スプラウト 会計のはなし、日々のはなし

名古屋市千種区の税理士法人スプラウトの税理士/社労士/CFP®が綴る日々の様々なこと。

外交員の特殊性

2012-09-27 18:04:10 | Weblog
先日、生命保険会社に
勤める方の数字を見る機会がありました。

給与明細を見ると
何となく違和感が・・・。

支給額から
雇用保険、健康保険、厚生年金が
天引きされているのですが

給与ではなく事業所得として
10%所得税が源泉徴収されていました。

個人事業主なのに
雇用保険等の社会保険が
天引きされている?

これは
雇用契約なのか?
委任契約なのか?



税務上基本的には
雇用契約であれば給与所得で
委任契約であれば事業所得になるのですが

所得税法基本通達で

外交員等が保険会社から受ける報酬について
固定給と歩合給が明らかに区分されているときは
1)固定給部分・・・給与所得
2)歩合給部分・・・事業所得
として取扱うことになっています。


聞いてみるとその方は
完全歩合制とのことですので
受けた金額はすべて事業所得となるわけです。

ということは
確定申告をしなければならないのですが

保険の外交員の場合
「家内労働者等の必要経費の特例」という
最大65万円をみなし経費として控除
できるという特例が置かれています。

さらに
実際にかかった経費が65万円を超える場合は
その超える分を経費として控除することもできます。


そしてもう一つ

青色申告の承認を受けて
帳簿をきちんとつけたうえで申告すると
最大65万円の「青色申告特別控除」が
受けられますが

家内労働者の必要経費の特例と
青色申告特別控除は
両方同時に使うことができるのでしょうか?


答えは「できる」です。

よって
実際の経費が全くない方でも
65万円+65万円=130万円を
所得から控除することが可能となります。

大変お得ですね。


ただし、家内労働者の必要経費の特例の65万円は
給与所得につき給与所得控除として使った分が
あると、その分だけ65万円から差し引かれてしまうので
ご注意ください。


あと
労働保険や社会保険の方で
外交員を労働者としてみるのかどうかは

原則として雇用契約か委任契約かで
判断します。

雇用契約を結んでいるのであれば
雇用保険や
健康保険、厚生年金に
加入することもできるわけです。

ということで
保険外交員については
例外的な措置がいろいろと置かれていますね。



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刀でなく算盤で戦う

2012-09-19 19:28:26 | Weblog
税理士のように
最後に「士」の字が
つく仕事を
「サムライ業」と言ったりしますが

江戸時代にも
侍なのに毎日そろばんをはじくことが
仕事の人がいたようです。


先日ツタヤで
「武士の家計簿」を
借りました。

キャッチコピーは
「刀でなくそろばんで家族を守った侍がいた」です。

主人公の
猪山直之は
江戸時代に
御算用者(ごさんようもの)という
そろばんをはじき
数字の帳尻を合わせる

今でいう公認会計士や税理士のような
仕事をしていました。


帳面とにらめっこし
そろばんをひたすらはじく
毎日です。

直之は
数字がどうしても合わない部分があることを
きっかけに役人の不正を暴き
出世しますが

出世により身分があがると
出費もかさみ
父の借金もあって
猪山家の家計は
火の車になります。

そこで直之は
猪山家の家計の立て直しに
着手します。

直之の立派なところは
体面を気にする当時の武家社会の中で

世間の目は気にせずに
売れそうな家財道具を売り払い
毎日の生活も質素倹約し
家計簿で家計の管理をし
何とか家計を建て直していきました。

毎日の倹約生活は
周囲から見ると大変そうですが
本人は
「貧乏と思うと暗くなるが、工夫していると思えば・・・」
と前向きに取り組んでいきます。


私が不思議に思ったのは
出世して
しかも両親と2世帯同居で
父親と自分の稼ぎのダブルインカムのはずなのに

どうしてそんなに家計が厳しくなるんだろう
というところですが

江戸時代の武士の事情と言うのがあるようで

出世すると

家来や使用人を一定の人数雇わなければならない、とか
藩からもらった屋敷の維持費用とか
親戚や同僚との交際費、子供の通過儀礼を開く費用など
結構お金がかかるようです。


私も数ヶ月前から
スマートフォンで家計簿を
つけていますが

特に無駄遣いはしていなくても
生きているとそれだけで
毎日毎日いろいろとお金がかかるもんですね。

というように
お金の流れが見えるというのは
個人の生活においても
会社経営においても
大事なことだと再認識しました。




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「見る力」と「作る力」と「活かす力」

2012-09-10 18:03:46 | Weblog
メルマガのお勧め本コーナーで
紹介するため
数字は見るな!3つの図形でわかる決算書超入門(田中靖浩著)」
を読みました。

その中に
数字に強いと一口に言っても
数字を「作る」のと「見る」のと「活かす」のは
全く別の能力だということが書いてありました。


経理の仕事に就く人は
「作る」能力に
長けている必要があります。

でも、経理の仕事でない人にとっては
「作る力」よりも
数字を「見る力」と、数字を「活かす力」を
高めることが、自身のビジネスに役立ちます。

なのに、経理の仕事ではない人が
数字に強くなるために
簿記検定を受けるというのは
よくあるわけで・・・、
これは方向性として少しずれているわけです。

簿記検定の勉強をすると
数字を「作る力」は身につきますが
「見る力」や「活かす力」は
得られません。


簿記の勉強をすれば
決算書を見ることができるようになる
という反論もありそうですが

ここでいう「見る力」というのは
「数字を活かす」につながるような
見方ができるかどうかということです。

どこに何が書いてあるかわかるという
ことではありません。


一般的には結構
数字に強いというのを一括りにして
しまっていることが多いと思います。

普段仕事で数字に関わっている人が
「見る」「作る」「活かす」
全ての面で長けているわけではありません。

その持っている能力に応じて
仕事を頼まないとミスマッチになってしまいます。


例えば「銀行OB」や「税務署OB」の人たちは
数字を見ることは得意ですが
数字を作ることはできないことが多いです。
(自分で勉強した人は別として)

これをわかっていないばっかりに
中小企業が「銀行OB」を数字に強いだろうということで
経理の実務スタッフとして採用し、
失敗するケースが多いみたいですね。


では、中小企業が経理のスタッフを
採用する場合には、
一体どういった人材が適しているんでしょうか?

