1.所得税
(1)給与所得控除(①、②は増税、③は減税)
①以前は上限がなかった給与所得控除に上限を設定。
具体的には年収1,500万円超の人の給与所得控除を245万円で頭打ちにする。
②年収4,000万円超の高額報酬を得ている役員については、
給与所得控除額を2分の1にする。
年収2,000万円超4,000万円以下の役員は
給与所得控除額の4分の3を上限として徐々に縮減するように調整する。
役員給与と役員以外の給与の両方をもらっている人に
関しての給与所得の計算なども併せて整備する。
③給与所得者には概算経費という意味の給与所得控除のほかに、
選択で実額経費としての特定支出控除を認めていたが、あまり使われていなかった。
今回の改正により特定支出控除の範囲に
従来は認められていなかった業務に関係ある図書費、交際費、
職場で着用する衣服費、職業上の団体の経費、弁護士税理士等の資格取得費用が
含まれることになった。
さらに改正前は
実額経費が給与所得控除を超えないと
実額経費としての特定支出控除を認めなかったのが
改正後は給与所得控除額の2分の1(年収1500万円超の場合は125万円)
を実額経費が超える場合はその超える部分の金額を
給与所得控除に加算することが認められるようになった。
この改正は働きながら税理士試験を目指しているような方には
朗報ですが、
ただ年収300万円の場合でも給与所得控除は108万円あり
その半分は54万円なので
税理士講座の受講料を考えると
働きながら3科目くらい勉強しないと特定支出控除は
適用できないですね。
(2)成年扶養控除(被扶養者が23歳~69歳までの扶養控除)(増税)
扶養者の年収が568万円超の場合は控除できない。
ただし、被扶養者が学生、障害者、65歳以上の場合は適用できる。
扶養者の年収が568万円以下の場合は
被扶養者の制限なく扶養控除が認められる。
世帯主にある程度の年収がある場合は
働けるのに働かない人の扶養控除を認めないという
趣旨ですが、同時に現在の就職難も
なんとかしなければならないですね。
(3)配偶者控除
今回の改正はないが、来年度の税制改正で抜本的に見直す方向。
(4)退職所得控除(増税)
従来の退職所得の計算は
(退職金-退職所得控除)×1/2となっていたが
勤続年数5年以内の法人役員が受ける退職金については
×1/2をしないようになった。
天下りで、短い期間役員をやって
その期間の割には非常に高額な退職金をもらって
いる人を退治するための改正ですね。
2.相続税
(1)基礎控除(増税)
従来の基礎控除は
「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」だったが
改正により
「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と大きく縮小した。
例えば
法定相続人として妻、子2人の場合
従来であれば相続財産が8,000万円以下だと
相続税が課税されなかったのが
改正後は相続財産が4,800万円超あると
相続税の課税対象となってしまう。
今後は
相続税は一部のお金持ちだけかかる税金という
認識を改めなければならないですね。
(2)生命保険金等の非課税枠(増税)
従来は「500万円×法定相続人の数」までは
生命保険金に相続税が課されることがなかったが
改正により
「500万円×法定相続人の数(未成年者、障害者又は生計を一にしていた者に限る)」
と変更されます。
例えば
法定相続人が妻、子2人(成人であり独立しているため生計は別である)
のケースの場合
従来であれば「500万円×3人=1,500万円」までであれば
生命保険金に相続税が課されることはなかったが
改正後はこのケースの場合「500万円×1人=500万円」となり
500万円を超える生命保険金を受けると相続税が課されてしまうようになる。
さきほどの基礎控除額の引き下げもあるため
相続財産にマイホームのない人でも
死亡保険金で仮に5,500万円もらうと
5,500万円-生命保険の非課税500万円=5,000万円
5,000万円-基礎控除額4,800万円=200万円
と相続税の課税所得が出てしまいます。
改正案がそのまま通ると
平成23年4月1日以降の相続から変わるため
平成23年3月31日までの相続と比較して
税額の差がとても大きくなってしまいます。
経過措置等は作らないのか今回の大綱の中には
とくに書いてありませんでした。
(3)税率(増税)
相続税は累進課税であり
従来は最高50%だった税率が最高55%に変更された。
(4)未成年者控除、障害者控除(減税)
従来は「6万円×20歳(障害者控除は85歳)到達までの年数」
で計算していたのが
「10万円×20歳(障害者控除は85歳)到達までの年数」に変更。
(特別障害者については10万円ではなく20万円で計算)
3.贈与税
(1)税率を引き下げ
(2)相続時精算課税制度(生前の贈与と死亡時の相続を一体として計算する方法)
の適用対象となる受贈者に20歳以上の孫が追加
(現在は推定相続人のみ。孫が相続人になるケースは少ない)され
贈与者は60歳以上(現在は65歳以上)に年齢要件を引き下げる。
相続時精算課税制度は通常の方式に比べて
