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社会人大学院で学ぶ技術経営

社会人大学院で技術経営を学びながら日々の気づきを書きとめてみます.

技術経営・サービスサイエンスにおける形成的なアプローチ

2005年10月24日 | 技術経営
研究・技術計画学会の第20回年次学術大会における平澤先生の特別講演では,形成的なアプローチに関する提言があり,たいへん興味深かった.ここで,「形成」とはシンセシスのことであり,分析/アナリシスと対峙する言葉である.

研究・技術計画学会で扱っている研究(特に,筆者が興味を持っている技術経営・サービスサイエンスに関する研究)においては,分析的アプローチではなく,形成的アプローチが必要である.すなわち,唯一の解(真実)は存在しないという前提に立ち,事実との論理的整合性と有用性を担保として仮説検証サイクルによりモデルを進化させていくアプローチである.学問体系としては,そのアプローチを支援する道具(概念や方法論のセット)を整備すべきだとしている.

道具には,自然科学的,工学的,社会科学的なものが混在してMultidisciplinaryであってよい.過去の記事で言及したように仮説検証のために「協働」するのである.

技術経営やサービスサイエンスも,解決すべき課題を起点として(有用性の担保),ファクトと論理的に整合するモデルを構築し,それに基づく課題解決のソリューションを仮説検証サイクルで形成(シンセシス)するというアプローチが正しいだろう.




研究・技術計画学会の20年

2005年10月24日 | MOT関係学会
10月22,23日に東京六本木の政策研究大学院大学で,研究・技術計画学会の第20回年次学術大会が開催された.国内の学会の中ではMOT(技術経営)を最も正面から扱っている学会である.筆者は今回初めて参加したが,聴講者が多く,立ち見のセッションもあった.昨今,情報系の学会の「全国大会」というと発表者+アルファしか聴講者がいないことも珍しくないのだが,盛況ぶりに正直驚いた.

23日には,会長の平澤先生の「研究・技術計画学会の20年」と題する特別講演があった.会員数が約千人の学会だが,この2年間で200人も会員が増えているとのこと.少子化で会員数の減少に悩む学会が多い中で2割増というのは驚嘆に値するが,私を含めてMOTブームで興味を持った人が多いのだろう.

平澤先生の講演は,前半は学会の20年間の活動紹介だったが,後半はMOTのような文理協働の学際研究のあるべき姿に関する考察であった.話が深遠で理解が難しい部分もあったが,20年間学会の中心人物として考えてこられた洞察は,本ブログでの筆者の問題意識とも共通な点が多く,参考になる点が多かった.具体的には,次の記事で述べる.




社会科学における先行研究を効率化するには

2005年10月10日 | 技術経営
技術経営では,社会科学と自然科学の「協働」が必要であり,長年自然科学(正確には計算機科学/ソフトウェア工学)に慣れ親しんできた身ではあるが,最近は社会科学(経営学)に接することが多い.

社会科学(経営学)では,過去の論文を調べる先行研究がたいへん重要視されているように感じる.これは,経営学の先人の知恵だろう.すなわち,過去の研究成果(定理,法則,ソフトウェア)の上に新しい研究を蓄積していく自然科学と異なり,社会科学では下手をすると言い放しで終わり,蓄積されず,それでは「科学」ではないと非難されてきた.そこで,「先行研究」が過去の研究成果の蓄積の上に新しい研究を積み重ねるための規範的な縛りとして位置づけられてきた.

しかしながら,「先行研究」は書くのも読むのも義務的で退屈であるように思われる.ソフトウェア工学で使われている設計方法論の標準化などの手法を援用して,もっと効率化することができないだろうか?これは,過去の研究成果の「知識継承」と捉えることもできる.

社会科学者だけの閉じた世界であれば,「先行研究」は司法試験と同様に無節操な新規参入を排除する道具として意味があったかもしれない.しかしながら,社会科学と自然科学の「協働」が必要な技術経営やサービス・サイエンスが注目され,より多くの実務家が社会科学の道具を使う必要が出てきた昨今,先行研究のシステマティックな知識継承が望まれていると感じている.

ソフトウェア工学屋としては,何かしてみたいと思っている.

サービスのハイプカーブとサービスサイエンス

2005年10月09日 | サービスサイエンス
製造業におけるサービスの重要性に関しては,1990年代後半にも「スマイルカーブ現象」の議論の中で叫ばれてきた.しかし,2000年にネットバブルが崩壊し,さらにトヨタやシャープのような勝ち組企業が「擦り合わせ型ものづくり」に機軸を置いていることもあり,昨今の「ものづくり回帰現象」の中でサービスの重要性に関する議論は少なくなったように思われる.しかしながら,ネットバブル崩壊後も地に足が着いた形で,製造業のサービスシフトは一歩一歩進んでいるのではないだろうか.その状況をハイプカーブで表すと添付の図のようになる.サービス・サイエンスはその着実な進化を学問分野としても認識し,地固めをしようという動きと見ることができる.