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社会人大学院で学ぶ技術経営

社会人大学院で技術経営を学びながら日々の気づきを書きとめてみます.

小売大企業がイノベーションを起こす時代

2010年05月04日 | サービスサイエンス
近所の会員制倉庫型大型店舗「コストコ」に行ってきた。具体的なコストコの店舗に関しては、

http://www.daytradenet.com/Tokyo/2006/costco/costco.htm

が詳しい。

昔のように明らかにほしい物(家電製品、自動車、家)があった時代は、製造業がそれを提供でき、急成長してきた。金融危機後は、皆気分的に不況になっている(多くの人はお金がないわけではない)。「コストコ」では、圧倒的なお得感を提供し、客単価はデパート並みだと想像される。とにかくわかり易い。

最近、コンシューマ製品に関しては、顧客と接している小売大企業がイノベーションの鍵を握っているように思う。


日本の製造業はモノビス化の価値を真剣に検討すべき

2010年03月13日 | サービスサイエンス
東京理科大学知的財産専門職大学院“MIP知財コラム”に西村雅子先生の「No.15 「モノビス」考」が掲載されている。ここで、モノビス=モノ(製品)+サービス である。

西村先生は、ブランドショップの商品と平行輸入した商品の比較を例に、モノは同じだが、モノビスが異なるとしている。

昨今、日本のものづくりでも、東南アジアのOEM(Original Equipment Manufacturer)やODM(Original Design Manufacturer)の活用が急速に進んでいる。モノだけで見れば、東南アジアの製品と変わらなくなってきている。PCの日本市場における台湾メーカーの躍進はその典型だろう。

日本の製造業はモノビス化の価値を真剣に検討する必要がある。


サブプライムローン問題における金融工学の位置付け

2009年10月12日 | サービスサイエンス
鳩山首相も会員である日本オペレーションズ・リサーチ(OR)学会の学会誌の10月号では、サブプライムローン問題の特集が組まれている。ここでは、金融危機の元凶であるサブプライムローン問題とOR学会の研究テーマの1つである金融工学の関係が述べられており、勉強になる。

まず、サブプライムローン問題には以下の4つの要因があるとしている。
(1)米国の過剰(住宅)投資と新興国の過剰貯蓄のグローバルインバランス
(2)米国中央銀行の金融緩和の長期化(投資の引き締めをしなかった)
(3)複雑な証券化に対する金融機関や格付機関の不十分なリスク管理とモラルハザード
(4)金融仲介システムへの規制・監督の不備

(1)(2)は、新興国の余ったお金が米国に流入し、住宅の将来の値上がりを根拠に、「収入なし・職なし・資産なし」の人にまで、住宅ローンを貸してしまう非常識的な環境を作り出してしまったという話。

(3)(4)は、金融工学を駆使することで、複雑な金融リスクの証券化が可能になった。証券化が適切に行われていれば問題はないが、複雑すぎて最終的にリスクを負う人に、証券化の様々な前提条件が見えなくなり(見えなくした?)、手数料を稼ぎたい仲介者のモラルハザードの余地を作ると共に、破綻が顕在化した時に、見えないことによる不安が世界中を襲ってしまい、パニック的な行動を誘発したという話。

金融工学は単なる道具であり、うまく使うか否かは使う人次第という言い方もある。しかし、金融工学の複雑さが、「収入なし・職なし・資産なし」の人にお金を貸すという人間の直観的にはおかしなことを生み出してしまうとすれば問題である。自動車においては、運転は人間の直観的な操作感覚を大事にしつつ、それを影でサポートする技術(パワステ、ABS)を開発している。金融工学においても、リスクを負う人間の直観的な判断力を大事にする技術開発を行うべきではないだろうか。

関連文献:
サブプライム問題の正しい考え方 (中公新書)

イノベーションダイナミクスモデルとサービスイノベーション(その2)

2009年03月15日 | サービスサイエンス
2007年の4月の本ブログの記事(イノベーションダイナミクスモデルとサービスイノベーション)で、「プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションの2つの波で構成されるオリジナルのイノベーション・ダイナミクスモデルは,サービスイノベーションを加えた3つの波で表現できるのではないだろうか(新イノベーション・ダイナミクスモデル)」と書いたが、既にMITのクスマノ教授は、2006年の4月には、Harvard Business Schoolのワーキングペーパー「Product, Process, and Service: A New Industry Lifecycle Model」(M Cusumano, S Kahl, FF Suarez)の中で、同じ主旨の主張(図2)をしていた。