贈与税の負担が軽減されているので要件を緩和し
さらに使いやすくすることで
お金を持っている高齢者世代から
若年層への資産の移転を活発にして
景気を向上させようとするねらいですね。
4.国税通則法
(1)税務調査手続きの明確化
①税務調査の前に日時、調査の目的等を
文書で納税者や税理士等に通知することを原則とする。
②税務調査後にも納税者への調査結果の説明責任を強化するため
調査結果を文書で交付するようにする。
その文書には内容、金額、理由とともに
修正申告等を行った場合はその後不服申立てができないことを記載。
調査内容について修正申告等がされた場合にも
調査が終了した旨の文書を交付する。
以前は、調査の連絡は電話がかかってくるだけで
調査結果も口頭で説明があるだけでしたが
これからは文書の交付をするようになるようです。
(2)更正の請求
①更正の請求とは
申告後に過大に税額を申告していたことに気付き
納税者が税務署長に還付の請求をすることなどをいう。
この更正の請求の期限が
現行1年間しか認められていなかったが
今回の改正により
更正の請求期限が5年に延長されることになった。
ただしこれと併せて
課税庁が増額更正できる期限も
3年から5年に延長されることとなる。
②従来
申告要件のあるものは更正の請求の対象とならなかったが
一部のものについて(法人税だと受取配当等、所得税、外国税など)
更正の請求が認められることとなった。
あと当初申告の際の記載額に
適用金額が制限される旨の取扱いも緩和されることになったため
計算間違い等で正しい金額よりも少ない金額を記載して申告をしていても
更正の請求により、正しい金額まで修正することができるようになった。
今回の改正は
結構、盛りだくさんの内容です。
気にしている方が少ない割に実際大きな影響を与えそうなのが
「相続税の基礎控除額の引き下げ」です。
これにより「相続税なんて一部のお金持ちしか関係ない」では済まなくなり
多くの人が相続税を意識しなければならなくなります。
相続税も事前に手を打つかどうかで税額が結構変わってきますので
相続対策のニーズは増えていきそうですね。
国税通則法の改正は
税理士の立場から見て
非常に評価できる内容です。
来年度以降に
今回着手していない配偶者控除の廃止について改正が予定されています。
配偶者控除については
健康保険の扶養や国民年金の第3号被保険者と一体的に考えないと意味がないので
どのような形でまとめていくのか非常に注目しています。
本当はすぐにでもやらなければならない
消費税の引き上げについては、まだまだ時間がかかりそうですね。
(1)給与所得控除(①、②は増税、③は減税)
①以前は上限がなかった給与所得控除に上限を設定。
具体的には年収1,500万円超の人の給与所得控除を245万円で頭打ちにする。
②年収4,000万円超の高額報酬を得ている役員については、
給与所得控除額を2分の1にする。
年収2,000万円超4,000万円以下の役員は
給与所得控除額の4分の3を上限として徐々に縮減するように調整する。
役員給与と役員以外の給与の両方をもらっている人に
関しての給与所得の計算なども併せて整備する。
③給与所得者には概算経費という意味の給与所得控除のほかに、
選択で実額経費としての特定支出控除を認めていたが、あまり使われていなかった。
今回の改正により特定支出控除の範囲に
従来は認められていなかった業務に関係ある図書費、交際費、
職場で着用する衣服費、職業上の団体の経費、弁護士税理士等の資格取得費用が
含まれることになった。
さらに改正前は
実額経費が給与所得控除を超えないと
実額経費としての特定支出控除を認めなかったのが
改正後は給与所得控除額の2分の1(年収1500万円超の場合は125万円)
を実額経費が超える場合はその超える部分の金額を
給与所得控除に加算することが認められるようになった。
この改正は働きながら税理士試験を目指しているような方には
朗報ですが、
ただ年収300万円の場合でも給与所得控除は108万円あり
その半分は54万円なので
税理士講座の受講料を考えると
働きながら3科目くらい勉強しないと特定支出控除は
適用できないですね。
(2)成年扶養控除(被扶養者が23歳~69歳までの扶養控除)(増税)
扶養者の年収が568万円超の場合は控除できない。
ただし、被扶養者が学生、障害者、65歳以上の場合は適用できる。
扶養者の年収が568万円以下の場合は
被扶養者の制限なく扶養控除が認められる。
世帯主にある程度の年収がある場合は
働けるのに働かない人の扶養控除を認めないという
趣旨ですが、同時に現在の就職難も
なんとかしなければならないですね。
(3)配偶者控除
今回の改正はないが、来年度の税制改正で抜本的に見直す方向。
(4)退職所得控除(増税)
従来の退職所得の計算は
(退職金-退職所得控除)×1/2となっていたが
勤続年数5年以内の法人役員が受ける退職金については
×1/2をしないようになった。
天下りで、短い期間役員をやって
その期間の割には非常に高額な退職金をもらって
いる人を退治するための改正ですね。
2.相続税
(1)基礎控除(増税)
従来の基礎控除は
