平成20年(ヨ)第26号 仮処分申立事件
決定
東京都 債権者 辨谷 拓五郎
富山市堤町通り一丁目2番26号
株式会社 北陸銀行
債務者 代表取締役 高木繁雄
主文 1 債権者の申立を却下する。 2 申立費用は、債権者の負担とする。
理由 第1 申立の趣旨 1 債権者が債務者に提出した相続関係届出書、同書を利用して債務者が株式会社住宅金融債権管理 管理機構に対して行った支払証書、辨谷ハシ名義の預金口座顧客勘定元帳、同口座開設契約書 に対する債務者の占有を解いて、本決定の日から2週間富山地方裁判所執行官にその保管を 命ずる。 2 上記執行は、上記書類を、その保管場所におぴて、債権者及び債務者に閲覧及び謄写をさせなけ なければならない。
第2 前提事実 一件記録によれば以下の事実が認められる。 1 辨谷ハシ(以下「ハシ」という。)は平成11年8月1日死亡した。 2 辨谷貞造(以下「貞造」という。)同昌造(以下「昌造」という。)債権者は、ハシの子である。 3 債務者小立野支店には、ハシ名義の普通預金口座(口座万号)及び定期預金口座 (口座番号.。以下両口座を合わせて「本件口座という。)が存在する。 4 債権者は債務者に対して、平成15年7月29日、本件口座に関する同月28火付け相続関係 届出書を(以下「本件届出書」という。)を郵送し、同月30日、本届出書は債務者に配達された。 5 貞造は平成18年1月6日付けで、金沢家庭裁判所に対し、昌造及び債権者を相手方とする遺産 分割審判を申し立てた。 6 貞造は平成18年3月14日死亡した。第3 申立の理由 1 被保全権利の存在 (1)小立野支店のハシ名義の口座ほ預金口座(本件口座)は、債権者の実父である桜井兵五郎 (以下「兵五郎」という。)のものである、ハシ(実母ではない)は兵五郎から委託を受けて管理していた していたにすぎない。したがって、同口座に関する預金債権は、兵五郎を相続すべき債権者 のものであり、貞造及び昌造には相続する権利はない。 (2)債務者は本届出書を悪用し、貞造の株式会社住宅金融債権管理機構にたいする保証債務を を本口座の預金を用いて貞造に代わって支払った。 (3)仮に上記主張が真実出ないにしても、被相続人の預金債権については分割債権(民法427条) の原則により、共同相続人が各相続分に応じて預金債権を有する。
2 保全の必要性 債権者は、債務者に対して、本届出書の返還をもとめたが、これを返還しない。
第4 当裁判所の判断 1 被保全権利について 一件記録によれば、貞造が、株式会社住宅金融債権管理機構に対し、連体債務保証(主債務 者日本観光株式会社)を負っていることが認められるけれえども、債務者が、本届出書を悪用し 、上記債務保証を本件口座の預金を用いて貞造に代わって支払ったとは認められない。 一件記録によても本件口座が兵五郎のものであるとは認められない。 したがって債権者が債務者に対し、本件届出書の悪用等に関し損害賠償請求権を有するとか 、本件本件口座の預金全額について権利を有するものとは認められない。 もっとも、前提事実の通り、債権者はハシの相続人の一人であるから、債務者に対し、相続分に に応じた預金債権を有することは認められる。 2 保全の必要性 債権者の債務者に対する預金債権は金銭債権であり、その保全に当たっては債務者の資力が 問題になるのであって、本件届出書、株式会社住宅金融債権管理機構に対する支払証書 本件口座の顧客勘定元帳および開設誓約書の占有を解いて、債権者に閲覧、謄写を認める 必要は何等存在しない。第5 結論 以上によれば、債権者の申立は理由がないから,主文の通りけっていする。 平成20年8月8日 富山地方裁判者民事部 裁判官 松本武人