社会人大学院で学ぶ技術経営

社会人大学院で技術経営を学びながら日々の気づきを書きとめてみます.

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マルチステークホルダーの産学連携プロジェクト

2013年06月23日 | 技術経営

マルチステークホルダーの産学連携プロジェクトでは、立場の違いやバックグラウンドの違いにより、パレート最適な結果を導けない場合もある。そのような場合には、交渉学のテクニックが使える可能性がある。マルチステークホルダーに言及した交渉学の本もいろいろあるが、実践!交渉学 いかに合意形成を図るか (ちくま新書)は、ポイントが抑えられていて読みやすかった。


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すべてを捨て新しく始める

2013年04月30日 | 技術経営
禅では呼吸の大切さを教えられる.体の中の息を吐き出すことで,新しく息を吸うことができる.研究生活の中でも,あるタイミングで一度捨ててみることで,新鮮な気持ちで研究がスタートできる.まずは,捨てて身軽になってみよう.
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社会人大学院で博士論文を書くことのススメ

2011年07月31日 | 技術経営
社会人(専門職)大学院修士課程でMOTを学んだ後、博士後期課程に進む人が少なからずいる。自分自身を含め、なぜ社会人大学院で博士論文まで書きたいと思うのだろうか。

ベースには、修士課程での不完全燃焼感があるだろう。基礎的な知識やノウハウの習得が目的であれば、修士課程で満足するかもしれない。しかし、学生には豊富なマネジメント経験を持っている人も少なくない。これらの学生にとって、小手先のノウハウはそれほど重要ではなく、自分自身の経験を整理し、体系化したいという深い欲求がある。この欲求に対しては、修士論文だけでは不十分であり、遣り残した感覚があるのだろう。

もちろん、学位記を手に入れたいというニーズもあるだろう。しかし、これは結果に過ぎない。プロセスが大切である。そして、正しいプロセスを登って行けば、学位取得にかなりの確率でたどり着ける。ビジネスの世界では、様々な外的条件により努力が結果に結びつかないことも多いが、学位取得は、富士山の登山と同様であり、1つ1つの努力は裏切られることはない。

学位取得という目標は、自分の考えやアクティビティを1つの体系化された「仕事」としてまとめる強力なインセンティブになる。学位取得というデッドライン付の目標がなければ、通常業務の忙しさに流されて、このようなまとめ作業はできない。特に、膨大な先行研究調査などやる気は絶対におきないだろう。

先生や仲間に助けられながら、学位取得という山登りを行う。多少時間はかかっても、頂上にたどり着いた達成感はひとしおである。ただし、アプローチを間違えると麓で迷子になることもあるので、要注意。登る前に、自分の知力・体力と相談することも重要であろう。

社会人大学院で博士論文を書くことをぜひススメたい。
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二十世紀の豫言(報知新聞社明治34年正月版掲載)

2010年10月18日 | 技術経営
有名な報知新聞社の二十世紀の豫言(23個)。けっこう当たっているのでは、100年先はどうだろうか?科学技術としては大局的にはサチッていて、意外に変化は少ないかも。サービス科学のような社会科学的アプローチが、どのような位置づけになっているかがポイントの1つだと思う。