サービス・ドミナント・ロジックと経営戦略のドミナント・ロジック

2009年01月31日 | サービスサイエンス
サービスマーケティングの分野で「サービス・ドミナント・ロジック(service-dominant logic)」というフレームワークが提案されている。

サービスを「顧客との価値共創」と捉え、従来の「製品ドミナントロジック(goods-dominant logic)」との対比を行っている。「顧客との価値共創」という定義自体は、IBMのサービスサイエンスにおける「サービス」の定義と同じであり、現時点では市民権を得た定義になっている。

オリジナルの文献は、VargoとLuschの2004年の論文「Evolving to a New Dominant Logic for Marketing」であり、Webからダウンロードできる。また、書籍「The Service-Dominant Logic of Marketing: Dialog, Debate, And Directions」(ペーパーバック、2006年)としても入手できる。最新(2008年)の文献「Sevice-dominant logic: continuing the evolution」も提案時(2004年)からの進化が見えて興味深い。

ところで、マーケティング分野での「サービス・ドミナント・ロジック」における「ドミナント・ロジック」という言葉の使い方と、経営戦略分野における「ドミナント・ロジック」(Prahalad & Bettis, 1986)の使い方にギャップを感じる。

経営戦略における「ドミナント・ロジック」とは、「トップマネジメントが事業を概念化する方法や、決定的に重要な資源配分の意思決定を行う際の指針のこと」(赤門マネジメントレビュー7巻7号「なぜ多角化は難しいのか?」)であり、業界全体ではなく企業に特有な意思決定の思考回路(戦略的慣性)を表現している(と筆者は理解している)。

すなわち、ドミナント・ロジックとは、企業のあるべき姿(To Be)ではなく、現状の姿(As Is)であり、所与のドミナント・ロジックの中でどのように戦略転換を行うかが経営戦略論における論点のように思う。

すなわち、製品ドミナントロジックに支配されている製造業が、サービス・ドミナント・ロジックの企業に戦略転換するためには、あるべき姿(To Be)を示すだけでは現実性がない。「製品ドミナントロジック」から「サービス・ドミナント・ロジック」にどのように戦略転換(transition)するかが重要である。

Vargoも「製品からサービスへ」(From Goods to Service(s): A Trail of Two Logics)という議論はしているものの、製造業のサービス事業化への戦略転換の本質的な難しさに関して考察したものではない。

「ドミナントロジック」の視点からの製造業のサービス事業化への戦略転換の機会と困難の分析に関して、今後の研究に期待したい。

米国NSFのサービスサイエンスへのファンディング

2009年01月31日 | サービスサイエンス

米国NSF(National Science Foundation)のサービスサイエンスへのファンディングに「Service Enterprise Systems (SES)」がある。SESは、NSF工学局(Engineering (ENG) Active Funding Opportunities)の下の「Civil, Mechanical and Manufacturing Innovation (CMMI)」部の下の「Systems Engineering and Design (SED)」課にあるプログラムである。プログラムディレクターは、Cerry Klein(ミズリ大教授)でORの専門家である。

SESの概要説明:
The SES program supports research on strategic decision making, design, planning and operation of commercial, nonprofit, and institutional service enterprises with the goal of improving their overall effectiveness and cost reduction. The program has a particular focus on healthcare and other similar public service institutions, and emphasizes research topics leading to more effective systems modeling and analysis as a means to improved planning, resource allocation, and policy development.

上記の説明では明示的にサービスサイエンスというキーワードは出てこないが、あえてサイエンスという言葉を避けているのかもしれない。

ところで、Systems Engineering and Design (SED)には、SESの他にも以下のプログラムが走っている。

  • Control Systems  (CS) 
  • Dynamical Systems  (DS) 
  • Engineering Design and Innovation  (EDI) 
  • Operations Research  (OR) 
  • Sensors and Sensing Systems  (SSS) 
  • Service Enterprise Systems  (SES) 

米国は、日本と比べてシステム工学に対して価値を認めている証のように思える。


サービスサイエンスの効能

2009年01月18日 | サービスサイエンス
科学技術と経済の会の機関誌「技術と経済」2008年12月号に「フラット化する世界とサービス・イノベーション」(丸山力 著)という記事が掲載されている。

ここでは、「サービスサイエンス」を知識社会/サービス社会(=フラット化する世界)に向けて組織を変革する道具として位置づけている。具体的には、サービスサイエンスの効能として、以下の3点を挙げている。
(1)成功の理屈を抽出し展開できる。
(2)社会・組織を可視化し変革できる。
(3)サービス行動を分解・分析し、最適解を定式化し展開できる。

