Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

Marketing Science Conference@上海

2016-06-19 02:43:58 | Weblog
6月16〜18日、上海国際会議センターで Marketing Science Conference が開かれた。主催校は復旦大学だ。この会議がアジアで開催されるのは初めてである。上海は羽田から3時間足らずの距離で時差は1時間、沖縄に行くのとほとんど変わらない。とはいえ、主要なウェブサービスにつながらないなど、いろいろな壁を経験することになった。



今回は、NYU Stern School の石原さんとの共同研究を、石原さんが流暢かつ畳み込むような英語で報告した。この研究では、期間限定ビールの導入が、当該企業(あるいは市場全体)にどのような影響を与えるかを、スキャンパネルデータを用いて分析した。期間限定ビールが共食いにならず、需要を全体に拡大しているかどうかがポイントである。



中国で開かれたということもあり、中国だけでなく、世界の中国人マーケティング研究者が訪れていた。このところ北米で開かれた会議でも、中国系の研究者・学生が非常に目立つ。今回は当然それ以上に多い。彼らは若いので、これからもこの傾向は続くだろう。日本人は少数だが、それでもふだんの会議よりは多くの人が出席していたようだ。

毎回そうするのだが、プログラムをキーワード検索して、聴講する発表を探す。agent-based modeling/simulation、complex(ity) science、complex network といったキーワードは全くヒットしない。それどころか、noncompensatoryとかdecoy effectとかもゼロ。つまり、標準的な理論や手法に楯突くような研究が皆無になったのである。

マーケティング研究者の全体的な関心がそのように変わったのか、今回構成比が多かった中国人研究者がとりわけそうなのか、非標準的な理論・方法に興味を持つ欧米の研究者は中国まで行く動機を持ちにくいのか、それとも今回たまたなそうなったのか、よくわからない。いずれにしろ、こうした変化は自分にとっていささか寂しいことである。

一方、オンライン、デジタル、モバイル、オムニチャネルといった話題はさかんに取り上げられていた。そのために企業からデータを入手したり、協力を得てフィールド実験を行ったりしている点は素晴らしい。日本にもそうしたデータはあり、独自に分析されてもいるはずだが、マーケティング・サイエンスとの接点は強くない印象がある。

最後のディナーで、新たなフェローが選ばれたりしていたが、フェローにおけるアジア系はインド人だけで、研究者の数が増えている中国人にもまだいない(時間の問題かもしれないが)。日本人についてはどうなのか・・・日本はそもそも層が薄いから仕方がないと思うが、いささか寂しい。特に海外で活躍する日本人研究者に期待したい!

さて、私は2日目あたりに喉が痛くなり、風邪を疑ったが、どうも症状が違う気がする。似たような症状を訴える人も何人かいて、大気汚染の影響かもしれないと考えた。タクシーに騙されただけでなく、なかには脅された人までいて、緊張感のある街であった。会場でも街中でも、いまさらながらチャイナ・パワーの凄さを実感した。


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Meet the Editor@JIMS99, 東北大学

2016-06-14 20:13:00 | Weblog
6月11〜12日に東北大学で開かれた、日本マーケティング・サイエンス学会第 99 回研究大会(JIMS99)。今回の目玉は、Journal of Retailing の編集長でミズーリ大学教授 Murali Mantrala 教授による講演だ。特に注目されたのが、海外のジャーナルに投稿するにあたっての助言である。

日本のマーケティング研究者からは、言葉の壁に加え、日本で収集したデータを分析した結果に一般性を認めてもらえない、といった懸念が表明された。それに対して Mantrala 教授は、ドイツやオランダ、あるいは中国などからの多数の論文が投稿・掲載されていると、とりつく島もない。

海外の一流論文誌では研究手続きで要求される水準が年々高まっており、いかにキャッチアップすべきかという質問には、チェックリストを作って「標準」に従うべきだという。アプローチの多様性については、少なくとも Journal of Retailing では維持されていると過去の例が紹介された。

理工学はもちろん経済学や心理学など、研究発表のグローバル化が進んでいる領域から見れば、周回遅れの議論に見えるだろう。たとえば、進化経済学会のような、そんなに大きいわけではない学会でさえ、英文論文誌を発行したり、国際大会を開催して海外からの参加を受け入れたりしている。

その意味では、マーケティングの国際学会に参加するのもいいが、グローバル化が進んだ国内の関連学会にもっと参加し、その運営にまで入り込むことが、いずれ日本のマーケティングの学会をグローバル化するうえで役立つかもしれない。仲間で小さく閉じていても進歩しない。
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ニューヨークで「軽く見られない」術

2016-05-27 09:28:13 | Weblog
本書は,ニューヨークに30年以上住む著者が、当地で知っておくべき英語表現を指南する本である。単に意思を伝えるというレベルを超えて、「軽く見られない」ことは一定期間滞在する人間にとって重要なことだ。ニューヨークで在外研究中の自分にとって、もっと早く出会いたかった本である。

