スプラウト 会計のはなし、日々のはなし

名古屋市千種区の税理士法人スプラウトの税理士/社労士/CFP®が綴る日々の様々なこと。

平成23年度税制改正大綱(所得税その他)

2010-12-20 11:12:25 | Weblog
 1.所得税
(1)給与所得控除(①、②は増税、③は減税)

  ①以前は上限がなかった給与所得控除に上限を設定。
具体的には年収1,500万円超の人の給与所得控除を245万円で頭打ちにする。

  ②年収4,000万円超の高額報酬を得ている役員については、
給与所得控除額を2分の1にする。
年収2,000万円超4,000万円以下の役員は
給与所得控除額の4分の3を上限として徐々に縮減するように調整する。

役員給与と役員以外の給与の両方をもらっている人に
関しての給与所得の計算なども併せて整備する。

  ③給与所得者には概算経費という意味の給与所得控除のほかに、
選択で実額経費としての特定支出控除を認めていたが、あまり使われていなかった。
今回の改正により特定支出控除の範囲に
従来は認められていなかった業務に関係ある図書費、交際費、
職場で着用する衣服費、職業上の団体の経費、弁護士税理士等の資格取得費用が
含まれることになった。

さらに改正前は
実額経費が給与所得控除を超えないと
実額経費としての特定支出控除を認めなかったのが
改正後は給与所得控除額の2分の1(年収1500万円超の場合は125万円)
を実額経費が超える場合はその超える部分の金額を
給与所得控除に加算することが認められるようになった。

   この改正は働きながら税理士試験を目指しているような方には
   朗報ですが、
   ただ年収300万円の場合でも給与所得控除は108万円あり
   その半分は54万円なので
   税理士講座の受講料を考えると
   働きながら3科目くらい勉強しないと特定支出控除は
   適用できないですね。
   

(2)成年扶養控除(被扶養者が23歳~69歳までの扶養控除)(増税)

   扶養者の年収が568万円超の場合は控除できない。
   ただし、被扶養者が学生、障害者、65歳以上の場合は適用できる。

   扶養者の年収が568万円以下の場合は
   被扶養者の制限なく扶養控除が認められる。

   世帯主にある程度の年収がある場合は
   働けるのに働かない人の扶養控除を認めないという
   趣旨ですが、同時に現在の就職難も
   なんとかしなければならないですね。
   
   
(3)配偶者控除

   今回の改正はないが、来年度の税制改正で抜本的に見直す方向。

(4)退職所得控除(増税)

   従来の退職所得の計算は
  (退職金-退職所得控除)×1/2となっていたが

   勤続年数5年以内の法人役員が受ける退職金については
   ×1/2をしないようになった。

   天下りで、短い期間役員をやって
   その期間の割には非常に高額な退職金をもらって
   いる人を退治するための改正ですね。


2.相続税
(1)基礎控除(増税)

   従来の基礎控除は
   「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」だったが
   改正により
   「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と大きく縮小した。

   例えば
   法定相続人として妻、子2人の場合
   従来であれば相続財産が8,000万円以下だと
   相続税が課税されなかったのが
   改正後は相続財産が4,800万円超あると
   相続税の課税対象となってしまう。

   今後は
   相続税は一部のお金持ちだけかかる税金という
   認識を改めなければならないですね。


(2)生命保険金等の非課税枠(増税)

   従来は「500万円×法定相続人の数」までは
   生命保険金に相続税が課されることがなかったが
   改正により
  「500万円×法定相続人の数(未成年者、障害者又は生計を一にしていた者に限る)」
   と変更されます。

   例えば
   法定相続人が妻、子2人(成人であり独立しているため生計は別である)
   のケースの場合
   従来であれば「500万円×3人=1,500万円」までであれば
   生命保険金に相続税が課されることはなかったが

   改正後はこのケースの場合「500万円×1人=500万円」となり
   500万円を超える生命保険金を受けると相続税が課されてしまうようになる。

   さきほどの基礎控除額の引き下げもあるため
   相続財産にマイホームのない人でも
   死亡保険金で仮に5,500万円もらうと
   5,500万円-生命保険の非課税500万円=5,000万円
   5,000万円-基礎控除額4,800万円=200万円
   と相続税の課税所得が出てしまいます。

