ホース・トラスト
今日の朝日新聞be面の記事を見て,わたしは頭を殴られたような気がした。
わたしは,このブログにも書いているように競馬が好きで,年間5つぐらいの重賞レースの馬券を買っている。競走馬の引き締まった体と,躍動して疾駆すろ姿を見るとわくわくする。
しかし,こうした馬たちが引退後どうなるのかについては,一部の優秀な成績を残した馬が種馬として余生を送るのを知る以外,ほとんど気にしていなかった。楽しませてもらったのに,いい気なものである。
ところが,引退した馬たちの余生を見守り,見送る団体が存在するのだ。NPO法人「ホース・トラスト」。引退馬の飼育施設は,小規模なものを含めて全国で約200あり,500~1000頭が余生を送っているそうで,ホース・トラストはその中の最大手である。
理事長の小西英司さん(67歳)のインタビュー記事が載っていた。
小西さんは馬好きで,大学では馬術部に属し,馬術競技に熱中した。サラリーマン生活を経て,30代で乗馬のインストラクターになる。しかし,圧倒的に多くの引退馬が廃棄処分され,ペットフードに利用される過酷な現実を見て,「今やらなければ悔いが残る」と2006年に地方自治体の公有地を借り受けて,鹿児島県湧水町に「NPO法人ホース・トラスト」を立ち上げる。
馬主が引退後も面倒を見てくれる場合には預託量をもらい,G1レースなどで引退した馬には,「引退名馬」として月1~2万の助成金が出る。現在ホース・トラストには10頭の「引退名馬」がいる。しかし,だれも面倒を見てくれない場合には,1頭当たりの費用を14人で支えてもらう「トラストスポンサー」を募って,余生をみんなで見守る制度を作っている。
1頭当たり2千坪を目安にして放牧地を確保している。馬の寿命は20~30年。その間,本来集団で暮らしていた馬が仲間と触れ合えるように,労働は一切させずに過ごさせる。
馬は4つのステージに分けて管理している。高齢で視力や足腰が弱った馬はステージ3として,厩舎に自由に出入りできる放牧地に移し,重度の病気やけがをした馬は厩舎の中で獣医師と連絡を取りながら最期を迎えさせる。
馬は4000年来ヒトと付き合ってきた動物である。その中でサラブレッドは,人智の限りを尽くして育成された競走用の名馬である。「楽しんだら後は知らない」では,たまらない気がする。日本では年間8千数百頭の馬が生まれ,その大部分が競走馬と乗馬用の馬に利用されているという。その数に比べたら,余生を送れる引退馬はごくわずかだ。しかし,小西さんたちのような努力は貴重である。日本中央競馬会は,「ホース・トラスト」のような組織に,積極的に財政援助をすべきではないだろうか。
遅ればせながら,わたしも貧者の一灯を灯させてもらった。
STOP WAR!