ニューヨーカーに学ぶ 軽く見られない英語 (朝日新書)
田村明子
朝日新聞出版

だが、本書の魅力は、著者が体験したさまざまなエピソードを通じて、ニューヨーカーの心理について語っている点にある。たとえば、ニューヨーカーは街で有名人を見かけても、滅多に声をかけたりしない。しかし、そのとき彼らは心中穏やかかというと、全くそうでなかったりする。

ニューヨークでは、さまざまなタイプの「物乞い」に遭遇する。特に地下鉄の車両内で。日本人にとって意外なのは,1車両で少なくとも数人は施しをすることだ(芸が優れているともっと)。しかし、著者の観察ではアジア人はそうしない傾向が強い。文化差、宗教の差がありそうである。

「軽く見られない」というタイトルは潜在的読者に突き刺さるが、実際は「相手の感情を害さない」といったほうがよい側面も少なくない。一見合理的なニューヨーカーとはいえ感情に支配される。最終的に重要なのは、文化や慣習を含めて、相手を理解することだいう当然の結論に行き着く。

これからニューヨーク(あるいは他の北米の都市)を訪れたり滞在したりする可能性のある人には、ぜひ一読をお薦めしたい。私の場合、本書を読むことで「軽く見られない英語」を駆使できるようになったとは到底いえないが、それでもニューヨーカーへの理解が深まったような気がしている。

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東日本大震災に関する本を読む

2016-05-20 23:59:10 | Weblog
今年の 3.11 の少し前から、当時、政府を代表とする統治機構に何が起きていたのか知りたくて、とりあえず出版されたばかりの『規制の虜』、数年前に出版された『カウントダウン メルトダウン』を読み始めた。前者の著者は国会臨調、後者は民間臨調の中心人物であった。

黒川清氏の著書のタイトル『規制の虜』は、規制者(政府)が被規制者(東京電力など)に実質的に支配されるような現象だという。国会臨調の調査を踏まえて著者が最も訴えたい点が、そこにある。もちろん、それは単純な東電悪玉論ではない。規制者の側にも問題がある。

規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす
黒川 清
講談社

そうこうしていると、4月には熊本を中心に大規模な地震が起きた。それから1ヶ月以上経ったいまも、多くの人々が避難生活を強いられている。過去の震災と単純には比較できないが、政府・自治体、企業や個人が過去の経験から学ぶことの重要性は誰も否定しないだろう。

規制の罠(regulatory capture)というのは経済学の概念らしい(不勉強にも知らなかった)。規制者と被規制者の間の何らかの補完性、依存性が生じてしまうということだろうか?もう1ついえることは、双方を動かすエリートの同質性だろう。単に学歴だけの話ではない。

黒川氏は本書を一種の「日本論」だと語る。日本のエリートが戦前から維持してきた「システム」が、大地震や原発事故、あるいは戦争のような緊急事態に驚くほどの弱さを露呈する。そのことは丸山真男を始め、多くの識者が語ってきた。何も変わっていないということだ。

それが社会の構造的問題となると、そう簡単には解決できないことになる。しかし、本書に記された、国会臨調の設立から運営に至る著者の奮闘は、明るいニュースといえるだろう。この本を、緊急時のプロジェクト・マネジメントの事例として読むこともできるだろう。

一方『カウントダウン・メルトダウン』は、船橋洋一氏が民間臨調の調査に独自取材を加えて著したものだ。政治家や官僚、自衛隊幹部、さらには米国政府や米軍などの広範な関係者が実名で証言する。登場人物が多く、時間が前後するので、必ずしも楽な読書にはならない。

カウントダウン・メルトダウン 上 (文春文庫)
船橋 洋一
文藝春秋

カウントダウン・メルトダウン 下 (文春文庫)
船橋 洋一
文藝春秋

しかし、個々の事実関係もさることながら、関係者をつねに覆っていた情動を少しでも体感できるのがよい。情報が極端に限られるなか、深刻な結果を伴う意思決定を強いられるストレス。誰も経験したことがない原発事故が起こす、想像を絶する潜在的危機に対する恐怖感。

たとえば、菅首相の行動の是非をめぐりよく話題になる、東電の福島第一原発からの「撤退」を認めるかという問題。最悪の事態を招きかねない行動を認めるのか、かといって民間人たる東電社員に命を投げだせと政府が命令できるのか。当時者の苦悩に身を置くこともできる。

いずれの本も、重くて深い問いを突きつける本だといえる。『規制の虜』は、日本社会に潜む構造的な問題を浮かび上がらせる。『カウントダウン・メルトダウン』は、むしろ当事者一人ひとりの行動のあり方を問うてくる。どちらが正しいかではなく、相補的な視点だろう。
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Four School Conference@Columbia U

