社会人大学院で学ぶ技術経営

社会人大学院で技術経営を学びながら日々の気づきを書きとめてみます.

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米国NSFのサービスサイエンスへのファンディング

2009年01月31日 | サービスサイエンス

米国NSF(National Science Foundation)のサービスサイエンスへのファンディングに「Service Enterprise Systems (SES)」がある。SESは、NSF工学局(Engineering (ENG) Active Funding Opportunities)の下の「Civil, Mechanical and Manufacturing Innovation (CMMI)」部の下の「Systems Engineering and Design (SED)」課にあるプログラムである。プログラムディレクターは、Cerry Klein(ミズリ大教授)でORの専門家である。

SESの概要説明:
The SES program supports research on strategic decision making, design, planning and operation of commercial, nonprofit, and institutional service enterprises with the goal of improving their overall effectiveness and cost reduction. The program has a particular focus on healthcare and other similar public service institutions, and emphasizes research topics leading to more effective systems modeling and analysis as a means to improved planning, resource allocation, and policy development.

上記の説明では明示的にサービスサイエンスというキーワードは出てこないが、あえてサイエンスという言葉を避けているのかもしれない。

ところで、Systems Engineering and Design (SED)には、SESの他にも以下のプログラムが走っている。

  • Control Systems  (CS) 
  • Dynamical Systems  (DS) 
  • Engineering Design and Innovation  (EDI) 
  • Operations Research  (OR) 
  • Sensors and Sensing Systems  (SSS) 
  • Service Enterprise Systems  (SES) 

米国は、日本と比べてシステム工学に対して価値を認めている証のように思える。

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サービスサイエンスの効能

2009年01月18日 | サービスサイエンス
科学技術と経済の会の機関誌「技術と経済」2008年12月号に「フラット化する世界とサービス・イノベーション」(丸山力 著)という記事が掲載されている。

ここでは、「サービスサイエンス」を知識社会/サービス社会(=フラット化する世界)に向けて組織を変革する道具として位置づけている。具体的には、サービスサイエンスの効能として、以下の3点を挙げている。
(1)成功の理屈を抽出し展開できる。
(2)社会・組織を可視化し変革できる。
(3)サービス行動を分解・分析し、最適解を定式化し展開できる。

「サービスサイエンス」を還元論的にサービスの課題を解決する科学(サイエンス)と捉えるのではなく、組織や社会を変革するためのトリガー(宗教?)として捉える点が興味深い。還元論的なサイエンスを信奉する人にとっては、「サービスサイエンス」は科学ではないという話になるが、結果として知識社会/サービス社会に向けた変革に貢献するとすれば歴史的意義はあるということだろう。
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経済産業省サービス工学分野の技術ロードマップ

2009年01月18日 | サービスサイエンス
経済産業省/NEDOは、各分野の技術ロードマップを毎年作成・更新し、Webで公開している。2008年版には、サービス工学分野の技術ロードマップが掲載された。

技術戦略マップ2008(METI/経済産業省)

技術ロードマップと言っても、具体的な時間は記載されておらず、「導入」「普及」「発展」の3つのフェーズに対して、観測技術、分析技術、設計技術、適用技術の方向性が示されている。

「観測-分析-設計-適用サイクル」は「モノビス知識処理モデル」と比較すると興味深い。
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知識移転:企業の競争優位の基盤

2008年08月15日 | 知識移転・知識継承
ArgoteとIngramによる知識移転と競争優位に関する文献

Linda Argote, Paul Ingram, Knowledge Transfer: A Basis for Competitive Advantage in Firms(知識移転:企業の競争優位の基盤), Oganizational Behavior and Human Decision Processes, Vol. 82, No. 1, May, pp. 150-169, 2000」(PDFで入手可能

では、知識移転(※1)の構造を説明するモデルとして「知識貯蔵庫フレームワーク(framework of knowledge reservoirs)」を提案している。