「サービスサイエンス」を還元論的にサービスの課題を解決する科学(サイエンス)と捉えるのではなく、組織や社会を変革するためのトリガー(宗教?)として捉える点が興味深い。還元論的なサイエンスを信奉する人にとっては、「サービスサイエンス」は科学ではないという話になるが、結果として知識社会/サービス社会に向けた変革に貢献するとすれば歴史的意義はあるということだろう。

経済産業省サービス工学分野の技術ロードマップ

2009年01月18日 | サービスサイエンス
経済産業省/NEDOは、各分野の技術ロードマップを毎年作成・更新し、Webで公開している。2008年版には、サービス工学分野の技術ロードマップが掲載された。

技術戦略マップ2008(METI/経済産業省)

技術ロードマップと言っても、具体的な時間は記載されておらず、「導入」「普及」「発展」の3つのフェーズに対して、観測技術、分析技術、設計技術、適用技術の方向性が示されている。

「観測-分析-設計-適用サイクル」は「モノビス知識処理モデル」と比較すると興味深い。

Hillary Clinton の Services Science Initiative 

2008年01月19日 | サービスサイエンス
米国大統領候補ヒラリー・クリントン氏は、公約の中でServices Science Initiativeの設立を謳っている。一方、オバマ氏のサービスサイエンスに関する言及は見当たらない。

Create the Services Science Initiative (ヒラリー・クリントン氏のHPより)

http://static.hillaryclinton.com/news/release/view/?id=3656

The services sector now accounts for approximately 80% of the U.S. economy. Nevertheless, innovation is rarely associated with the generation and delivery of services. Companies are increasingly carrying out service R&D, but there is no discipline that promotes innovation and productivity in the services sector in the same way that electrical engineering, for example, has led to technological advances in the development of the computer chip. Accordingly, Hillary will create a Services Science Initiative. Modeled on the National Nanotechnology Initiative, the federal government will help support R&D in services; support and encourage cross-disciplinary research that draws on fields such as computer science, management, operations, and organizational behavior; and also facilitate the dissemination of knowledge. The Services Science Initiative will help improve the competitiveness of American business, and in the process, create jobs.

イノベーションダイナミクスモデルとサービスイノベーション

2007年04月22日 | サービスサイエンス
イノベーション・ダイナミクスモデル(アッターバック著,「イノベーション・ダイナミクス―事例から学ぶ技術戦略」108ページ)では,産業(例えば,自動車,半導体メモリー)の発展過程を「流動期(様々なデザインが登場する過程)」「移行期(ドミナントデザインが決まる過程)」「固定期(ドミナントデザインに基づき効率化が進む過程)」の3ステップで説明している.流動期には,多くのプロダクトイノベーションが発生し,固定期には多くのプロセスイノベーションが発生する.また,流動期はベンチャー的企業が得意であり,固定期はある程度規模の大きい企業が得意である,としている.

さて,固定期を向かえ成熟した産業の「脱成熟化」が大企業の大きな課題である.このとき,「脱成熟化」の有望なアプローチとして製品のサービス化を位置づけるのは自然だろう.実際,自動車産業もテレマティクスなどのサービスにシフトしつつある.

アッターバックらも,脱成熟化の鍵は「政府の規制の変化」と「顧客と企業の相互学習」であると指摘しており,後者はサービスサイエンスにおけるサービスの定義「企業と顧客が一緒に価値を創造するプロセス」とも符合する.

さて,このような視点で考えると,プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションの2つの波で構成されるオリジナルのイノベーション・ダイナミクスモデルは,サービスイノベーションを加えた3つの波で表現できるのではないだろうか(新イノベーション・ダイナミクスモデル).




事業活動の表舞台(サービス)と裏舞台(モノづくり)

2007年03月25日 | サービスサイエンス
2007年3月13日発行のサービスサイエンスに関する新刊書「サービス・ストラテジー」(原題:Service is Front Stage)では,すべての事業活動は表舞台(サービス)と裏舞台(モノづくり)から構成されるとしている.本書の38ページでも引用されているように,「本来,サービス業などというものは存在せず,どの業界もサービスとかかわりがある.他の業界と比べて比重が大きいか小さいかだけが違いなのである(セオドア・レビット,1972)」,といった指摘は昔からあるものの「表舞台」と「裏舞台」という比喩はわかりやすい.

さて,製造業は従来は裏舞台の比重が高かったが,最近は表舞台の重要性が増しているといえる.製造業の研究開発も従来は裏舞台に関するものが多かったが,今後は表舞台の研究開発が重要となると思われる.ただ,表舞台の研究開発は従来と同様の工学的な手法やスタイルになるのかはわからない.

サービスサイエンスの研究者は,研究の内容だけではなく研究のスタイルも開拓していく必要があると思われる.

サービスイノベーションのための先行研究レビュー

2007年03月04日 | サービスサイエンス
ロンドンのCity University Business SchoolのAxel JohneとChris Storeyによるサーベイ論文「New service development: a review of the literature and annotated bibliography」は67ページの労作であるが,1996年以前の新サービス開発(NSD:New Service Development,NPD:New Product Developmentに対応する言葉)に関する先行研究が丁寧にまとめられており参考になる.末尾には21ページを費やして58の文献に関する要約が掲載されている.

個人的には,NSDの開発プロセスモデル(202ページ)に関する記述が参考になった.NPDの開発プロセスのモデルの研究は多いが,NSDに関してはあまり研究がされていないのは驚きだ,としながら,例外的な仕事としてScheuingとJohnsonの15ステップモデルを紹介している.

NSDのための15ステップモデルが,従来のNPDと異なる点は,サービス自体の設計とサービスの提供手法(オペレーション)の設計を区別する点である.サービスコンセプトは面白くても,サービスオペレーションが拙くて失敗するというのはよくあるケースである.

本サーベイ論文の後には,Cooperによるサービス開発におけるステージゲート法に関する本「Product Development for the Service Sector: Lessons from Market Leaders」が出版されたが,具体的な事例に基づく更なる研究が必要であろう(特に,製造業のサービス事業化に関して).

ただ,昨今サービスサイエンスがブームになっている中でも,闇雲にブームに乗るのではなく,本サーベイ論文に見られるような膨大な先行研究があることはしっかり認識しておくべきであろう.

情報の粘着性とサービスイノベーション

2007年02月03日 | サービスサイエンス
富士通総研主催の第1回サービス・イノベーション・ワークショップでは,情報の粘着性とサービスイノベーションの関係に注目している.「情報の粘着性とイノベーションの場所」はMITのフォン・ヒッペル教授により提案されている概念.日本では神戸大学の小川進教授の著書「イノベーションの発生論理―メーカー主導の開発体制を越えて」に詳しい.

「情報の粘着性」を一言でいえば,情報の移転(主にユーザーと企業間)にはコストが必要だという考え方であり,イノベーションは情報の移転が容易な場所(形態)で発生するという仮説である.

サービスの定義をIBM流に「顧客と企業が一緒に価値を創造するプロセス(a provider/client interaction that creates and captures value)」とするとき,サービスイノベーションは,サービスのプロセスを通じて,顧客側の粘着情報と企業側の粘着情報を(情報通信技術も活用して)同時進行的に価値に変換することで生まれる.

ここで,顧客側の粘着情報と企業側の粘着情報を用いた同時進行的価値変換を「公式的な手続き的プロセス」で行う場合と「非公式的な即興プロセス」で行う場合がある.前者の例は,情報通信技術を活用したアマゾンやiTunesに見られるデータマイニングやリコメンデーションによる価値創造であり,後者の例はIBMの基礎研究所の研究者が顧客と一緒に問題解決を行うODIS(On Demand Innovation Services)である.

1月29日の富士通総研主催のコンファレンス「サービス・イノベーション促進に向けた課題」では,「新サービス創出―娯楽サービスを中心として―(富士通総研 長島直樹氏)」において,双方のプロセスの併用が成功のポイントであることをディズニーランド,旭山動物園,加賀屋の事例分析から示している.

もっぱらITの専門家は「公式的な手続き的プロセス」,昔ながらのサービスの専門家は「非公式的な即興プロセス」を重視して,お互いに反目しているケースも実態として多い.「双方のプロセスの併用が成功のポイントである」という主張は示唆に富んでいる.

筆者は,コンビニも双方のプロセスの併用で成功している例だと思う.すなわち,データマイニングでPOSデータから売れ筋,死に筋をシステマティックに分析するプロセスと,アルバイト店員(高校生,主婦)の地域密着のアイディアを生かす掲示板の活用などによる即興的なプロセスの両方がかみ合って,イノベーションに結びついているのではないだろうか.

製造業のサービス事業戦略が求められる理由

2007年01月21日 | サービスサイエンス
サービス・マネジメント―統合的アプローチ〈上〉」の第3章(pp.57-74)では,「製造業のサービス事業戦略:製造業にもサービス・マネジメントが求められる理由」に関して書かれている.

この章では,製造業のサービス事業戦略が求められる理由として下記の2点を挙げている.