2016-04-29 22:15:28 | Weblog
4月29日、コロンビア大学で開かれた Four-School Conference を聴講した。4校とはコロンビア、NYUスターン、ウォートン、イェールの経営大学院で、各校からマーケティング教員が一人ずつ最新の研究を発表する。会場は持ち回りで、昨年は NYU で開かれた。




最初にイェールの Aniko Oery 助教が、Collective Branding の研究を発表。これは、ワインの産地とか企業ブランドのような複数ブランドを上位「ブランド」で括る戦略である。こうした戦略の違いで評判均衡(reputation equilibrium)がどう変わるかが解析される。

何らかの上位ブランドがあると、その評判に低品質の個別ブランドが「ただ乗り」するインセンティブが生じ得る。企業と消費者が合理的に自己利益を追求した結果、低品質の均衡に陥るかどうかが検討される。つまりこれは、ゲーム理論に基づく、理論的研究なのである。

次いで報告に立ったのは、NYU の Eitan Muller 教授、普及モデル研究の大御所である。取り上げられたのはスマホ・アプリの「フリーミアム戦略」だ。フリーミアムとは、無料の普及バージョンと有料のフルバージョンを組み合わせた価格戦略としてよく知られている。

最初に市場データを一瞥したのち、フリーミアム戦略が利益を最大化する条件が解析される。つまり最初の2つの発表は、合理的な経済行動の帰結を探求する、ミクロ経済学的な研究といってよい。米国のマーケティング・サイエンスでは、それが主流になっているようだ。

3番目の報告は、一転して被験者実験を積み重ねる消費者行動(CB)の研究だった。報告者はコロンビア大学の Donald Lehmann 教授、彼も大御所の一人である。そこで取り上げられる Decision Confort という概念は、「決定における心地よさ」と訳せばよいのだろうか。

これは意思決定において、このへんで決めてしまおうと感じさせる、ソフトでポジティブな感情だという。それは意思決定における自信(confidence)とは違う。自信がなくても心地よく意思決定することはあるからだ。この概念が今後どのように発展していくか注目したい。

最後はウォートンの Ron Berman 助教で、レコメンデーションの効果をベイズ・ルールで信念を形成する消費者を仮定して解析する。それによれば、過去の購買履歴の類似性に基づくレコメンはニッチな製品については顧客の効用を高めるが、売れ筋については逆効果になる。

この研究も最初の2つの研究と同様、ミクロ経済学的なモデルに立脚している。違うのは実験による経験的な検証まで行っている点だ。いずれにしろ、要因と結果の統計的関係を把握するだけでなく、市場の現象を合理的行動の結果として理解しようとする流れに沿っている。

日本のマーケティング・サイエンスも早晩そのような流れに追随すべきか、あるいは別の道を行く(孤立する?)べきか、いずれにしろそれを選択するのは、これからの研究を担う若手研究者であろう。それはともかくコロンビア大学の構内には、まだ春の風景が残っていた。



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NHK大河「真田丸」のお伴に

2016-04-24 00:01:21 | Weblog
私の Twitter タイムラインでは、(日本時間で)日曜夜となると NHK大河ドラマ「真田丸」に関するツイートが多い。かくいう私も、日本から半日遅れでテレビジャパンの「真田丸」を視聴している。その魅力の1つは、草刈正雄が演じる真田昌幸の機会主義的行動の面白さであろう。

とはいえ、真田家を取り巻く諸大名の関係、加えて地理的な関係はわかりにくい。真田のジオポリティクスは、地図を見ながらでないと理解できない。その意味で「真田丸」の時代考証も務める丸島和洋氏による「図説」を手元に置いておくと、ドラマの理解が格段に深まるのである。

図説 真田一族
丸島和洋
戎光祥出版

この本は、中学あるいは高校時代に用いた日本史の副読本を思い出させる。真田家に関わる歴史が、ふんだんに掲載された地図、家系図、当時を伝える史料の写真などカラーの画像で語られる。丸島氏の解説も、この時代・地域を専門とする歴史学者としてのウンチクが満載で楽しめる。
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『1からの消費者行動』

2016-04-11 13:14:40 | Weblog
消費者行動論の教科書はすでに多く出版され、本ブログでも紹介してきた。たとえば、2012年には守口・竹村先生青木・新倉・佐々木・松下先生の教科書が出版され、昨年は田中先生の教科書が改訂された。消費者行動論を教える教師にとっては、どれを選択するか悩ましいことだろう。

より本格的な教科書には、昨年刊行されたマイケル・ソロモンの教科書がある。この分野を極めたい読者には格好の書物だが、量的にも価格的にも一般学生には手を出しにくい。ところがソロモン本の訳者たちが、新たによりコンパクトで読みやすい教科書を執筆した。それが本書である。

1からの消費者行動
松井剛,西川英彦
碩学舎

小石川家という仮想的な4人家族のエピソードを通じて、消費者行動論の基本的な話題が解説されていく。ソロモンの単なる概説書ではなく、著者独自の視点も反映されているという。となると、この本はソロモンの教科書へ導く補完品なるのか、それともより手軽な代替品になるのかが気になる。