知識貯蔵庫フレームワークでは、知識は基本エレメント(メンバー、ツール、タスク)および基本エレメントを連結するサブネットワーク(メンバー間ネットワーク、タスク間ネットワーク、ツール間ネットワーク、メンバー・タスク間ネットワーク、メンバー・ツール間ネットワーク、タスク・ツール間ネットワーク、メンバー・タスク・ツール間ネットワーク)に埋め込まれていると考える。

ここで、知識移転は、①送り手から受け手への知識貯蔵庫の移動および②受け手の知識貯蔵庫の更新、として定式化される。

基本エレメントだけではなく、サブネットワーク(エレメント間のインタラクション)もモデルに入れ込んだ点がポイント。エレメントよりネットワーク(インタラクション)の方が、より移転が難しい。

知識移転を容易にするには、基本エレメントやネットワークの送り手と受け手の間の「互換性」が重要である。「互換性」を高めるには様々な方法(メンバーの異動など)がある。

一方、企業の競争優位の源泉が「知識」にあるとすれば、内部の知識移転を促進し、外部への知識流出を抑止することが、企業の競争優位の基盤(A Basis for Competitive Advantage in Firms)となる。

本論文で提案した「知識貯蔵庫フレームワーク」は、組織がどのように外部への知識流出を最小化し、内部の知識移転を達成するかを示し、企業の競争優位を理解するためのベースを提供している。すなわち、本フレームワークにより、企業内部の「互換性」を高め、外部への「互換性」をなくすことが、企業の競争優位の基盤の確立につながる、というのが本論文の主張である

(感想)主張は理解できるが、「知識貯蔵庫フレームワーク」はぜひ使ってみたいフレームワークというほどではない。500以上文献からの引用されているのは、競争優位と知識移転を整理したからか。

※1:「Knowledge transfer in organizations(組織の知識移転)」の定義:
The process through which one unit (e.g., group, department, or division)is affected by the experience of another.



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R&D知識の移転:知識移転を成功させる重要な要因

2008年08月14日 | 知識移転・知識継承
Jeffrey L. CummingsとBing-Sheng Tengによる2003年の論文「Jeffrey L. Cummings, Bing-Sheng Teng, Transferring R&D knowledge: the key factors affecting knowledge transfer success, J. Eng. Technol. Manage., vol.20, pp.39-68 (2003)」(PDFでダウンロード可能)では、R&D知識の移転において、知識移転を成功をさせる9つの要因に関して、R&Dマネージャへのアンケートを通じて効果を調査・分析している。最近(2003年)の論文にもかかわらず、100以上の論文から引用されている要注目論文である。

9つの要因とは、「知識の埋込み度(embeddedness)」「明解可能性(Articulability)(※)」「組織的距離(Organizational distance)」「物理的距離(Physical distance)」「知識的距離(Knowledge distance)」「規範的距離(Norm distance)」「学習文化(Learning culture)」「プロジェクト優先度(Project priority)」「移転活動(Transfer activities)」であり、知識移転の成功は受け手の内面化の度合で調査している。

※明解可能性(Articulability):知識の形式知化(コード化)しやすさ

69人のR&Dマネージャ(知識の送り手(Source))へのアンケートを重回帰モデルで分析した結果、知識移転の成功には、「知識の埋込み度(embeddedness)」「明解可能性(Articulability)」「知識的距離(Knowledge distance)」「規範的距離(Norm distance)」「移転活動(Transfer activities)」が効いていることがわかった。

ただし、「明解可能性(Articulability)」に関しては、「明解可能であればあるほど知識移転の成功確率が下がる」という仮説と合わない結果となった。

本論文では、上記の結果に関して説明を試みている。今回は、知識の送り手(Source)へのアンケートであり、送り手と受け手(Recipient)では知識の明解さに関して認識の違いがあるのかもしれない(送り手は明解だと思っても受けて手にとっては分かりにくい)。また、送り手が過度に知識を形式知(コード)化してしまうと、魂が伝わらず受け手の内面化が進まない。などなど、面白い議論が展開されている。