無線電信及電話
マルコニー氏發明の無線電信は一層進歩して只だに電信のみならず無線電話は世界諸國に聯絡して東京に在るものが倫敦紐育にある友人と自由に對話することを得べし
遠距離の寫眞
數十年の後歐洲の天に戰雲暗澹たることあらん時東京の新聞記者は編輯局にゐながら電氣力によりて其状況を早取寫眞となすことを得べく而して其寫眞は天然色を現象すべし
野獸の滅亡
亞弗利加の原野に到るも獅子虎鰐魚等の野獸を見ること能はず彼等は僅に大都會の博物館に餘命を繼ぐべし
サハラ砂漠
サハラの大砂漠は漸次沃野に化し東半球の文明は漸々支那日本及び亞弗利加に於て發達すべし
七日間世界一周
十九世紀の末年に於て尠くとも八十日間を要したりし世界一周は二十世紀末には七日を要すれば足ることなるべくまた世界文明國の人民は男女を問はず必ず一回以上世界漫遊をなすに至らむ
空中軍艦空中砲臺
チェッペリン式の空中船は大に發達して空中に軍艦漂ひ空中に修羅場を現出すべく從って空中に砲臺浮ぶの奇觀を呈するに至らん
蚊及蚤の滅亡
衛生事業進歩する結果、蚊及び蚤の類は漸次滅亡すべし
暑寒知らず
新器械發明せられ暑寒を調和する爲に適宜の空氣を送り出すことを得べし亞弗利加の進歩も此爲なるべし
植物と電氣
電氣力を以て野菜を成長することを得べく而して豌豆(注=そらまめ)は橙大となり菊牡丹薔薇は緑黒等の花を開くもあるべく北寒帶のグリーンランドに熱帶の植物生長するに至らん
人聲十里に達す
傳聲器の改良ありて十里の遠きを隔てたる男女互に婉婉たる情話をなすことを得べし
寫眞電話
電話口には對話者の肖像現出するの裝置あるべし
買物便法
寫眞電話によりて遠距離にある品物を鑑定し且つ賣買の契約を整へ其品物は地中鐵管の裝置によりて瞬時に落手することを得ん
電氣の世界
薪炭石炭共に竭き電氣之に代りて燃料となるべし
鐵道の速力
十九世紀末に發明せられし葉巻煙草形の機關車は大成せられ列車は小家屋大にてあらゆる便利を備へ乘客をして旅中にあるの感無からしむべく啻(注=ただ)に冬期室内を暖むるのみならず暑中には之に冷氣を催すの裝置あるべく而して速力は通常一分時に二哩急行ならば一時間百五十哩以上を進行し東京神戸間は二時間半を要しまた今日四日半を要する紐育桑港間は一晝夜にて通ずべしまた動力は勿論石炭を使用せざるを以て煤煙の汚水無くまた給水の爲に停車すること無かるべし
市街鐵道
馬車鐵道及び鋼索鐵道の存在せしことは老人の昔話にのみ残り電氣車及び壓窄空氣車も大改良を加へられて車輪はゴム製となり且つ文明國の大都會にては街路上を去りて空中及び地中を走る
鐵道の聯絡
航海の便利至らざる無きと共に鐵道は五大洲を貫通して自由に通行するを得べし
暴風を防ぐ
氣象上の觀測術進歩して天災來らんとすることは一ヶ月以前に豫測するを得べく天災中の最も恐るべき暴風起らんとすれば大砲を空中に放ちて變じて雨となすを得べしされば二十世紀の後半期に至りては難船海嘯等の變無かるべしまた地震の動搖は免れざるも家屋道路の建築は能く其害を免るゝに適當なるべし
人の身幹
運動術及び外科手術の効によりて人の身体は六尺以上に達す
醫術の進歩
藥劑の飲用は止み電氣針を以て苦痛無く局部に藥液を注射しまた顯微鏡とエッキス光線の發達によりて病源を摘發して之に應急の治療を施すこと自由なるべしまた内科術の領分は十中八九まで外科術に移りて後には肺結核の如きも肺臟を剔出して腐敗を防ぎバチルスを殺すことを得べし而して切開術は電氣によるを以て毫も苦痛を與ふること無し
自動車の世
馬車は廢せられ之に代ふるに自動車は廉價に購うことを得べくまた軍用にも自轉車及び自動車を以て馬に代ふることとなるべし從って馬なるものは僅かに好奇者によりて飼養せらるゝに至るべし
人と獸との會話自在
獸語の研究進歩して小學校に獸語科あり人と犬猫猿とは自由に對話することを得るに至り從って下女下男の地位は多く犬によりて占められ犬が人の使に歩く世となるべし
幼稚園の廢止
人智は遺傳によりて大に發達し且つ家庭に無教育の人無きを以て幼稚園の用無く男女共に大學を卒業せざれば一人前と見做されざるにいたらむ
電氣の輸送
當本(注=にほん)は琵琶湖の水を用ひ米國はナイヤガラの瀑布によりて水力電氣を起して各々其全國内に輸送することとなる
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研究開発の効率・生産性

