標本をみると一番早いのが10月16日で一番遅い個体が11月23日だった。
この画像の個体は触角が糸状の♀で、10月9日発見なので今回さらに早い発生記録となった。

ネグロエダシャクの幼虫はホオノキを食べ、ナカジロネグロも飼育例では同じホウノキを食べることが知られている。

(撮影:いの町瓶ケ森林道 2009.10.9)