おそらく学部の一般的授業では本書を、ゼミや大学院で消費者行動なりマーケティングを専門とする人はソロモンを、という棲み分けになるのだろうか。いずれにしろ、消費者行動論については次々によい教科書が出るが、マーケティング・サイエンスについては・・・などと思ってしまう。
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JAFEE20@東大・本郷

2016-03-27 12:02:35 | Weblog
3月26〜27日は東京大学本郷キャンパスで開かれた進化経済学会(JAFEE)第20回大会に参加した。今回は、3つの併行セッションがある国際会議も同時開催され、Alan Kirman を始めとする国際的に著名な研究者が招待された。国際色豊かな、華やか大会であった。



国際会議での発表の多くはエージェントベースモデル、複雑ネットワーク、経済物理学などに関するものであった。これらの流れに沿った研究がこの学会で近年活発かというと必ずしもそうではない。今回、1つの学会のなかに2つの違う世界があることを実感した。

そうした2つの世界を、必要以上に対立的に捉えるべきではないかもしれない。ただ、どちらが evolving かは明白だろう。データ解析やシミュレーションによる経済科学の受け皿にならないなら、当然そこで淘汰圧が働くだけのことだ。学会もまた進化から無縁ではない。

Complex Economics: Individual and Collective Rationality (The Graz Schumpeter Lectures)
Alan Kirman
Routledge

今回、私は国内会議のほうで「クリエイティブな仕事とクールな消費~社会関係資本・文化資本・消費行動」と題する報告を行った。社会階層を多次元的に測定し、何が一般的な消費意識やブランド選好、イノベーションへの態度に関係しているかを統計的に分析する研究である。

階層を規定する要素として、所得や階層意識以外に、学歴、社会関係資本、文化資本、そしてクリエイティブ資本などを考えた。多くの消費意識の差異を説明しているのは、社会関係資本・文化資本(これらは1つの因子を構成した)と(広義の)クリエイティブ資本であった。

セッションには5、6人の聴講者しかいなかったが、10分近くいろいろ質問やコメントをいただいて、気分よく発表を終えることができた。粗削りな分析ではあるが、これを精緻化するよりは、湯気が立っているうちに投稿したほうがいいかもしれない。問題は時間である。
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小林至氏の『スポーツの経済学』

2016-03-04 00:39:16 | Weblog
著者の小林至氏は、東京大学からドラフトでロッテに入団した元プロ野球選手であり、またソフトバンクホークスの球団幹部として活躍されたこともあり、プロ野球ファンの間では有名である。現在は江戸川大学で教鞭をとる小林氏が、スポーツビジネスに関して概説したのがこの本だ。

小林氏は、プロ野球選手を引退した後米国にわたり、コロンビア大学でMBAを取得している。しばらく米国で働いていたこともあって、米国のプロスポーツやメディアの事情に詳しい。もちろん、本書ではオリンピックや欧州のサッカービジネスなど、広範な領域をカバーしている。

スポーツの経済学
小林至
PHP研究所

しかし、何といっても、ホークスの幹部であった彼が、日本のプロ野球の成長戦略をどう描いているかが興味深い点である。なぜ米国のメジャーリーグは、日本と比べて人口比以上に成長しているのか。テレビメディア市場の違い、自治体と球団の関係など、教えられることが多かった。

小林氏は1リーグ制論者で、ホークスに招かれたのも、そのことで巨人のオーナーであった渡辺恒雄氏の知己を得たことがきっかけになっているという。小林氏は日本のプロ野球をサッカーのような縦型のリーグ組織にして、アジアでの決勝大会を上位に置く仕組みを構想している。

そのことへの賛否はおいて、プロ野球ビジネスの現場に長く身を置き、ホークスの経営的な成功に関わった著者の発言には説得力がある。もちろん、カープファンの自分としては、別のかたちの成長戦略を模索したい。そのためのヒントになる情報も、本書で見出すことができる。

最後に私事になるが、気鋭の研究者たちと私が分担執筆した「プロ野球研究書」が数ヶ月後に刊行される予定だ。そこではファンの心理と行動、また選手の人事管理や球団の財務会計が扱われる。小林氏の著書が経営者目線だとしたら、その本はファン目線の本といえるかもしれない。

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MSI Conference@NYU

2016-02-25 21:28:18 | Weblog
2月24日から25日まで、NYUで開かれた "Data, Disruption, and the Transforming Media Landscape" と題する会議に参加した。主催は Marketing Science Institute である。学界と実務界を架橋しようとする組織なので、双方の講師が登壇する。参加者は実務家が多い。



中心議題は、変化するメディア環境において、マーケティングのため「ビッグデータ」をどう使いこなすか、である。programmatic ということばがたびたび出てくる。要は広告あるいはマーケティングの自動化・高速化である。クリエイティブまでその対象となる。