(1)顧客のニーズに応えるため

モノがある程度いきわたっている現代社会において,顧客が求めているのはモノ自体ではなく,モノを使って価値を生み出すプロセスまで踏み込んだサービスである.

(2)差別化を図るため

競合他社よりも優れたサービスを提供することによって,より魅力的な製品を顧客に提供できる.サービスによって競合他社との差別化を図ることができる.

また,注意点として,(1)に関しては製造業がモノに付加して提供するサービスが必ずしも顧客の求めるものになっていないケースがある(製造業視点の余計なお世話サービス),(2)に関してはサービスを重視するあまりモノを軽視するのは間違いであり,競争に勝つためにはまずはモノで予選を通過するのが前提で,サービスで決勝戦に挑むというのが正しい,と指摘している.

さらに,この章では具体的な製造業のサービス事業戦略として以下の4つを提示している.

(1)顧客情報システムの構築

顧客が困って電話をかけてくる前に予防保全サービスを提供するための情報システムの整備.

(2)サービス提供システムの管理

顧客と一緒に価値を協創するための組織体制(サービスオペレーションスキーム)の整備.

(3)適切なスキルの必要性

顧客との接点となる人材のスキルアップ.顧客との接点が顧客満足度に大きな影響力を持っている.

(4)仮想工場

サービスに必要なすべての活動を所有する必要はなく,外部から調達して管理すれば良い.顧客視点で考え,最も顧客満足にとって重要な部分にリソースを集中すべきで,それ以外の部分はアウトソーシングしても良い.アップルのiPod/iTunesは,まさにこの発想の戦略の成功例であろう.

以上の4つの項目を通じて,製造業がサービスによって顧客の満足と競争優位を獲得するためには,人間・組織・プロセス系の取組みと情報処理・知識処理システム系の取組みの組合せがポイントであることがわかる.サービスサイエンスが,社会科学と情報科学の学際的研究を標榜するのもここに理由がある.

ここで,人間自体は昔と変わっていないわけで,人間・組織・プロセス系は単体ではイノベーションを起しえない.情報処理・知識処理システム系の変化点(Web2.0など)を起点とし,人間・組織・プロセス系との合わせ技でサービスイノベーションを起こすのだと思う.




サービスサイエンスに関する電機メーカーの取組み

2006年12月29日 | サービスサイエンス
2006年は「サービスサイエンス」に関する特集号が各学会(ACM,情報処理学会,OR学会,など)の学会誌で組まれたこともあり,「サービスサイエンス」に関する社会的認知度も高まってきた.ここでは,電機/計算機メーカーにおける具体的な取組みをレビューしてみよう.

IBM:
IBMはサービスサイエンスの提唱者であり,米国アルマデン研究所を中心に活発に研究開発を行っているらしい.具体的に見えてくる研究成果としては,バーチャル社会の「セカンドライフ」における積極的関与がある.詳しくはC-NETの記事「IBM、「Second Life」などの仮想世界に本腰」を参照のこと.

富士通/富士通総研:
富士通総研は,サービスイノベーションの調査・研究に積極的に取り組んでいる.「研究の全体枠組」に関する資料によると,Web2.0時代における顧客と提供者間の「情報交換」に注目している点が特徴である.富士通(富士通研究所)は情報処理学会や人工知能学会でサービスサイエンスに関する講演を行っており,強く意識はしているようだ.富士通総研とも連携して動いているとのこと.

日立/日立総合計画研究所:
日立製作所のuVALUEというコンセプトは,「サービスサイエンス」や「サービスイノベーション」を包含しているように思える.日立評論では,uVALUEに関する特集号を2005年7月2006年7月に組んでいる.毎年7月はuVALUE特集号なのかもしれない.特に,2006年7月号の論文「お客様と共創する価値創造「uVALUEイノベーション」の実現へ向けた研究の取り組み」 では,日立製作所のサービスサイエンス/イノベーションに関する研究開発の取組みが紹介されている.また,日立総合研究所の「サービス・イノベーショングループ」においてもサービスイノベーション方法論の開発に取り組んでいる.

東芝:
東芝レビュー2006年12月号において,「製造業のサービスイノベーションのための知識処理」という特集を組んでいる.知識処理の視点から,モノをコアにした製造業のサービス(モノビス)のイノベーションに取り組んでいる点が特徴である.

さて,2007年は上記以外の企業も「サービスサイエンス」に取り組み始めるのだろうか,それとも「サービスサイエンス」という言葉自体がバブルのように消えてなくなるのだろうか?