2009年05月05日 | 技術経営
金子秀 著「研究開発戦略と組織能力 (HAKUTO Management)」の6章に下記の記述がある(オリジナルは原健次氏の文献らしいが1994年の文献なので入手できず)。

研究開発の生産性=
   R&D戦略策定力(企業戦略、良いテーマ)
 × R&D目標設定力(マーケットニーズ、目標の絞り込み)
 × R&D目標達成力(迅速なR&Dの実施)
 × R&D成果活用・事業化力(事業化力)

前半の「戦略策定力」と「目標設定力」の重要性は広く認知されている。筋が悪いテーマは苦労ばかり多く成功確率が悪い。後半の「標達成力」と「事業化力」はプロジェクトマネジメント力と言える。

前半に関しては「戦略論」の位置付けで多くの研究・文献・講座があるが、後半の研究開発のプロジェクトマネジメント力に関しては、属人的であり「戦略論」ほど研究・文献・講座が整備されていないのではないだろうか。研究開発版のPMBOK(Project Management Body of Knowledge)があっても良いように思う。

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暗黙知と技術経営(ポランニーとミンツバーグ)

2008年01月04日 | 技術経営
ポランニーの「暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)」とミンツバーグの「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方」から、暗黙知と技術経営(MOT)について考察する。

「暗黙知の次元」では、「暗黙知」を科学の進化を哲学的に解釈するための道具として位置づけている。すなわち、形式知(の演繹)だけからは新しい知識(創発)は生まれない。創発には暗黙知が大きな役割を果たしており、科学の進歩には暗黙知が不可欠である。さらに、暗黙知はすべての明示的な認識に統合的な意味を与えるものであり、人間の存在価値にもリンクしたもの(神の手)でさえある。これを「ゲシュタルト(統一的な全体)」と呼ぶとすれば、「ゲシュタルトは認識を求める過程で、能動的な経験を形成しようとする結果として生起するものである。この形成もしくは統合こそ、私が偉大にして不可欠な暗黙の力とみなすものに他ならない(21ページ)」。ここで、「形成もしくは統合」は、「形式知によるアナリシス」に対峙する「暗黙知によるシンセシス」と呼ぶこともできるだろう。

一方、「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方」(あるいは、「H. ミンツバーグ経営論」)では、従来型MBAが得意とする「形式知によるアナリシス」は実際のマネジメントのごく一部でしかなく、理論(=形式知)に照らして経験をじっくり振り返える「省察」と、省察に基づいて暗黙的に得られた知見を日々のマネジメントで形成的もしくは統合的に実践することの重要性を述べている。

ミンツバーグは、一般的な「マネジメント」について論じているのだが、技術経営(MOT)は、それ以外のマネジメントと比べて、「アナリシス」より「シンセシス」の比重が高い。実際、技術経営の最も重要なテーマであるイノベーションはシンセシス以外の何者でもない。

上記の議論を誤解を覚悟の上でまとめると次のようになる:

●アナリシス(分析)、形式知重視、MBA的アプローチ、左脳マネジメント、ファイナンス/M&A経営(悪い事業を切り捨てる)

●シンセシス(形成/統合)、暗黙知重視、MOT的アプローチ、右脳マネジメント、イノベーション経営(新しい事業を創造する)

筆者は、技術経営において「暗黙知」は本質的な役割を持っていると考える。このとき、同様に暗黙知および知識創造を重視している「知識経営」と「技術経営」は、もっと近い存在であるべきであろう。別の言い方をすれば、「知識経営」的な「技術経営」のより一層の発展が望まれる。

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MOTの3つのアプローチ:分析的,統合的,解釈的

2007年03月22日 | 技術経営
MOTのコンテキストで,アナリシス(分析)とシンセシス(統合)の対比はいろいろ論じられてきた.例えば,MBAはアナリシスに主眼に置いているのに対して,MOTはシンセシスを重視しているという言い方もされてきた.ここでは,「分析的」と「統合的」とは別に提言されている3つ目のアプローチ「解釈的」について考察したい.