検索連動型広告はもはや主流ではない、ということで、マーケティングサイエンスの側からも、アドテクの最適化を目指す研究が始まっている。アルゴリズムが相互に競争・取引する世界は、データへのアクセスさえ可能なら、むしろ研究しやすい対象かもしれない。

もう1つの柱はモバイルである。昨年10月に開かれたビッグデータの会議でも報告されていたが、ショッピングモールでの顧客の軌跡などを使い、モバイル端末にカスタマイズされたクーポンを送る。こうした大規模フィールド実験もまた、近年のトレンドである。

アナリティクスの話の一方で、米国で急増するヒスパニック系オーディエンスに関する報告もあった。アフリカ系、アジア系を含め多文化(multicultural)が進んでいる。これと millennial 世代、mobile を合わせて Generation M と呼ぶ、という話は面白かった。

マーケティングサイエンスの課題は、結局、以前とそう変わっていないように思える。アトリビューション分析は、マーケティングミックスモデルと同じ地平に存在している。実際にその両者を比較した発表を聞いて、過去の研究蓄積が改めて生きてくることを実感した。

コンテンツの自動最適化(Dynamic Creative Optimizer)にしても、クリエイティブの効果測定という昔からあるテーマに直面する。そこはランダム化テストで、という話になりがちだが、売上への長期効果を測定したいのなら、従来の計量モデルの経験が生きてくる。

TV広告について、CFテストの蓄積とシングルソースデータを使った分析も報告された。いままでなぜ行われてこなかったが不思議なぐらいだが、オンラインやモバイルの広告が急拡大したことでマス広告を推進する側が危機感を持ち、研究に協力的になったのかもしれない。

昔と違うのは、いうまでもなくソーシャルメディアの登場である。ネット上のクチコミがアップルとサムスン、コカコーラとペプシの間でどのような関係をとり結びながら推移するかの分析は、数十年前には全く考えもつかなかった研究だろう。進化は着実に起きているのだ。

実務家の講演者からは機械学習の話も出たが、研究者の講演者が語るのは主に選択モデルや時系列解析であった。主催者が MSI で、発表者が高名なマーケティング・サイエンティストたちなので当然そうなる。おかげで、そうした手法の「健在ぶり」を確認できた。

複雑化するメディア環境では、使える道具は何でも使って適応していく必要がある。マーケティングサイエンスの道具箱には、使えるものがまだけっこうある。とはいえ、複雑でダイナミックな現象に相応しいアプローチが別にあることも確かだ。そういう思いも強くなった。

パネルディスカッションの最後に、誰かがアップルは iPod を売るのにターゲティングなどしてない、していなかったから大成功した、と発言した。その主張の正否はともかく、マーケティング技術の精緻化が進むと見失われがちな、大局観の重要性についても気づかされた。

余談)この会議では Pegeonhole Live というQ&Aのサービスが導入されていた。スマホあるいはタブレットから質問を入れると、会場のスクリーンに一覧となって映し出され、発表者はそれを見て回答する。長々と自説を述べる「質問者」に貴重な時間を奪われないため、日本の学会などにも導入するといいかもしれない。個人的には、授業で使ってみたいと思った。

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Santa Fe Institute: Short Course

2016-01-10 19:05:55 | Weblog
Santa Fe Institute (SFI) で開かれた "Short Course: Exploring Complexity in Social Systems and Economics" に参加した。社会科学や経済学における複雑系の立場からの研究動向を聴くため、70人ほどの実務家、研究者、学生が集まった(日本からは私一人)。

講師は Brian Arthur、Robert Axtell、Scott Page、Geoffree West といった複雑系研究の大御所から、いま売り出し中の若手の助教まで全部で8人。うち5人が経済学を専門としており、残り3人は社会心理学者、コンピュータ科学者、物理学者という構成である。



まる3日間の講演の内容をざっとレビューしてみよう。

Mitra Galesic: How the Interaction of Mind and Environment Shapes Our Sociality

社会心理学に複雑系の視点を導入すべく、Galesic は心理実験とエージェントベース・モデリング(ABM)を組み合わせた研究を行っている。実験で得られた知見の背後にあるメカニズムを、非常に単純なエージェントの行動の相互作用から導出するという研究戦略だ。



Aron Clauset: Short Introduction to Networks

複雑ネットワークの入門的講義だが、最新の研究の話題が随所に織り込まれている。感染やクチコミに関する研究についてもそれなりの時間が割かれ、勉強になった。講義の流れ自体、今後自分が社会ネットワークについて教える場合には、おおいに参考になるだろう。

Geoffree West: Searching for Simplicity and Unity in the Complexity of Life, Cells to Cities, Companies to Ecosystems

若手2人のあとは巨匠の登場。自然現象から社会・経済現象まで、あるゆる分野に存在するスケーリング則(2変数間のべき則)が紹介される。幾何学的原理から社会科学的意味合いまで、ユーモラスに諄々と説く。一貫した学問的探求のすばらしさを実感した。