   改正案がそのまま通ると
   平成23年4月1日以降の相続から変わるため
   平成23年3月31日までの相続と比較して
   税額の差がとても大きくなってしまいます。

   経過措置等は作らないのか今回の大綱の中には
   とくに書いてありませんでした。

(3)税率(増税)

   相続税は累進課税であり
   従来は最高50%だった税率が最高55%に変更された。

(4)未成年者控除、障害者控除(減税)

   従来は「6万円×20歳(障害者控除は85歳)到達までの年数」
   で計算していたのが
   「10万円×20歳(障害者控除は85歳)到達までの年数」に変更。
   (特別障害者については10万円ではなく20万円で計算)


3.贈与税

(1)税率を引き下げ

(2)相続時精算課税制度(生前の贈与と死亡時の相続を一体として計算する方法)
   の適用対象となる受贈者に20歳以上の孫が追加
  (現在は推定相続人のみ。孫が相続人になるケースは少ない)され
   贈与者は60歳以上(現在は65歳以上)に年齢要件を引き下げる。

   相続時精算課税制度は通常の方式に比べて
   贈与税の負担が軽減されているので要件を緩和し
   さらに使いやすくすることで
   お金を持っている高齢者世代から
   若年層への資産の移転を活発にして
   景気を向上させようとするねらいですね。


4.国税通則法

(1)税務調査手続きの明確化

  ①税務調査の前に日時、調査の目的等を
   文書で納税者や税理士等に通知することを原則とする。

  ②税務調査後にも納税者への調査結果の説明責任を強化するため
   調査結果を文書で交付するようにする。
   その文書には内容、金額、理由とともに
   修正申告等を行った場合はその後不服申立てができないことを記載。
   調査内容について修正申告等がされた場合にも
   調査が終了した旨の文書を交付する。

   以前は、調査の連絡は電話がかかってくるだけで
   調査結果も口頭で説明があるだけでしたが
   これからは文書の交付をするようになるようです。

(2)更正の請求
  ①更正の請求とは
   申告後に過大に税額を申告していたことに気付き
   納税者が税務署長に還付の請求をすることなどをいう。

   この更正の請求の期限が
   現行1年間しか認められていなかったが
   今回の改正により
   更正の請求期限が5年に延長されることになった。
   ただしこれと併せて
   課税庁が増額更正できる期限も
   3年から5年に延長されることとなる。

  ②従来
   申告要件のあるものは更正の請求の対象とならなかったが
   一部のものについて(法人税だと受取配当等、所得税、外国税など)
   更正の請求が認められることとなった。

   あと当初申告の際の記載額に
   適用金額が制限される旨の取扱いも緩和されることになったため
   計算間違い等で正しい金額よりも少ない金額を記載して申告をしていても
   更正の請求により、正しい金額まで修正することができるようになった。

今回の改正は
結構、盛りだくさんの内容です。

気にしている方が少ない割に実際大きな影響を与えそうなのが
「相続税の基礎控除額の引き下げ」です。
これにより「相続税なんて一部のお金持ちしか関係ない」では済まなくなり
多くの人が相続税を意識しなければならなくなります。

相続税も事前に手を打つかどうかで税額が結構変わってきますので
相続対策のニーズは増えていきそうですね。

国税通則法の改正は
税理士の立場から見て
非常に評価できる内容です。


来年度以降に
今回着手していない配偶者控除の廃止について改正が予定されています。

配偶者控除については
健康保険の扶養や国民年金の第3号被保険者と一体的に考えないと意味がないので
どのような形でまとめていくのか非常に注目しています。

本当はすぐにでもやらなければならない
消費税の引き上げについては、まだまだ時間がかかりそうですね。


平成23年度税制改正大綱(法人税編)

2010-12-18 13:01:38 | Weblog
法人税の改正点は下記のとおりです。

1.減税系のもの

(1)税率
   現在の基本税率30%が25.5%に
   中小法人の軽減税率18%が15%に引き下げられます。

(2)雇用促進税制
   雇用を10%以上増やした企業は
   1人雇用につき20万円を税額から控除できます。

(3)欠損金の繰越控除
   繰越期間7年だったのが9年まで延長


2.増税系のもの

(1)欠損金の繰越控除
   欠損金の繰越控除を所得の80%までに制限。ただし中小法人は従来通り。

(2)減価償却制度の見直し
   従来の定率法の償却率だと償却初期に多額の償却費が計上されすぎるため
   従来は定額法償却率の250%だったのを、
   定額法償却率の200%に定率法償却率を変更する。

