スプラウト 会計のはなし、日々のはなし

名古屋市千種区の税理士法人スプラウトの税理士/社労士/CFP®が綴る日々の様々なこと。

価格の決め方

2009-10-30 18:11:24 | Weblog
新製品を販売するにあたり
どういう価格をつけるのか?

これには大きく2つの考え方がある。

まず1つ目が
販売初期の価格を高く設定して、
その後徐々に下げていく
「初期高価格戦略(スキミングプライス)」です。

消費者の中には
高い価格でも
新製品を購入する
消費者として革新的な層もあれば

新製品には
ほとんど興味を示さずに

その新製品が市場に浸透して
安い金額になってからでないと買わない
非常に保守的な層もあります。

この「初期高価格戦略」は
映画のDVDを販売する場合によく採用されています。

最初のうちは
ある程度の金額を支払ってでも
早く手に入れたいマニア層に向けて

初回限定の特典などをつけて
高い価格で売り出します。

その後、徐々に値段を下げていき
安いなら買うという層を取り込んでいきます。


最初から、平均的な価格で
普通に販売するよりも

高くても買う人には付加価値をつけて高く売り
安いから買う人には安く売るというように

時間差攻撃で価格を設定した方が
売上を大きくできます。

DVDは原価(変動費)がほとんどかかりませんので
売上の増加=粗利の増加と考えて問題ありません。


2つ目の方法として
販売初期の価格を安く設定して
最初に大量の顧客を囲い込む
「初期低価格戦略(ペネトレイティングプライス)」というのもあります。

これは
プリンタなどによく使われる戦略で
プリンタ本体の価格は安く設定して
たくさんの顧客に本体を買ってもらいます。

通常、プリンタには
専用のインクやトナーが必要となりますので

儲けは
インクやトナーといった消耗品で
稼ぐという考え方です。

もちろん
たくさんの人が買ってくれることで
規模の経済性が働き
プリンタの製造コストを下げる効果もあります。


価格の設定は
売上・利益に直結しますので
非常に重要ですが、

売るものによっても
市場によっても
変わってくるため
なかなか難しいですね。



ポイントカード

2009-10-23 18:00:37 | Weblog
最近、
大型家電量販店を代表として
ポイントカードを
作っているところが多いですね。

例えば
10%のポイントをつけている場合は
10万円の買い物をすると
1万円のポイントが付与されて
次の買い物のときに
1万円を代金から引いてもらえます。


では、販売店が割引ではなく
ポイントカードにするメリットは何でしょうか?

一つ目は

直接商品の価格を下げてしまうと
他の競合との間で
厳しい価格競争となる結果として
商品の値崩れがおこるが、

ポイントカードにすれば
商品の価格を下げることなく
消費者に割引と同じような
メリットを感じさせることができる。


二つ目は

割引をすると
その場の買い物だけで完結してしまうが
ポイントカードにすると
ポイントを使うための再来店があるので
顧客との関係を継続できる。


三つ目は

ポイントカード作成時に
顧客属性を入手でき
その後の購買履歴を記録することで
蓄積した情報を
品揃えや販売促進にいかすことができる。

四つ目は

これは、テレビの家電芸人も言っていましたが

割引とポイントでは
実質的な値引率が違う。

顧客側からすると
同じ10%であれば
割引の方が
ポイントよりも得になります。

例えば
10万円のものを買うとします。

10%割引の場合は
10万円の商品が9万円で手に入った
ので1万円の利益が得られます。

値引率は
1万円÷10万円=10%です。

10%ポイント還元の場合は
10万円の商品+ポイントで得た1万円の商品
=合計11万円のものが
10万円で手に入ったので
利益は同じ1万円ですが

実質的な値引率は
1万円÷11万円=9.09%
となります。

10%割引と10%ポイント還元は
多くの消費者は
同じものとして考える傾向にあるので

販売店としては
ポイント還元の方が有利になります。


というように
ポイントカードにすることで
様々なメリットがあります。

このポイントですが
会計上はどのように処理するのでしょうか?

金融庁が出している
「ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」
によると

(前提)
 ・1000円の商品を現金で販売し、10%(100円分)のポイントを付与
 ・ポイントは、当期に40円分が当社商品の購入に使用され、
  未使用残高については、過去の使用実績から、
  翌期以降に50円分の使用が見込まれる。
 ・商品の原価率は70%

(処理)
 1.商品販売時点(ポイント発行時点)
   現  金 1000 / 売 上 1000
   売上原価  700 / 商 品  700
   ※ ポイントに関する会計処理なし