上の写真からも窺えるが、West 先生の見た目は、ひたすら研究に打ち込む、世間離れしたややマッドな老教授、という感じ。ビジネススクールなどではあまり見かけないが、物理学と哲学とか、基礎的な学問分野では少なくないタイプである。少し憧れを感じる。

Rajiv Sethi: Agent-Based Computational Economics

ここからは経済学の講義。計算(計量ではない)経済学を概観したあと、金融市場のシミュレーションの話になる。ABM の主戦場はそこだろうなと思いつつ、私自身は関心がない。MATLAB で書かれたモデルをその場で実行、結果を見せるスタイルは面白かった。

Robert Axtell: Agents as Gateway to Complexity

エージェントが一人のモデル(Herbert Simon)からはじめて、エージェント数の拡大に沿って ABM の歴史を概観していく構成だ。なかでも、Axtell のグループが最近取り組んでいる、数百万のエージェントからなる FIRMS という経済モデルの話が刺激的であった。

その先に彼が考えるのは、Agent-based Macro Economics である。そうなると億単位のエージェントを動かす環境が必要になるのだろうか・・・一定の粒度を求めるにしろ、課題に照らしてどこまで大規模なモデルが必要なのかは、それ自体興味深い研究課題だと思う。

W. Brian Arthur: Complexity and the Economy

そして収穫逓増や経路依存性で有名な Brian Arthur が登場。サンタフェ研究所の創設の頃、初めて金融市場の ABM を Mac Plus 上に構築した頃の思い出話を織り交ぜて、自身の研究を振り返る内容だった。なお、彼の主要な研究業績は、以下の本に集められている。

Complexity and the Economy
W. Briant Arthur
Oxford University Press, USA


Deborah Strumsky
: Technology Change - An Evolutionary Process?

若き都市経済学者 Strumsky は、イノベーションの経済モデルが進化し、複雑系モデルが登場するまでの概観から始める。次いで、特許データなどを用いた緻密な実証研究を紹介する。都市が規模だけでなく多様性を伴うことでイノベーションが起きることを説得的に語る。

Scott Page: Model Thinking & Complexity - One to Many and Many to One

One to Many とは、上述のスケーリング則など、1つの単純な原理が幅広い分野に適用できること。Many to One とは、多様な意見を集めることでより正確な予測が可能になるという、集合知の話。この領域での Page の活躍ぶりは、日本語訳された以下の著書でも有名である。

「多様な意見」はなぜ正しいのか
Scott Page
日経BP社

マーケティングの立場からは、個人の社会的認知に複雑系を結びつけた Galesic の研究が、それまで全く知らなかっただけに大変面白かった。ビッグデータに ABM を結びつける方法については、Axtell のプロジェクトに圧倒されるとともに、大いに影響を受けた。

自分の研究との関連でいえば、Clauset の講義はクチコミ伝播の研究について、Page の講義は消費者の予測能力に関する実験について、参照すべき研究の流れを教えてくれた。また、Strumsky の研究が Creative Class/City の研究とつながる点にも注目したい。

今回のショートコースには、関心別に小グループに分かれて議論する時間もあった。私は Agent-Based Modeling in Social Science というグループに参加。UT Austin で公共政策分析を研究する男性、Mexico で都市交通政策を研究する女性院生と3人で議論した。

彼らはツールとして NetLogo を使っている。簡単だし、誰でもダウンロードして無料で使える点がいいという。確かに最近、NetLogo が ABM のデフォルトになってきた感がある。不特定多数に ABM を教える場合、こうしたオープンさが便利であることは否めない。

Santa Fe と Santa Fe Institute への訪問は、15年ぶりほどになる。その街並みや研究所の雰囲気は昔とほとんど変わっていない。出入りする研究者の新陳代謝はそれなりに進み、サマースクール等で学んだ人々が、世界各地で研究者として活躍しているようだ。

3日間の最後に開かれたパネル討論では、Arthur を除く全講師が参加していたが、1つの議題は、複雑系研究が今後大学にどれだけ根づくか、であった。特に経済学や社会科学においてはまだ厳しいが、いくつかの有力大学に複雑系関連の研究センターが存在している。

日本にそういうセンターがあるとは聞いたことがなく、もっぱら個別の研究室(ないし個人)で研究が進んでいるのが現状だ。ただし、計算社会科学(Computational Social Science)という旗印のもと、分野を超えて研究者どうしが交流し合う機運もある。

そこで自分にできることは限られるが、他の人がやらない課題があるなら、貢献の余地はあるだろう。今回のセミナーで得た刺激が、今後の研究に影響を与えることは間違いない。その意味で、この時期、雪の降る Santa Fe にやって来たことは大変よかったと思う。
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2016年の抱負

2016-01-03 02:51:00 | Weblog
昨年買ったピケティはまだ1ページも読んでいない。自分の研究にとって、それより最先端のジャーナル論文を読むべきかもしれない。だが、たとえばピケティを読みたいと思うのは、少年時代に抱いた、社会に対する漠然たる関心が自分に残っている証拠だろう。