MITのLester教授は,著書「Innovation--The Missing Dimension」において,イノベーションのコンテキストで,アナリシス(分析)とインタープリテーション(解釈)という対比を行っている.ここで,分析的プロセス(analytical process)が,問題構造を明確にし,要素に分解し,個々の分析結果を還元して,問題を解決することであるのに対し,解釈的プロセス(interpretive process)は,インタラクティブなコミュニケーションを通じてお互いに価値を発見することであるとしている.

これは,IBMのサービスの定義である「顧客と企業が一緒に価値を創造するプロセス」と同じ意味であると思われる.Lester教授の主張は,イノベーションのためには分析的プロセスに加えて解釈的プロセスが重要であるが,解釈的プロセスに関しては十分学問的な蓄積がないので,ぜひ重要性を認識しようということであり,サービスサイエンスの提唱とも重なるとことが大きい.

ここで,統合的プロセスと解釈的プロセスは本質的に何が異なるのかという点は必ずしも明確ではない.実体は同じという見方もあるかもしれない.確かに,統合的を分析的との対比で持ちいる場合は解釈的の意味も含んでいたと思われる.しかし,建築家や芸術家のように1人の頭の中で作品をシンセシス(統合,形成)することと,関係者(顧客と企業)がお互いに気づきあいながら価値を生み出すインタープリテーション(解釈)とは分けて考えた方が良い場合もあるだろう.特に,サービスイノベーションの考察においては解釈的なプロセスが重要であるのは定義から明らかであろう.
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経営戦略とMOT(三品和弘著「経営戦略を問いなおす」)

2007年03月17日 | 技術経営
三品和弘著「経営戦略を問いなおす」では,「経営戦略がアナリシスの発想と相容れないのは,その真髄がシンセシス(統合)にあるからです(61ページ)」と述べている.

ここでアナリシスとはSWOT分析やPPMマトリックスを使った分析を示している.一般的には,経営コンサルタントがこれらの道具を使って行っている(MBA的な)アナリシスこそが経営戦略の本質であるというイメージがあるが,本書では経営戦略は(シンセシスをできる1人の)人に宿ると言い切っている.

筆者は,MBAのアプローチを「現在あるものを分析(アナリシス)して悪いところを切り捨て価値のある部分だけを残す」,MOTのアプローチを「ゼロから価値を生み出すものを作り出す(シンセシス,イノベーションもその1つ)」と捉えているが,三品先生が定義するように「戦略とは,新たな市場取引を創造し,それによって人々の幸福を増進させるもの(18ページ)」とすれば,経営戦略を問い直すとそこにMOTのあるべき姿も見えてくるように思う.

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技術者倫理における確率の扱い

2006年10月15日 | 技術経営
実践のための技術倫理―責任あるコーポレート・ガバナンスのために」は,技術者倫理を「萎縮の技術倫理」ではなく,「元気の出る技術倫理」として捉えたすばらしい本である.

私の理解では,技術者倫理とは,下記の相反する価値の間で発生する正解のない問題(二律背反,利益相反,矛盾,ジレンマ)に対して,適切なバランスで対処することである.
・企業の経済的価値
・企業の非経済的価値(会社の存在価値,何のための会社か?)
・プロフェッションの価値観(専門家としての責任と誇り)
・個人の価値観
・社会の価値観

前述の本のケーススタディにもある「J&Jのタイレノール回収」は「美談」ではあるが,回収に伴う経済的損失が企業の許容範囲だから可能であったわけであり,もし回収により倒産するリスクが高い場合にはどのような判断になっただろうか?