(3)研究開発減税
   従来は法人税額の30%が上限だったのを、法人税額の20%に制限する。

(4)貸倒引当金
   従来はどんな法人でも設定できたのが
   これからは銀行や保険、中小法人しか設定できなくなる。
   経過措置として従来の計算額の平成23年度は4分の3、
   平成24年度は4分の2、平成25年度は4分の1の引き当てが認められ、その後廃止となる。

(5)寄附金
   一般寄附金の損金算入限度額は現在資本基準と所得基準の合計を2分の1して計算
   しているが、改正により2分の1ではなく4分の1で計算することになる。

(6)100%グループ内の法人が清算中の場合、解散が見込まれる場合等は、その法人の株
   式について評価損の計上が認められない。

日本の法人税率は諸外国に比べてまだまだ高く
それが国際的な競争力を奪っているということが随分前から指摘されていました。

なので
今回の改正で法人税の税率を引き下げることにより
経済の活性化を図ろうとしたのですが

現在の日本の財政状態では
単純に減税だけをする体力がありません。

そこで
増税となる項目も併せて改正することで
何とかカバーしようとしていますが

試算によると全然カバーできないため
あとは企業の所得が増えることでの
税収の自然増を期待しているようです。

所得税や相続税、国税通則法なども
大きく改正されますが
これらも別の記事として書きます。

平成23年度税制改正大綱(趣旨)