社会について、あるいは人間について「大きな話」をすることがいかに難しく、少数の天才や碩学にしかできないことは承知している。読書に徹するほうが賢明である。しかし、自分の研究にも、そうしたフレーバーを加えたいという欲望を抑えることは難しい。

自分の土俵がマーケティング・消費者行動の研究であることには変わりないが、社会科学的に意味のある研究にしたいと思う。そこで足がかりにしたいのが、にわか勉強で心もとないが「文化資本」「社会関係資本」など社会学の概念を計量的研究に導入することだ。

昨年末のブログに、2015年の成果について記したが、実は大事なことを書き忘れていた。昨年の年頭に掲げた Aesthetics, Blindness, Complexity, Diffusion, Enthusiasm というキーワードである。いま挙げた研究は、そのうちの Aesthetics にあたる部分である。

身のほど知らずにも心理学的な分野にも興味がある。意思決定における意識と無意識の相克、つまり Blindness が、自分の研究テーマでいえばトレードオフ回避、そしてイデオロギーの研究と関連する。1月に選択実験を行うが、その後も実験や調査を継続したい。

人間心理を理解するという点では Enthusiasm、つまり熱狂の研究もある。今春のプロ野球研究本の出版が契機になって、研究の幅が広がり、ファンのデータだけでなく、選手のデータまで分析できるようになればと願う。そうなったら自分の「熱狂」も高まるだろう。

私は自然科学に対する知識も興味も乏しいが、その手法のマーケティングへの応用には関心がある。 そこで Complexity というキーワードが登場する。これまでの研究をさらに継続するほか、消費者行動への応用に関する書籍を、今年こそ書き上げなくてはならない。

では、本丸のマーケティングでは何をするのかというと Diffusion である。論文化急務の Twitter の伝播効果研究の次として「新製品の導入~普及の研究」という、古くて新しい研究テーマに取り組む。ありふれたテーマのようだが、実は未解決の問題の宝庫である。

たとえば、日本で短命な「新ブランド」の導入が繰り返されるのはなぜか。米国のケースと比較することで、一般性のある知見を獲得できるかもしれない。消費者に新製品の成功-失敗を予見させるという、ずっと以前に行った実験を新しい視点で見直したいとも思う。

ということで、いろいろな思いを胸に秘めつつ、今年も仕事を進めていきたい。


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2015年を振り返る

2015-12-27 21:01:21 | Weblog
今年は4月から、ニューヨーク市立大学バルーク・カレッジで在外研究を始めた。文字通り研究に専念できる、貴重な機会を得た。そして8ヶ月間、主にこれまで日本で行ってきた研究の仕上げに時間を費やした。少なくともその半分は、来年の春までに手離れすると期待している。

阿部誠先生、新保直樹さんと行ってきた Twitter の伝播効果に関する研究は、元々少数のインフルエンサーは存在するかという問題意識で始まった。これまでの研究で、インフルエンサーは存在し、戦略次第で費用を考慮しても効果的なキャンペーンを実施できることが確認できた。

今年はこの研究を Marketing Scinece ConferenceComplexity in Business Conference、そしてソーシャルメディア研究ワークショップで発表した。この分野の研究は進んでおり、これ以上論文投稿を先延ばしできない。来年の春までに第一稿を仕上げると宣言したい (^o^)。

もう1つは、研究分担者として参加した「金融サービスにおける企業・従業員・顧客の共創価値測定尺度の開発」プロジェクト。私の担当部分をICServ/Frontiers in ServiceBICT で発表した。プロジェクト自体は今秋終了し、自分に残された課題は主に論文の投稿である(汗)。

この研究では、標準的な計量モデル(ロジットモデルとマルコフチェーン)とエージェントベースモデルの併合を試みた。それはどちらのサイドからも嫌われるアプローチかもしれない。問題は、サービス・サイエンスの人々がどう評価するか。それを聴く機会が今後あるかどうか・・・。

やはり分担者として参加した「社会規範・政策選好・世論の形成メカニズムに関するパネル調査」も今年度で終了する。12月の JIMS で、共同研究者の桑島由芙さんが「ソーシャルメディア・イデオロギー・消費」と題する発表を行った。この発表は論文投稿が前提となっている。

現在、このプロジェクトの一環として選択実験を準備中だ。矛盾する政策のバンドルに有権者はどう対応するのか、秋山英三さんと取り組んでいるトレードオフ回避の研究ともつながる。その点で3月に下條信輔先生をお招きしたワークショップでの刺激を忘れることはできない。

「政治」は一見マーケティングからほど遠い世界に見えるが、物理学のオピニオン・ダイナミクスとか政治経済学のホテリング-ダウンズ・モデルとか、マーケティングにとっても非常に興味深い研究がある。その意味で、後継プロジェクトの申請が採択されることを祈りたい。

