高知の自然 Nature Column In Kochi

南四国で見かけた蛾をおもに紹介していましたが、現在更新を中止しています。

ヤママユ ♂

2009年09月20日 09時59分04秒 | Weblog
とても大きな蛾、ヤママユが灯火にやってきた。

ここでは飛来時間が遅く、日付が変わる頃から現れ始め、朝になって数えてみると何と18♂も集まっている。
これほど多く見たのは初めてで驚いてしまった。

色彩の変異が大きく橙黄色、黄色、赤褐色、赤紫色など実にさまざまで、標本にして多数並べると壮観だろうと思うが標本箱の場所をとるのでそこまではする勇気がない。

高知県では成虫は8月中旬頃から発生しはじめ9月をピークに10月まで低山地で普通にみられる晩夏~初秋の蛾である。

日本では北海道、本州、四国、九州、沖縄と全国に分布しており、北海道亜種、本州以南屋久島以北亜種、奄美以南亜種と3つの亜種に分けられている。

年1回の発生で幼虫はクヌギ、コナラ、カシワ、カシ、クリ、リンゴ、サクラなどを食べる。

(撮影:宿毛市 2009.9.18)

クロエグリシャチホコ

2009年09月19日 09時55分06秒 | Weblog
今年出会ったシャチホコガ科で80番目を迎えたのはクロエグリシャチホコである。

1年間に撮影できた生きたシャチホコが80種にも達するとは全く予想していなかったので自分ながら感心してしまう。
これからは秋に発生する種がいるので年末までにはあともう少し追加できることになるだろう。

クロエグリシャチホコはスジエグリシャチホコに似ているが、種名の通りさらに黒いこと、後胸背面にある冠毛の内側の毛が赤褐色であること、前翅後縁も赤褐色になっていることから判断した。

北海道、本州、四国、九州に分布している。
幼虫はカエデ類やトチノキを食べる。
蛹越冬、年2化で高知では5月から9月にかけて成虫がみられるが少ない。

(撮影:三原村 2009.9.17)

クロメンガタスズメ

2009年09月18日 12時08分26秒 | Weblog
点灯後間もなく黒い大きなスズメガが飛来する。
離れていてもこれはクロメンガタスズメだなとすぐにわかった。

クロメンガタスズメはメンガタスズメに似ているが、後翅の基部が黒いことや前翅の先端付近が明るいことで区別できる。

本州、九州、屋久島、沖縄、台湾、中国、マレー、インドに分布している。
幼虫はゴマ、ナス、ジャガイモ、チョウセンアサガオ、タバコ、クコ、キリ、ノウゼンカズラ、キササゲ、マメ、アサ、クワなどかなり多種の植物を食べる。
成虫はハチの巣に忍び込み蜂蜜を食べることがある。

高知県では昔は見られなかったが1998年に初めて出会って以来、増えているのかほとんど毎年見かけるようになった。
反対にそれまで毎年見ていたメンガタスズメに全く出会えなくなった。
絶滅したということではないようだが、減少していると思っている。
両種お互い関連性があるのだろうか。

農作物を食べるので低地に多いが、飛翔力があるらしく四国中央山地の標高1000m以上のブナ林帯でも数回灯火に飛来した。
近年温暖化に伴い急速に分布を北に広げているようだ。

(撮影:三原村 2009.9.17)

キンスジノメイガ

2009年09月17日 09時12分32秒 | Weblog
灯火にキンスジノメイガが飛来した。

キンスジノメイガは橙黄色の地に銀色に輝く横線が何本もあるたいへん美しくて可愛いメイガだ。

銀色の筋があるのならキンスジ(金筋)というよりギンスジ(銀筋)と呼ぶ方が似合っていると思うのだが・・・、橙黄色の部分を金色にみたて金色の翅に筋が入っているという意味でつけたものだろうか。

日本では本州、四国、対馬、九州から沖縄まで北海道を除く地域に分布している。
幼虫はナンバンギセルを食べるそうだ。
ということはススキのある草原にいることになる。
高知県ではかなり少ないようでなかなか出会えない。

(撮影:室戸市 2009.9.13)

ベニヒメシャク

2009年09月16日 09時23分24秒 | Weblog
ベニヒメシャクは小さくてかわいい。

橙黄色と赤紫色の混じった模様は変異がありなかなか美しい。
前後翅の外縁部が橙黄色になっていること、翅の中央部に橙黄色紋があることは共通している。
♂の後脚の距は退化していて♀に一対ある。
低地で見つかるが高知県では数少ない。

日本では北海道、本州、四国、九州、対馬、屋久島と沖縄を除く全国に分布している。
幼虫の食草は不明らしい。
ヨーロッパではオオバコの類を食べるという。
草原で見つかるので日本でもオオバコを食べているのかもしれない。

(撮影:室戸市 2009.9.13)

スカシエダシャク

2009年09月15日 08時58分38秒 | Weblog
スカシエダシャクは多数飛来することはないが最もポピュラーなシャクガである。
前後翅ともはねに透明な部分があることからこの和名がついている。

昼間見かけることもあるが灯火によく飛来する。
あまりにもよく出会うのでいつも見過ごしているが、撮影してじっくり見直すと模様が複雑で透明な部分もありなかなか味わい深い。