「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」だったが
改正により
「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と大きく縮小した。
例えば
法定相続人として妻、子2人の場合
従来であれば相続財産が8,000万円以下だと
相続税が課税されなかったのが
改正後は相続財産が4,800万円超あると
相続税の課税対象となってしまう。
今後は
相続税は一部のお金持ちだけかかる税金という
認識を改めなければならないですね。
(2)生命保険金等の非課税枠(増税)
従来は「500万円×法定相続人の数」までは
生命保険金に相続税が課されることがなかったが
改正により
「500万円×法定相続人の数(未成年者、障害者又は生計を一にしていた者に限る)」
と変更されます。
例えば
法定相続人が妻、子2人(成人であり独立しているため生計は別である)
のケースの場合
従来であれば「500万円×3人=1,500万円」までであれば
生命保険金に相続税が課されることはなかったが
改正後はこのケースの場合「500万円×1人=500万円」となり
500万円を超える生命保険金を受けると相続税が課されてしまうようになる。
さきほどの基礎控除額の引き下げもあるため
相続財産にマイホームのない人でも
死亡保険金で仮に5,500万円もらうと
5,500万円-生命保険の非課税500万円=5,000万円
5,000万円-基礎控除額4,800万円=200万円
と相続税の課税所得が出てしまいます。
改正案がそのまま通ると
平成23年4月1日以降の相続から変わるため
平成23年3月31日までの相続と比較して
税額の差がとても大きくなってしまいます。
経過措置等は作らないのか今回の大綱の中には
とくに書いてありませんでした。
(3)税率(増税)
相続税は累進課税であり
従来は最高50%だった税率が最高55%に変更された。
(4)未成年者控除、障害者控除(減税)
従来は「6万円×20歳(障害者控除は85歳)到達までの年数」
で計算していたのが
「10万円×20歳(障害者控除は85歳)到達までの年数」に変更。
(特別障害者については10万円ではなく20万円で計算)
3.贈与税
(1)税率を引き下げ
(2)相続時精算課税制度(生前の贈与と死亡時の相続を一体として計算する方法)
の適用対象となる受贈者に20歳以上の孫が追加
(現在は推定相続人のみ。孫が相続人になるケースは少ない)され
贈与者は60歳以上(現在は65歳以上)に年齢要件を引き下げる。
相続時精算課税制度は通常の方式に比べて
贈与税の負担が軽減されているので要件を緩和し
さらに使いやすくすることで
お金を持っている高齢者世代から
若年層への資産の移転を活発にして
景気を向上させようとするねらいですね。
4.国税通則法
(1)税務調査手続きの明確化
①税務調査の前に日時、調査の目的等を
文書で納税者や税理士等に通知することを原則とする。
②税務調査後にも納税者への調査結果の説明責任を強化するため
調査結果を文書で交付するようにする。
その文書には内容、金額、理由とともに
修正申告等を行った場合はその後不服申立てができないことを記載。
調査内容について修正申告等がされた場合にも
調査が終了した旨の文書を交付する。
以前は、調査の連絡は電話がかかってくるだけで
調査結果も口頭で説明があるだけでしたが
これからは文書の交付をするようになるようです。
(2)更正の請求
①更正の請求とは
申告後に過大に税額を申告していたことに気付き
納税者が税務署長に還付の請求をすることなどをいう。
この更正の請求の期限が
現行1年間しか認められていなかったが
今回の改正により
更正の請求期限が5年に延長されることになった。
ただしこれと併せて
課税庁が増額更正できる期限も
3年から5年に延長されることとなる。
②従来
申告要件のあるものは更正の請求の対象とならなかったが
一部のものについて(法人税だと受取配当等、所得税、外国税など)
更正の請求が認められることとなった。
あと当初申告の際の記載額に
適用金額が制限される旨の取扱いも緩和されることになったため
計算間違い等で正しい金額よりも少ない金額を記載して申告をしていても
更正の請求により、正しい金額まで修正することができるようになった。
今回の改正は
結構、盛りだくさんの内容です。
気にしている方が少ない割に実際大きな影響を与えそうなのが
「相続税の基礎控除額の引き下げ」です。
これにより「相続税なんて一部のお金持ちしか関係ない」では済まなくなり
多くの人が相続税を意識しなければならなくなります。
相続税も事前に手を打つかどうかで税額が結構変わってきますので
相続対策のニーズは増えていきそうですね。
国税通則法の改正は
税理士の立場から見て
非常に評価できる内容です。
来年度以降に
今回着手していない配偶者控除の廃止について改正が予定されています。
配偶者控除については
健康保険の扶養や国民年金の第3号被保険者と一体的に考えないと意味がないので
どのような形でまとめていくのか非常に注目しています。
本当はすぐにでもやらなければならない
消費税の引き上げについては、まだまだ時間がかかりそうですね。