年明け早々に調査を実施する予定なのが「創造性とテイストに焦点を当てた消費者行動モデルの研究」プロジェクトである。従来から関心を持ってきたクリエイティブ・クラスに関する議論に、社会学にインスパイアされた手法を持ち込む。3月の進化経済学会@東大で発表する。

「プロ野球」研究の出版企画は、マーケティング、社会心理学、歴史学、経営組織論、会計学等の強力執筆陣から原稿が集まりつつある。順調に進めば、来年の春には出版されるはずだ。これが、今年の最も「確かな」成果だったかもしれない(まだ若干不確実なのだが・・・)。

しかしながら、来年1月に2件調査を行い、うち1つの分析結果を3月に学会発表し(予稿は1月末まで orz)、かつ Twitter 論文の第一稿を書くって・・・うーん、大丈夫だろうか・・・これら以外にここに書いていない研究もあるし、新たに立ち上げる予定の研究もある。

ともかく何とかするしかない。人生に残された研究に費やせる時間は短い。新たに始まる研究については、そのうちブログに書こう。いまは夢見る段階で、一人ニヤニヤしている。そして、最大の課題であったはずのモノグラフ執筆もある。全部自分が喜んで撒いた種なのだ。

↓Christmas Tree at the Plaza Hotel

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BICT2015@Columbia Univ.

2015-12-12 01:09:49 | Weblog
12月3~5日、NY のコロンビア大学で開かれた Bio-inspired Information & Communications Technologies (BICT) と呼ばれた会議に参加した。Bio-inspired、すなわち生物(学)に発想を得てコンピュータ・サイエンスを発展させよう、という趣旨の会議のようであった。



「会議のよう」などと書くとよくわかっていないようだが、実際、よくわかっていない。招待講演では、粘菌を使った最適化や、兵隊蟻が橋を作るメカニズムの数理モデルなどが語られていた。最初に生物の不思議なふるまいの動画が流されるが、そこまでしかついていけない。

Bio-inspired といわれて想像するのは、遺伝アルゴリズムのような進化計算手法である。だが、この学会で扱われているのは、それに限らず、より広範な生物界のメカニズムである。それらはいずれアルゴリズムその他として、実用化されるのだろう。素晴らしいことである。

自分の発表した Complex Adaptive Systems というセッションは、日本から参加したエージェントベース・モデリングの研究者が中心で、そこだけが自分にとって棲息可能なニッチとなった。そこではたとえば、災害時の避難、複数のドローンの制御といった問題が扱われていた。

私は Simulating C2C Interaction in a B2B Financial Service Business by Empirical Agent-Based Modeling と題する、7月の Frontiers in Service での発表の発展版を発表した。顧客間でサービス経験が伝播したとき、関係者の利得がどう変化し得るかを分析するものだ。

この研究は、JST-RISTEX のプロジェクトの一環として行われてきた。そのプロジェクトはすでに最終報告書を提出し、あとは対外発表を行う期間に入っている。今後はここで報告した内容を含め、論文にしてどこかに発表することになろうが、どこにするかは決まっていない。

BICT は、主催者にも参加者にも日本人研究者が多く、こじんまりとしていい感じの会議であった。ただ、あなたの専門は?と聴かれて「マーケティング」と答えると、「えっ!」と驚かれるという環境でもあった。

もっと若くて、かつ頭脳明晰・博覧強記だったら、Bio-inspired Model of Marketing を考えることができたかもしれないが・・・
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精神科医の目から見た広島カープ論

2015-12-03 01:05:51 | Weblog
和田秀樹氏といえば、精神科医としてメンタルヘルスに関する啓蒙書を多数著し、受験勉強の指南書も多く執筆されてきた有名人だ。灘高から東大理三に進み、海外留学まで経験するという絵に描いたようなエリートだ。そんな和田氏は、実は筋金入りの広島カープファンであった。

和田氏は広島、あるいはその近辺に住んだことはない。東京と大阪で幼少期を送り、それぞれの地元で応援されている巨人と阪神を嫌いになり、大洋ファンになったが、別当薫がカープの監督になったのを機にカープファンになった。それ以来40年間、カープを応援し続けている。

精神科医が語る熱狂の広島カープ論
和田秀樹
文芸社

そんな著者の熱いカープ愛が綴られたのが本書である。なぜカープを応援し続けるのか。それは、現代の日本社会から失われつつある、古き良き美徳がそこに息づいているからだという。地域社会との密着しかり、家族主義的な経営しかり、おカネ第一ではない行動原理しかり。

では、著者はカープの経営を絶賛しているのだろうか。そうではない。球団のガバナンスについて、最後に厳しい批判が書かれている。それがどこまで事実に基づいているのか、私には知る由もないが、長年のファンであるが故の不満は、著者一人のものでないことは確かである。

現在のカープ人気が続いているうちに、失われた25年を取り戻す変化が起きることを願うのみだ。
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