2.ポイント使用時点
売上原価  28 / 商 品  28
※ 40円×70%=28円

3.期末
ポイント引当金繰入 35 / ポイント引当金 35
※ 50円×70%=35円

簡単にいうと

ポイントを使ったときに
その商品の原価分で費用に上げて

期末に未使用のポイントのうち
翌期以降に使われそうな分を
引当金として計上するということです。

税務上は
原則として
ポイントを使用したときの損金になり
引当金の計上は認められないのですが

ポイントを付与するシステムが
「金品引換券付き販売」に該当すると考えると
法人税法基本通達9-7-3により
一定要件のもとに未払計上が認めらるようです。

会社の安全性

2009-10-16 17:44:07 | Weblog
会社の支払能力や安全性は
貸借対照表を見ればある程度わかります。

例えば、
その会社の短期的な支払能力や安全性は

・流動比率
・当座比率

を出してみることで分析できます。

 流動比率は
「流動資産÷流動負債」で算出されます。

流動資産とは1年以内にお金になる予定ものをいい
流動負債とは1年以内に支払う予定のものをいいます。

この流動比率は200%以上あることが理想的ですが
少なくとも100%以上あることが必要です。

つまり
流動比率が100%を割っているということは
1年以内にお金になる予定のものが全てお金になっても
1年以内の支払がショートする危険性があるということです。

この流動比率よりも
さらに支払能力をシビアに見るのが当座比率です。

これは流動資産のかわりに
当座資産(=現金・預金・受取手形・売掛金)
を使うもので

「当座資産÷流動負債」で算出します。

流動比率との違いは
棚卸資産が入っていない点です。

棚卸資産のなかには
現金化される可能性の低い
不良在庫なども含まれてしまいます。

当座比率では
これを取り除き
確実に現金化される資産だけをもとにして
会社の短期的な支払能力をより厳密に算出します。

この当座比率も100%以上あることが望まれます。


その他に
長期的な安全性を分析する指標として

・固定比率
・固定長期適合率

というものがあります。


固定資産(土地や建物、機械などの設備投資)は
投下したお金がすぐに回収できるものではないので

基本的に
返済の必要がないお金(自己資本)か
返済期限の長い長期の借入金で
まかなう必要があります。

固定比率は
「固定資産÷自己資本」で算出します。

固定比率により
固定資産が自己資本でまかなえているかどうか
が判断できます。

もう一つの
固定長期適合率は
固定比率の分母の自己資本に長期借入金を加えることで

長期にわたってお金が寝る状態になる固定資産が
長期的な資金でまかなえているかどうかを
判断する指標で、
100%以下である必要があります。

つまり
この比率が100%を超えているということは

近いうちに返さなければならない短期の借入金を
現金化しにくい資産である固定資産にまわしていることになり
その分だけ、資金繰りが厳しくなるからです。

あと
固定長期適合率が100%以下におさまっていても
それで安心していいわけではありません。

長期の借入金は毎月返済する必要があるので
設備投資をした金額以上の
キャッシュフロー利益が将来的に獲得できることが大事です。

とはいっても

「設備投資をして
 売上が伸びるはずだったのに、うまくいかなかった。」

というように
見込みと違った結果になることは
よくあるため

設備投資はできるだけ
自己資本(返す必要のないお金)の範囲内に
とどめるのが無難です。







打ち返す。

2009-10-09 18:05:31 | Weblog
税理士の仕事は何?
と聞かれたら

「会計と税務」

というのが
一般的な答えですが

実際に税理士として
お客様と接していると

会計や税務の話よりも

中小企業で起こる
様々な問題の
アドバイスを求められることが
非常に多い。

会計と税務は
わかっていて当たり前。

プラスαの部分が
税理士としての差別化につながります。


税理士の仕事において
いろいろなことを勉強するのは

レストランが
材料を仕入れるのと同じ。

その仕入れた材料を
シェフが
お客様の求める
料理として作り上げ、提供します。

そして
お客様の期待するレベル以上の
ものを提供しなければ
満足してもらえません。


中小企業の社長にとって
一番身近な相談相手が税理士です。

税理士はどうしても
会計や税務の方向から考えますが

一方向だけから答えを出すと
会社の経営にとって
バランスを欠いたアドバイスになる恐れがあります。


企業は
継続しなければならない。

継続するためには
売上をあげて、利益を獲得しなければならない。

では、
「売上をあげるためにはどうすればよいのか?」

「組織をどのようにすればよいのか?」


会計や税務の知識だけでは
答えの出せないものもたくさんあります。


だからといって
「それは自分の仕事の範囲じゃないので・・・」
と言ってしまうと

社長にとって相談する場所が
なくなってしまいます。


「どんなボールが投げられてもバットに当てる。」

これができるようになるため
もっと、もっと、頑張らないと。





利益と回転

2009-10-02 17:37:05 | Weblog
「利益/総資本 =総資本利益率」

会社の経営は
集めたお金(総資本)を使って
利益をあげるのが目的です。

総資本利益率は
総資本を使って
どれだけの利益が上げられたか
という指標で
その会社の経営効率がわかります。

同じ100万円の利益をあげるのに
1億円使っている会社と
1千万円しか使っていない会社では
どちらの経営効率がいいでしょうか?

もちろん
少ない1千万円の元手で100万円の利益を上げている
方ですよね。

この総資本利益率は

利益/総資本  の分数式の

分母、分子に売上を入れ込んで

売上利益率(利益/売上)×総資本回転率(売上/総資本)

という算式に分解することもできます。

このように分解することで

「売上利益率」
「総資本回転率」

の2つが
経営効率のカギを握っていることがわかります。

「売上利益率」は
売上のうち何%が
利益として残るのかを表したもの。

「総資本回転率」は
投下したお金(総資本)が
何回売上として回収できたのかを表したもの。


例えば
A社とB社という2つの会社があります。

A社の売上利益率は4%、B社は2%です。

ここまでだと
A社の方が優れているように見えます。

でも総資本回転率は
A社が0.5回転、B社が1.5回転だとすると

総資本利益率はどうなるでしょうか?

A社 売上利益率4%×総資本回転率0.5回=総資本利益率2%
B社 売上利益率2%×総資本回転率1.5回=総資本利益率3%

売上利益率の低いB社のほうが
総資本利益率はよくなりました。

つまり

B社は売上利益率でA社より劣るが

投下したお金を
A社よりもたくさん回転させているので

結果として
A社よりもよい経営効率になりました。


B社のようなやり方をしているのが
薄利多売型の安売りスーパーやディスカウントショップです。

A社のような
売上利益率は高いが
回転率が低いのが百貨店とすると

薄利多売型の
安売りスーパーやディスカウントショップは

安くすることで
売上利益率は低下するが
その分たくさん売ることで
総資本回転率をよくする戦略をとっています。

経営効率は
「利益率」だけでなく
「お金の回転」も重要だということですね。