世の中100%問題ないということはありえない.安全サイドで行動しようとすれば,何もしないのが最も良いことになり,経済活動は停止する.要は相反する価値間の適切なバランスが重要であり,リスク管理的にはVaR(バリュー・アット・リスク)のような確率に基づく議論が必要である.

しかし,倫理や価値観の世界に,確率の話を持ち込むのは難しい.例えば,自動車という商品は毎年数千人の死者が出ているにもかかわらず,社会的には容認されている.一方で,S社製のパソコン用リチウムイオン電池の不具合は,確率的には極めて低い(数百万分の1)にもかかわらず,すべて回収する騒ぎになっている(費用は数百億円).合理性を考えたら,回収する代わりに「万が一電池が原因で火事等になった場合は1億円プレゼントします,残りの数百億円はアフリカの難民の救済に使います」という提案もありうるだろう.人命は地球より思いという価値観もわかるが,その場合上記の自動車はどのように説明するのだろうか.

技術者倫理もどこかで確率的考え方を導入しないとリスクばかり大きくなって,経済活動にも支障が出ると危惧される.昨今の企業の不祥事を面白おかしくたたくマスコミの風潮にも問題がある.

一方,不確定要素が多く確率問題にも持ち込めないというケースも多いのも現実である.ロナルド・レーガンがスペースシャトルチャレンジャー号の事故の際に言った「未来は臆病者にではなく、勇敢なものに属する」という考え方に対するコンセンサスも重要であろう. 
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「ウィニー」による情報流出事件と2014年のグーグルゾン

2006年03月12日 | 技術経営
昨今,「ウィニー」による企業や官公庁の情報流出事件が大きな社会的問題になっている.「ウィニー」による問題は昔からあったわけだが,今回は私物パソコンで業務を行うことを禁止するという措置が広がっている.

問題はパソコンのハードディスクに重要な情報が格納されている点であり,根本的な解決は「ハードディスクのないパソコン(thin client)」であろう.ハードディスクの情報は,セキュリティ管理が厳重になされたサーバーに集中管理され,ブロードバンドネットワークを通じて都度アクセスする.具体例には,日立のセキュアクライアントソリューションやHPのディスクレスPCなどがある.

しかし,すべての企業がモバイルPCの情報に関して自社のサーバーで集中管理するのは現実には困難である.また,個人の情報もバックアップが面倒な自分のPCではなく,どこかで集中管理して欲しいというニーズが高まると思われる.

では,あらゆる企業や個人のPCの情報を集中管理するようなサービスを誰が提供するのであろうか?それは,「グーグルゾン」かもしれない.

「グーグルゾン」とは,米国メディアの将来を予測する短編映像「EPIC2014」に登場する架空の企業であるが,Web上でも様々な解説があるので興味のある方は検索エンジンでチェックしていただきたい.

「グーグルゾン物語」では,グーグルとアマゾンが合併したグーグルゾンが既存メディアを駆逐するという話だが,ブログの延長上で自分のすべての情報を信頼できるセンターで確実に保存して欲しいという今後ますます強まるニーズに,グーグルゾンが答えないことはないだろう.

さらに,グーグルゾンのみがいったんWeb上に流出した情報を抹殺することを可能とする.つまり,グーグルゾン検索エンジンでヒットしないようにコントロールできるのだ.
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デジタルワークモデルとフロネシス

2006年02月26日 | 技術経営
「デジタルワークモデル」において,MITトマス・マローン教授の分散型マネジメントを実行するとき,形式知化できない暗黙的なビジョンや文脈/場や経験的知識をいかに共有するかが大きな課題である.

世界情報通信サミット2006では,「暗黙的なものでも高精細なテレビ会議で伝わるでしょう」あるいは「暗黙知は情報通信技術(ICT)の範疇でない」という印象で,真正面から取り組もうという姿勢は見えなかった.

筆者は,デジタルワークモデルの「設計」という意味では,ICTシステム系の設計と同じ比重で仕組み系の設計をしっかりすべきだと考える.特に,小手先や表層的な暗黙知ではなく,「高質な暗黙知=フロネシス」を共有する仕組みが重要である.

