羽花山人日記

徒然なるままに

遺伝率(生まれか育ちか)

2024-01-17 19:29:30 | 日記

遺伝率(生まれか育ちか)

1月12日に配信された朝日新聞デジタル版に,「才能は生まれか育ちか 遺伝、環境、努力、双子1万組を調査した答え」と題する記事が出ていた。これは同紙の連載「天才観測」の第12回の記事で,慶応大学名誉教授で行動遺伝学者の安藤寿康さんに,加藤勇介記者がインタビューしている。

安藤さんは双生児1万組を調査して,人間に現れるいろいろな形質の遺伝を調べている。記事から推測するに,量的に表される形質を統計遺伝学の手法で研究されたと思われる。

量的形質は計量形質とも言い,身長や体重のように数値で表される形質のことである。メンデルの法則の例にされるのは,ヒトの血液型や穀物のモチ・ウルチのように,はっきりと表現型が区別できる質的形質であるが,量的形質は集団の中では連続分布をし,多数の遺伝子が関与していると考えられる。

量的な形質は,同じ遺伝子を持っていても環境の影響によって異なる表現型を示す。逆に同じ表現型でも異なる遺伝子を持っていることが多い。体重が同じ人でも,体重に関わる遺伝子は異なる。

集団の中のある形質の変異のうち,遺伝的な効果によるものがどの程度であるかを示す指標を遺伝率という。遺伝率の推定にはいろいろな方法があるが,加藤さんは,一卵性双生児と二卵性双生児を比較している。

一卵性双生児はほぼ100%同じ遺伝子を持っているので,相互の間の違いは環境の影響による。二卵性の場合は遺伝子型が異なるので,遺伝的な要因による違いがこれに加わる。一卵性と二卵性の間で,ある形質のばらつき具合を比較すれば,その形質はどの程度遺伝によって決められているか,つまり遺伝率が推定できる。

加藤さんは,この研究の結果から分かったことについて,いくつか紹介している。

IQテストで測られる知能は,4~7割が遺伝の影響を受ける。一卵性の場合は成長につれてこの値の一致度が高くなるが,二卵性では逆に低くなる。幼少の頃は親や家庭の影響が大きいが,成人して自立してくると,遺伝的な素質が現れてくるのではないか。

飲酒や喫煙の習慣の有無は,一卵性と二卵性の間にあまり差がない。身近に酒やたばこがあるかどうかという環境の影響が大きいようだ。

身長や体重は,環境より遺伝の影響が大きいが,これも決定的ではなく,食生活のような環境が遺伝的な影響をカバーしてしまうことがある。

最近の研究で,学力に関係する遺伝子が大分分かってきて,生まれた時の遺伝子を調べると,高学歴まで進む可能性がある程度推定できるようになっている。しかし,遺伝子の組み合わせは非常に多様であり,一組の親から生まれる子供の変異は,理論的には社会集団の多様性をカバーするほどなので,一般的には両親の中間値を子供が示す確率が高いが,「この親にしてこの子あり」も「トンビがタカを生む」も,どちらも真理である。

エジソンは「天才は99%の努力と1%のひらめき」といっている。加藤さんは,「ひらめき」の遺伝的な素質としての重要性を言っているのだと解釈している。「また。努力できる」というのも素質であり,50%くらいが遺伝的なものなので,遺伝子は人の運命を決定づけるガチガチのものではないが,遺伝的にどうしようもないものがあるということは知っておいた方が良いと,加藤さんは述べている。

わたしが専門にした植物育種の分野では,形質の遺伝率を知ることは重要で,遺伝率が高い形質については,早い世代で選抜し,低い形質は遺伝的に固定した段階で評価する方法をとっている。

遺伝率はあくまでも平均的な値であり,推定方法や対象とする集団によって異なり,個々人の性質を決めえるものではない。人類社会の中で,この遺伝率や形質に関わる遺伝子が,差別やナチス的な優生学に使われることは厳に慎まなければならない。

 

コインの問題

王様,女王様,フクロウ,トカゲの図柄のコインの中で,王様のコインを裏返して,鳥以外のものがあれば,ルール違反とすぐにわかる。しかし,鳥があればそれでよしと言えるのだろうか。ほかにルール違反があるかもしれない。女王様は裏の図形に制限がないので,裏返しても意味はない。多くの人はフクロウのコインと考えるだろうが,鳥の裏には王様以外の王族の図柄があっても構わないことを考えると,裏返す意味はない。では,残されたトカゲは?もしこの裏に王様の図柄があったら,これはルール違反になるのではないか。

したがって,正解は「王様のコインとトカゲのコインを裏返す」ということになる。

 

STOP WAR!

コメント (3)
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