羽花山人日記

徒然なるままに

特別天然記念物

2021-06-13 20:25:29 | 日記

Bingからダウンロード

今朝のニュースで,環境省が特別天然記念物のトキを2026年から本州で放鳥することを決めたことが報じられた。ふと,このニュースに違和感を覚えた。

トキは1952年に特別天然記念物に指定されたが,2003年をもって全滅している。日本に現存するトキは,中国から導入されたものを人手によって繁殖し,放鳥されたもので,日本に自生していたものではない。1952年の指定をそのまま現存のトキに横滑りさせていいものだろうか。

広辞苑で天然という言葉を引いてみた。「人為の加わらない自然のままの状態。また,人力では如何ともすることのできない状態」とある。人為の加わらない自然のままの状態が,地球上に存在するか疑問ではあるが,現存トキはどうも天然物には当てはまらないような気がする。しかし,法律では,現存トキは2003年まで存在したものと同じであるとみなすのである。文句を言っても始まらない。いずれにせよ,トキは大事にしなければならない,と自分を納得させた。

日本の野外に生息するトキは,500羽近くに達しているという。以前に習った集団遺伝学では,集団のサイズが500以下になると,近親交配の頻度が高くなって集団の減衰が促進されるという。現存のトキ集団の近縁係数は自然集団に比べればかなり高いだろうから,500ではまだまだ不足である。外部から個体を導入して繁殖する必要がある。

この悩みは,兵庫県豊岡市にあるコウノトリの繁殖センターでも聞いた。日本のコウノトリは1971年に絶滅している。兵庫県は2003年にコウノトリ野生復帰推進計画を策定し,繁殖・放鳥に取り掛かり,現在217羽が全国で確認されているという。野生生物の集団として維持するには圧倒的に不足している。

人為的に「天然」を作り出すのは容易ではない。

コウノトリ,2020年兵庫県豊岡市にて撮影

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする