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社会人大学院で学ぶ技術経営

社会人大学院で技術経営を学びながら日々の気づきを書きとめてみます.

サービス・ドミナント・ロジックと経営戦略のドミナント・ロジック

2009年01月31日 | サービスサイエンス
サービスマーケティングの分野で「サービス・ドミナント・ロジック(service-dominant logic)」というフレームワークが提案されている。

サービスを「顧客との価値共創」と捉え、従来の「製品ドミナントロジック(goods-dominant logic)」との対比を行っている。「顧客との価値共創」という定義自体は、IBMのサービスサイエンスにおける「サービス」の定義と同じであり、現時点では市民権を得た定義になっている。

オリジナルの文献は、VargoとLuschの2004年の論文「Evolving to a New Dominant Logic for Marketing」であり、Webからダウンロードできる。また、書籍「The Service-Dominant Logic of Marketing: Dialog, Debate, And Directions」(ペーパーバック、2006年)としても入手できる。最新(2008年)の文献「Sevice-dominant logic: continuing the evolution」も提案時(2004年)からの進化が見えて興味深い。

ところで、マーケティング分野での「サービス・ドミナント・ロジック」における「ドミナント・ロジック」という言葉の使い方と、経営戦略分野における「ドミナント・ロジック」(Prahalad & Bettis, 1986)の使い方にギャップを感じる。

経営戦略における「ドミナント・ロジック」とは、「トップマネジメントが事業を概念化する方法や、決定的に重要な資源配分の意思決定を行う際の指針のこと」(赤門マネジメントレビュー7巻7号「なぜ多角化は難しいのか?」)であり、業界全体ではなく企業に特有な意思決定の思考回路(戦略的慣性)を表現している(と筆者は理解している)。

すなわち、ドミナント・ロジックとは、企業のあるべき姿(To Be)ではなく、現状の姿(As Is)であり、所与のドミナント・ロジックの中でどのように戦略転換を行うかが経営戦略論における論点のように思う。

すなわち、製品ドミナントロジックに支配されている製造業が、サービス・ドミナント・ロジックの企業に戦略転換するためには、あるべき姿(To Be)を示すだけでは現実性がない。「製品ドミナントロジック」から「サービス・ドミナント・ロジック」にどのように戦略転換(transition)するかが重要である。

Vargoも「製品からサービスへ」(From Goods to Service(s): A Trail of Two Logics)という議論はしているものの、製造業のサービス事業化への戦略転換の本質的な難しさに関して考察したものではない。

「ドミナントロジック」の視点からの製造業のサービス事業化への戦略転換の機会と困難の分析に関して、今後の研究に期待したい。


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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Service Dominant Logic (BetterWorldPilot)
2009-04-14 05:07:25
Service Scienceは 経済の発展、学生の将来、企業の成功の為に必要とのことで 米国、英国では社会政策作りが進んでいるようです。 使い勝手が良く、提供側、User側双方に効果の上がるServiceを設計するにはという観点で議論していたところ 某メーカーの方から SSMEを教えていただきました。 一日一回は同僚とService Dominant Logic等について新たな知識を披露し合う世の中になると Service Innovationが進むのだと思います。(情報と知識の伝播がInnovation、その後の経済発展につながる)

  SSMEに関する UC Berkleyの Syllabus, Lecture Series等のLink集 Google Knolに Upしました。Service Dominant Logicに関する PPTや著者のWebSite、英国のService Innovationに関する政府の論文等、ご参照下さい。

http://betterworldpilot.blogspot.com/
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Manatement of Innovation (BetterWorldPilot)
2009-04-14 05:26:55
Nov 2007 Diamond HBRの Innovation Value Chain Linkの論文は大変参考になりました。 多くの会社はIdeaは集めるが 全部Screeningしてしまい、 開発に着手しない、Protoが完成しても Beta Testが中途半端で世の中に提供出来ない、 Betaにて機能をUpしても 世界で売れるだけの販路が無いとのことです。

Berkeleyの Innovationクラスの内容等をGoogle KnoにUpしております、 Riskのある新規事業にはかかわりたくないと つぶしにかかる輩もいるのが大企業だそうです。


http://knol.google.com/k/eiji-aj-hagiwara/management-of-innovation-moi-leading/2cg2xof6ancr8/4#
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IBMでのInnovation Management (BetterWorldPilot)
2009-04-14 05:36:27
IBM Japan 元会長の北城さんに IBMは何故 Innovation Managementが上手なのか質問したところ、わずか4分で 4か月分の2クラスのReading Assignment, Lectureと Independent Researchのエッセンスを 説明されました。 Innovationを起こさねば 来年の売り上げは無いということが IBMや Accentureには浸透しているようで、社内の研修等が完璧にCoordinateされているようです。米国空軍のTrainingの比較できるLevel? 日本の企業がInnovationを起こせないのは教育が行われていないということでしょうか、、、

http://www.berkeleyjapan.net/gyouji/gyoujiJfile/Kitashiro07.html
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非常に参考になりました。 (1969)
2009-07-08 19:15:08
現在、私は大学の卒業論文でService Dominant Logicをテーマに研究しています。

非常に概念的で内容を捉えにくいのですが、未熟ながらもモデルを構築して、実証研究しようと考えています。

大変参考になりました。これからもブログを期待しております。
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