トマス・マローン教授の視点では,「フロネシス」は「フューチャーオブワーク」の最終章「価値観を中心に据えたビジネス(Putting Human Values at the Center of Business)」に書かれている価値観とも符合する.

例えば,明治維新の志士はわずか1年間の松下村塾で「フロネシス」を共有し,その後の行動基準になった.想像だが,戦前の旧制高等学校も「フロネシス」を共有する場だったのかもしれない.

野中・遠山論文「フロネシスとしての戦略」では,企業経営を読み解く上でのフロネシスの重要性を説いているが,フロネシスの共有化の方法論/設計論に関しては言及していない.

「デジタルワークモデルにおけるフロネシス共有の設計論」は大きく困難なリサーチクエスチョンである.
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ビジネスエスノグラフィーとフィールドマイニング

2006年02月05日 | 技術経営
shiba blogで,サービスサイエンスと関係して議論が盛り上がってる「ビジネス・エスノグラフィー」は,「(ビジネス)データマイニング」との対比で興味深い.

データマイニングは,「BI(ビジネスインテリジェンス)」のツールとして注目されているが,仮説もないままデータをいくら機械的にホジクリ返しても,イマイチの結果しか得られないことが多い.有名なセブンイレブンの場合は,オペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC)が,日々の業務体験の中から自らの経験と直観で仮説を作り,それをデータで検証することで成功している.

一方,物理や化学のように仮説がデータで検証されることによって永遠の真理になるということでもない.仮説は,日々変わってもかまわない.ここでは,「役立つものが真実である」というプラグマティズムの立場を採っている.

ビジネス・エスノグラフィーに興味を覚えるのは,対象を「データ」に置き換えた段階で何か重要なものが失われているからだ.客観的なデータにより新しい気づきを得ることも多いが,データにならない(時には暗黙的な)知識をどのように伝えるかに関して,社会学のエスノグラフィーが有効な手法となるのではないだろうか?

大阪大学の松村研究室では「フィールドマイニング (FIELDMINING)」を提唱している.これは,フィールド(現場)で起こっていることを記憶/記録し,計算機と人,人と人との相互作用によって理解し,フィールドのデザインに生かすというアプローチで,手法として「デジタルエスノグラフィー」 という言葉も出てくる.

我々も,現場からの知識(形式知/暗黙知)の形成&検証において,データ/テキストマイニングだけでなくエスノグラフィーの手法も活用することで,より深いBI(ビジネスインテリジェンス)に繋げていきたいと思っている.



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計算機科学から社会科学への批判

2006年01月04日 | 技術経営
先日,ある大学のシンポジウムを聴講した.

ある社会科学者の講演は社会科学の勉強を始めている私にとっては興味深いものであったが,計算機科学者A氏にとっての印象はたいへんネガティブなものであった.計算機科学者でもある私はA氏の印象も理解できた.

計算機科学から社会科学への批判(要望?)を要約すると以下の2点だろう.
(1)定義をキッチリして論理的に議論できるようにして欲しい.
   (できれば,数理論理や数式を使って欲しい)
(2)評論家的ではなく目の前の問題解決に使える形にして欲しい.
   (できれば,計算機で処理可能な形にして欲しい)

しかしながら,計算機科学者の要望に答えてマネジメントを数理モデルで記述することが正解なのだろうか?マネジメントの数理モデル化に関しては過去に様々な試みがあったが,その有効性は限定的であり,ともすれば本質的な「力」が失われてしまうケースが多いように思える.

我々が直面しているマネジメントの諸問題は,数理モデルだけでも解決できない.ゆえに,あえて社会科学の勉強をしているわけである.

では,具体的に社会科学の「力」の源泉は何であるか?例えば,統計的には1つのサンプルでしかない「ケース」がなぜ「力」を持つのか?それは,情報を自分なりに理解して自分自身の「力」に変える「内面化」にポイントがあるような気がする.