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品質問題と知識創造

2008年03月16日 | 知識移転・知識継承
九州大学の吉村達彦先生の解説記事「品質問題の未然防止手法GD3」に品質問題と知識創造に関する興味深い指摘がある。

最近の品質問題が、「いくつかの原因が複合して起きており、それに気がつかなかったために問題が起きたというものが多い」とし、「問題に気付く能力(創造性)を上げることが、品質問題の未然防止に役立つ」としている。

これは、従来の品質問題が、分析的・解析的(=アナリシス)なアプローチが主体だったのに対し、創造的・形成的(=シンセシス)なアプローチも重要であるとの指摘として考えると興味深い。

筆者も、「マネジメントの知識継承」とは、結局のところ過去のマネジメント事例を学ぶことで、将来のマネジメントの問題を創造的に発見する能力を育成することであると考えている。

具体的な創造的・形成的(=アナリシス)なアプローチとして、GD3(Good Design, Good Discussion, Good Design Review)およびFMEAをgood discussion向けに改良し、それをベースに創造的問題発見を支援する手法であるDRBFM(Design Review Based Failure Mode)やFMEAをgood design review向けに改良し、それをベースに実験の結果から創造的問題発見を支援する手法であるDRBTR(Design Review Based on Test Result)を提案している。

実際に、DRBFMはトヨタおよびトヨタの関係会社で幅広く使われているらしい。
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Hillary Clinton の Services Science Initiative 

2008年01月19日 | サービスサイエンス
米国大統領候補ヒラリー・クリントン氏は、公約の中でServices Science Initiativeの設立を謳っている。一方、オバマ氏のサービスサイエンスに関する言及は見当たらない。

Create the Services Science Initiative (ヒラリー・クリントン氏のHPより)

http://static.hillaryclinton.com/news/release/view/?id=3656

The services sector now accounts for approximately 80% of the U.S. economy. Nevertheless, innovation is rarely associated with the generation and delivery of services. Companies are increasingly carrying out service R&D, but there is no discipline that promotes innovation and productivity in the services sector in the same way that electrical engineering, for example, has led to technological advances in the development of the computer chip. Accordingly, Hillary will create a Services Science Initiative. Modeled on the National Nanotechnology Initiative, the federal government will help support R&D in services; support and encourage cross-disciplinary research that draws on fields such as computer science, management, operations, and organizational behavior; and also facilitate the dissemination of knowledge. The Services Science Initiative will help improve the competitiveness of American business, and in the process, create jobs.
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暗黙知と技術経営(ポランニーとミンツバーグ)

2008年01月04日 | 技術経営
ポランニーの「暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)」とミンツバーグの「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方」から、暗黙知と技術経営(MOT)について考察する。

「暗黙知の次元」では、「暗黙知」を科学の進化を哲学的に解釈するための道具として位置づけている。すなわち、形式知(の演繹)だけからは新しい知識(創発)は生まれない。創発には暗黙知が大きな役割を果たしており、科学の進歩には暗黙知が不可欠である。さらに、暗黙知はすべての明示的な認識に統合的な意味を与えるものであり、人間の存在価値にもリンクしたもの(神の手)でさえある。これを「ゲシュタルト(統一的な全体)」と呼ぶとすれば、「ゲシュタルトは認識を求める過程で、能動的な経験を形成しようとする結果として生起するものである。この形成もしくは統合こそ、私が偉大にして不可欠な暗黙の力とみなすものに他ならない(21ページ)」。ここで、「形成もしくは統合」は、「形式知によるアナリシス」に対峙する「暗黙知によるシンセシス」と呼ぶこともできるだろう。