2010-12-18 12:58:27 | Weblog
平成23年度の
税制改正大綱が発表されました。

読み込んだら
結構な量なので時間がかかりました。

今、日本の財政状況は非常に厳しく
歳出の半分以下の税収しかない状況です。

しかもこれから
ますます少子高齢化が進展すると

年金や医療費などの
社会保障関係の支出が
とんでもないことになりますので

国として
大きな改革を迫られています。

税制改正大綱の最初に
税制改正にあたっての
基本的な考え方がのっていますが
そこを要約するとこんなことが書いてあります。

現在の日本は

・人口減少と高齢化の同時進行

・グローバル化の急速な進展

・国内での格差拡大

・資源制約の問題、気候変動などの環境問題

などの様々な問題を抱えている。


経済動向としては

・景気は足踏み状態

・失業率は高水準


そして我が国の財政は

・少子高齢化による社会保障関係費の増大

・度重なる減税

・景気低迷による税収減

により危機的な状態であり
税収力の回復が喫緊の課題である。


この課題に応えるためには
税制の抜本的改革が必要。

この抜本的改革に当っての
5つのポイントが次のとおり

①納税者の立場に立ち「公平・透明・納得」の税制を築く

②「支えあい」のために必要な費用を分かち合う

③税制改革と社会保障制度改革を一体的にとらえる

④グローバル化に対応できる税制を考える

⑤地域主権改革を推進するための税制を構築する


この5つのポイントに基づき
平成23年度の税制改正には4つの柱がある。

イ.デフレ脱却と雇用のための経済活性化

ロ.格差拡大とその固定化の是正

ハ.納税者、生活者の視点からの改革

ニ.地方税の充実と住民自治の確立に向けた地方税制度改革

この方向性で
様々な改正案が作られましたが

内容は長くなるので
別の記事で書きます。

研修・ボーリング・忘年会

2010-12-10 19:22:37 | Weblog
今週の水曜日に

私が所属する
愛知県社労士会の
名古屋東支部の研修に
行ってきました。

講師は
労働基準監督署の
労災第一課の課長さん。

非常に上手に
説明されていました。

テーマは
「職業性疾病にかかる労災認定について」

私が平成20年に
社労士試験の選択式労災で
失敗したテーマです。

「脳血管疾患及び虚血性心疾患」とか
「心理的負荷」
「認定基準」
「判断指針」等の
試験で問われた用語がたくさん出てきて

「平成20年の本試験を受ける前に
この研修を受けていたら合格できていたのに」

とか今さらつまらないことを考えてしまいました。

研修の内容は非常に勉強になりました。

仕事中にケガをした場合は
業務との因果関係がわかりやすいので
労災認定しやすいのですが

病気(精神障害や脳・心臓疾患、腰痛等)
の場合は
業務との因果関係がわかりにくい。

同じ環境で仕事をしていても
病気になる人とならない人がいて
個人のそもそもの容量の違いがあります。

個人差を考慮すると労災認定が
非常に難しくなるため

ある程度具体的な
認定基準とか判断指針などが
設けられており

それに基づき
労災認定するかどうか決定していくようです。

その基準や指針についての
詳細を役所の側からの考え方も
交えてお話してもらえたので
とても興味深く聞くことができました。


研修は約2時間半行い

その後、名古屋駅に場所を移動して
その支部の
ボーリングと忘年会でした。

開始まで少し時間があったので
研修の会場から歩いて
栄の丸善(本屋)に向かっていたら

途中で

「すみません。NHKですが、10%減税が今日市議会で
否決されたことについてお話を聞かせてもらえないでしょうか」

とTVの取材の人に捕まって
いろいろインタビューされました。

多分
ニュースか何かで使う
「街の人の声」みたいなものだと
思いますが

次の日、
「昨日テレビに出ていたみたいだねー」と
言われたので
どうやら放送されてしまったようです。
(初TV出演)

その後
会場のボーリング場に向かい
2ゲーム
ボーリングをしました。

私は9月に登録したばかりの
新入会員なので
ほとんど知り合いもおらず
最初はかなり緊張していました。

その緊張が
いい方向に出たのか
久しぶりにやったボーリングなのに
まあまあいいスコアが出て
3位入賞で景品をいただきました。

ボーリングの後は
同じビルの居酒屋に場所を
変更して忘年会になりました。

緊張している私を
気遣ってか
周りの先輩社労士の先生方に
話しかけていただいたおかげで
だんだん打ち解けていけました。

名刺交換もたくさんさせていただきました。

みなさん
気さくでいい方ばかりでしたので
終わってみると
結構楽しかったです。

これから
同じ社労士として
先輩方に少しでも近づいていけるよう
頑張っていきたいなーと思いました。


電子申請のレール

2010-12-03 19:13:05 | Weblog
社労士関係の
手続きの仕事は
現在、紙面で提出していますが

先日参加した
社労士の新入会員オリエンテーションで
愛知県社労士会の会長が
「これからはどんどん電子申請すべき」
というお話をされていました。

確かに
書面での手続きは非常に無駄な作業が多い。

書面にお客様の印鑑をもらったり

役所に郵送するときは
返信用封筒を同封して
場合によっては書留分の切手を貼ったり

役所に直接提出するときは
待ち時間があったり・・・

そういう無駄は
積み重ねると結構な時間やお金になります。


税理士業務の方は
現在ほぼ100%電子申告を
しているので

社労士業務も
電子申請をしたいと思い
9月の登録と同時に
電子申請のときに必要となる
電子証明書の取得だけはしたのですが

税理士の電子申告とき
最初の導入にものすごく
手間取り、ストレスになった
記憶があったので

社労士の電子申請も
やらなきゃと思いながらも
忙しいのを理由に後回しにしていました。

でも電子申請にすることで
得られるメリットは大きいので

本腰を入れて
電子申請に
取り組んでみることにしました。


社会保険関係の電子申請は
電子政府の総合窓口
e-GOV(イーガブ)
というサイトで行うようで

とりあえず
必要なソフトをインストールしました。

そして
初めての人向けの
体験システムがあったので
試しにやってみて
どんな感じなのかの
イメージはできました。


あとは
お客様から
委任状に印鑑をもらえれば

社労士の電子証明書のみで
各種の手続きが行えるようなので

その準備を順次していこうと
思います。

今までは書面しか認めていなかった
雇用保険の離職票についても
これから電子申請できるように
なるそうです。


電子申告のときもそうでしたが
こういうのは
最初の導入さえしてしまえば
あとは非常に楽に手続きできるはずなので

今年中に
何とかレールを敷けるように
頑張りたいと思います。