静止するときははねを真横にべたっと開いて止まる性質があり、かなり古びてぼろぼろになった枯れ葉によく似ている。

日本では本州(関東以西)、四国、対馬、九州から沖縄にかけて分布しているので西日本の蛾といってよいだろう。
ごく普通種なのに未だに幼虫の食草がわかっていないのは意外に思える。

四国では低山地に多いが、時折1000m以上の中央山地のブナ帯でも見つかるのでどこでもいるようだ。

(撮影:横浪半島 2009.9.14)

セダカコブヤハズカミキリ

2009年09月14日 09時36分32秒 | Weblog
ライトトラップしているとセダカコブヤハズカミキリがやってきた。

はねは退化して飛べないので飛来したというより這ってきたのだろう。
これまでもこういうことは数回あった。

背中がコブ状に盛り上がってカミキリ特有のスマートさがなく、グロテスクな体つきをしているが、そこがかえって魅力を感じる。

本州の関東以西、西日本に分布していて四国ではおもに1000m以上の中央山地で見つかる。
成虫は夏から秋にかけて発生し、地域変異が大きく多くの亜種に分かれているようだ。
寄生植物はアカメガシワ、コナラ、ブナ、タンナサワフタギなど。

(撮影:天狗高原 2009.9.10)

オキナワアシブトクチバ

2009年09月13日 09時42分17秒 | Weblog
アシブトクチバの仲間はどれもスマート感があって大好きなヤガである。

これらの中で一番多く出会うのはこのオキナワアシブトクチバになる。
大きさと模様はアシブトクチバによく似ているが、前翅の黒褐色紋の外側が波状にならず弧状に曲がっていることで区別できる。

日本では本州(紀伊半島)、四国、九州南部、屋久島から沖縄にかけて分布している。
高知県では海岸近くで見られる。
室戸岬や足摺岬では少なく、県中部の横浪半島では個体数が多く普通種になる。
オキナワと名がつくので沖縄では多いかと思っていたが、かなり少ないようで沖縄では出会ったことがない。

オキナワと他の地名のついた種が高知県で多く見られるのは嬉しい。
横浪半島で本格的な調査を始めたのは2005年からだが、その頃から毎年よく見られるのでこの地での増減の推移は不明である。

幼虫の食草はわかっていない。
インドではトウダイブサ科のGlochidionが記録されているが日本にはない。
同じ科でよく見かけるのはニシキソウやコニシキソウなのでそのあたりを食べているのかもしれない。
成虫は春から秋にかけて見られるので年2~3回の発生であろうか。
今では見つけても採集はしないが、♀をつかまえて産卵させ食草探しをしてみるとおもしろそうな気がしてきた。

(撮影:横浪半島 2009.9.3)

サンカククチバ

2009年09月12日 10時06分33秒 | Weblog
今年もサンカククチバが灯火に飛来するようになってきた。

サンカククチバは前翅の片方によく目立つ黒い三角紋が2つあることでこの名がついている。

日本では本州(西南部)、四国、九州、屋久島、沖縄にかけて分布している。
幼虫はヤハズソウを食べる。
高知県では成虫は8月より晩秋の11月まで見られ海岸付近に多い。

私がサンカククチバに初めて出会ったのは2000年5月に仕事で沖縄の久米島に行ったとき灯火に飛来していて採集している。
一方、高知県では翌年の2001年8月に西部の土佐清水市でライトトラップに飛来したものを発見して四国未記録種として発表した。

その後、県下では次々と発見されるようになり、近年は県中部の高知市北部の山地でもよく出会うようになってきた。
今では高知市の住宅街にある我が家の庭でも時々見かけ、すっかり普通種に成り下がってしまった。

サンカククチバは沖縄の蛾という思いがあるが、これまで数回出向いた沖縄諸島ではあまり見られず少ないようだ。
そのような南方系の種が遠く離れた北の高知県で増えているのはキモンクチバと共にたいへん興味深いことである。
これは温暖化や天敵の少ないことに影響しているのだろうか。
九州南部ではキオビエダシャクが増えたことはよく聞くがこれらはどうなんだろう。

(撮影:横浪半島 2009.9.11)

キモンクチバ

2009年09月11日 09時35分56秒 | Weblog
今年もキモンクチバが灯火に飛来した。

キモンクチバは四国では1981年愛媛県内海町でブドウの果実に飛来したものが最初の記録になる。
その後、高知県では1987年に土佐清水市で最初に発見されている。

この頃はキモンクチバを見つけたくて、片道3時間以上かけて遠い道のりを幾度となく足摺方面に通い、2003年に大月町で擦れた個体ではあったが初めて発見できたときの感激を今でも思い出す。

その後は昆虫調査の依頼を受けて横浪半島でライトトラップをしているとき2005年秋に再び発見できた。
その年は1頭だけであったがこの地では年々数が増し、今ではすっかり普通種に近づいてきた。
一夜に4頭飛来することさえあるのだ。
自宅から片道30分足らずのこんな近い場所であこがれだったキモンクチバ簡単に出会えるのは嘘みたいな気がする。
ということで、今では以前の感激がすっかり薄れてしまった。
他の地ではまだまだ発見例の少ないまれな種と思われる。

日本では 本州(西部)、小笠原、九州、種子島、屋久島、奄美大島、沖縄に分布している。
幼虫はホソバノウナギツカミ、ツルソバ、イヌタデを食べる。

(撮影:横浪半島 2009.9.3)