一方、「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方」(あるいは、「H. ミンツバーグ経営論」)では、従来型MBAが得意とする「形式知によるアナリシス」は実際のマネジメントのごく一部でしかなく、理論(=形式知)に照らして経験をじっくり振り返える「省察」と、省察に基づいて暗黙的に得られた知見を日々のマネジメントで形成的もしくは統合的に実践することの重要性を述べている。

ミンツバーグは、一般的な「マネジメント」について論じているのだが、技術経営(MOT)は、それ以外のマネジメントと比べて、「アナリシス」より「シンセシス」の比重が高い。実際、技術経営の最も重要なテーマであるイノベーションはシンセシス以外の何者でもない。

上記の議論を誤解を覚悟の上でまとめると次のようになる:

●アナリシス(分析)、形式知重視、MBA的アプローチ、左脳マネジメント、ファイナンス/M&A経営(悪い事業を切り捨てる)

●シンセシス(形成/統合)、暗黙知重視、MOT的アプローチ、右脳マネジメント、イノベーション経営(新しい事業を創造する)

筆者は、技術経営において「暗黙知」は本質的な役割を持っていると考える。このとき、同様に暗黙知および知識創造を重視している「知識経営」と「技術経営」は、もっと近い存在であるべきであろう。別の言い方をすれば、「知識経営」的な「技術経営」のより一層の発展が望まれる。

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イノベーションダイナミクスモデルとサービスイノベーション

2007年04月22日 | サービスサイエンス
イノベーション・ダイナミクスモデル(アッターバック著,「イノベーション・ダイナミクス―事例から学ぶ技術戦略」108ページ)では,産業(例えば,自動車,半導体メモリー)の発展過程を「流動期(様々なデザインが登場する過程)」「移行期(ドミナントデザインが決まる過程)」「固定期(ドミナントデザインに基づき効率化が進む過程)」の3ステップで説明している.流動期には,多くのプロダクトイノベーションが発生し,固定期には多くのプロセスイノベーションが発生する.また,流動期はベンチャー的企業が得意であり,固定期はある程度規模の大きい企業が得意である,としている.

さて,固定期を向かえ成熟した産業の「脱成熟化」が大企業の大きな課題である.このとき,「脱成熟化」の有望なアプローチとして製品のサービス化を位置づけるのは自然だろう.実際,自動車産業もテレマティクスなどのサービスにシフトしつつある.

アッターバックらも,脱成熟化の鍵は「政府の規制の変化」と「顧客と企業の相互学習」であると指摘しており,後者はサービスサイエンスにおけるサービスの定義「企業と顧客が一緒に価値を創造するプロセス」とも符合する.

さて,このような視点で考えると,プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションの2つの波で構成されるオリジナルのイノベーション・ダイナミクスモデルは,サービスイノベーションを加えた3つの波で表現できるのではないだろうか(新イノベーション・ダイナミクスモデル).



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事業活動の表舞台(サービス)と裏舞台(モノづくり)

2007年03月25日 | サービスサイエンス
2007年3月13日発行のサービスサイエンスに関する新刊書「サービス・ストラテジー」(原題:Service is Front Stage)では,すべての事業活動は表舞台(サービス)と裏舞台(モノづくり)から構成されるとしている.本書の38ページでも引用されているように,「本来,サービス業などというものは存在せず,どの業界もサービスとかかわりがある.他の業界と比べて比重が大きいか小さいかだけが違いなのである(セオドア・レビット,1972)」,といった指摘は昔からあるものの「表舞台」と「裏舞台」という比喩はわかりやすい.

さて,製造業は従来は裏舞台の比重が高かったが,最近は表舞台の重要性が増しているといえる.製造業の研究開発も従来は裏舞台に関するものが多かったが,今後は表舞台の研究開発が重要となると思われる.ただ,表舞台の研究開発は従来と同様の工学的な手法やスタイルになるのかはわからない.

サービスサイエンスの研究者は,研究の内容だけではなく研究のスタイルも開拓していく必要があると思われる.
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