問題解決を100%計算機でできれば知識の内面化の必要はないが,多くの場合に問題解決を行うのは人間である.社会科学から生み出される知識とその内面化について,踏み込んで考えてみたい.それが,計算機科学から社会科学への批判に対する計算機科学者への答えになるような気がする.
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Democratizing Innovationの翻訳本が出版

2005年12月11日 | 技術経営
本ブログで前に紹介したDemocratizing Innovationの翻訳本である「民主化するイノベーションの時代―メーカー主導からの脱皮」が出版された.サービスイノベーションの視点から興味深い本である.

下記に日本語版の目次を紹介する.

第1章 本書の出発点と概要

第2章 リード・ユーザーによる製品開発
 多くのユーザーはイノベーションを起こしている
 リード・ユーザー理論
 リード・ユーザーによるイノベーションの証拠

第3章 多くのユーザーがカスタム製品を望む理由
 ユーザー・ニーズの多様性

第4章 自分で作るか購入するか
 イノベーションに対するユーザーとメーカーのとらえ方の違い
 ソリューションに関する選り好み
 ユーザーの期待
 法や規制に関する差異
 最終的な落としどころ
 ケーススタディ
 ユーザーによる「自分で作るか購入するか」の意思決定のモデル化
 イノベーション・プロセスから得られるもの

第5章 ユーザーによる低コスト・イノベーションのニッチ市場
 問題解決プロセス
 粘着性の高い情報
 情報の非対称性はユーザー・イノベーションとメーカー・イノベーションの関係にどのような影響を与えるか
 低コストのイノベーション・ニッチ

第6章 ユーザーは、なぜイノベーションを「無料公開」するのか
 イノベーションの「無料公開」
 無料公開の実践的事例
 無料公開と再利用
 理論への意味合い

第7章 イノベーション・コミュニティ
 幅広く分散化するユーザー・イノベーション
 イノベーション・コミュニティ
 イノベーション・コミュニティによる有形製品の開発
 ユーザー同士の支援

第8章 ユーザー・イノベーションへの適合政策
 ユーザー・イノベーションの社会福祉への影響
 公共政策の選択

第9章 民主化するイノベーション
 民主化への道
 ユーザー中心のイノベーションへの否応なき適合
 ユーザー主体のイノベーションでメーカーが果たす役割

第10章 適用例:リード・ユーザー・イノベーションを追え!
 リード・ユーザーの探索
 3Mでの実験

第11章 適用例:ユーザー・イノベーションと
         カスタム設計のためのツールキット
 ツールキットがもたらす恩恵
 開発作業の再分割
 ツールキットの機能性

第12章 ユーザー・イノベーションと他の現象や分野との関連性
 情報コミュニティ
 知識の経済性
 国家の競争優位性
 技術コミュニティの社会学
 製品開発のマネジメント
 最後に

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インターネットの普及とマネジメントスキルの高速学習

2005年12月04日 | 技術経営
梅田望夫氏のブログに「インターネットの普及がもたらした学習の高速道路と大渋滞」という記事がある.最近の将棋界では,ネット上で過去の膨大な棋譜を勉強することで,高速に強くなれるという内容だ.

登山でも同様だ.最近は,登りたい山をネットで検索すると数多くの写真入りの山行記を読むことができる.各々の山行記は,季節も天候も体力も異なるので,記述内容には大きなバラツキがあるが,かえって登山ルートを立体的に把握できる.ルートのリスクを事前にイメージできれば,実際の登山の安全性はずいぶん高めることができるだろう.

マネジメントにおいても,MBAのように様々なケースを用いた仮想体験により,マネジメントの質を高めることが可能である.さらに,ネット上で多種多様なマネジメント知識/ケースが公開され,ある程度標準的にアクセス/比較できるよう(マネジメント知識のオープンソース化)になると,ネットで強くなった棋士と同じように,ネットで強くなったマネージャが出てくるかもしれない.


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