答えは「会計事務所の職員」です。

会計事務所の職員は
日常の会計処理から決算書の作成
給与計算、申告書作成

場合によっては社会保険関係の手続き事務に
精通していますので
経理の即戦力としてはもってこいの人材です。

ただし、
そんな優秀なスタッフを
自社の社員にするのは毎月少なくとも20万円以上は
かかってしまいます。

中小企業としては
管理部門にそれほどお金をかける余裕は
なかなかないですよね。

でも、大丈夫。

会計事務所に全てアウトソーシングすれば
もっと安い費用で優秀なスタッフのサービスを
受けることができるんです。
(ちょっと宣伝になっていますね・・・)


私が税理士として実務で行うのは
「作る」や「見る」が中心で
「活かす」のはお客様である経営者の方々です。

税理士としては
作った数字をお客様にいろいろな角度で見てもらい
様々な意思決定に活かしてもらうのが
役割だと考えています。

会計数字は経営に活かしてこそ意味があります。



税理士 名古屋/名古屋の税理士法人スプラウト







天才とはこの人のこと

2012-09-05 18:07:15 | Weblog
この間、文庫で出ていた
経済ってそういうことだったのか会議
を買いました。

もう10年以上前に出た本で
発売当初にハードカバーの本を
一冊買っていたのですが
どこかへ行ってしまって・・・。

本屋で見つけてまた読みたくなり
もう一度買ってしまいました。

この本は
経済に関しては素人である佐藤雅彦氏が
経済の専門家の竹中平蔵氏に
素朴ですが非常に鋭い質問をし

それを竹中氏が分かりやすく説明するという
読んでいてとても楽しい本です。


佐藤氏の少年時代のエピソードが
本の最初に登場します。

佐藤氏は小学生の頃
牛乳瓶のふたを集めていたら
クラスのみんなが真似して集め出し
学校中で流行することになります。

古いふた何枚かと新しいふたを
交換したりとか

珍しいふたは価値が出たりとか

たかが牛乳のふたなのに
みんなの意識の中で
「牛乳のふたには価値がある」という
信頼関係ができた結果
ブームが過熱していきます。

ある日
知り合いに牛乳屋さんがいる子が
袋一杯の
牛乳瓶のふたを持ってきてから

みんなの牛乳瓶のふた熱が
次第に覚めていき
誰も集めなくなってしまいます。

最終的に牛乳のふたの価値が暴落し
ただの牛乳のふたになってしまいました。

このエピソードを導入として
経済の素人と専門家の間の
対話が始まっていくという部分が
特に素晴らしいなー、と感じました。



この本に登場する佐藤氏は

静岡県出身で東大卒業後
電通に入社し

CM制作の仕事で
数多くの評価を得ました。
(CMをやめてからも「だんご三兄弟」や
「ピタゴラスイッチ」など大活躍です)

「バザールでござーる」
「コイケヤのスコーン」
など、思わず見てしまう
素晴らしいCMをたくさん
作っていました。

佐藤氏が部署の異動希望を出し
CM制作を始めたのは
30歳を過ぎてからと結構遅く
最初は仕事が全然なかったそうです。

ただ、暇な時間を使って
過去のいろいろなCMを見て
気になったCMをピックアップし
なぜ気になったのかを検証し
CM制作の法則を独自に確立しました。

例えば
「ドキュメントリップシンクロ」。

これは
CMをスタジオで撮影せず
ドキュメント風で撮影し

CMのキャッチコピーはナレーションではなく
人の口から直接発せられた方が
効果的に伝えることができるというものです。

その他
「濁音」も言葉としての強さがあるので
意識的に使っていたようです。

「バザールでござーる」などはその典型ですね。


私が佐藤氏のCMの中で一番好きなのが
コイケヤの「ジャガッツ」です。

このCMは

二人の主婦が
「コイケヤのジャガッツはこのギザギザがおいしい」
と話しているところから始まります。

すると横から
「この男です!」という刑事の声が聞こえます。

実は二人の主婦は刑事が犯人を見つけるために
見ていたビデオの中の人たちで
その主婦たちの後ろに小さく犯人と思われる
人物が映っていたのです。

刑事は
「もう一度見てみましょう」
といって

また
二人の主婦が
「コイケヤのジャガッツはこのギザギザがおいしい」
と言っている場面が繰り返されます。


本来は
ビデオに映っている二人の主婦は
完全に脇役で

刑事とビデオに小さく映っている犯人が
主役なのですが

結果としてCMを見ている人は
「コイケヤのジャガッツはこのギザギザがおいしい」
という発言を何回も聞くことになるわけです。


佐藤雅彦全仕事(マドラ出版)」によると

依頼主のコイケヤから、CM制作にあたり
「コイケヤのジャガッツはこのギザギザがおいしい」
という特徴を入れてほしいという要望があり

何度かつぶやいていたら
突然佐藤氏の頭の中で「この男です」という
声が聞こえ

どういうことか頭の中を巻き戻して
もう一度考えた結果、
このCMの構成が出来上がったそうです。


あと、若いころに
まだ流行する前で売れ残っていたルービックキューブを
何となく買うことになり
カシャカシャいじっていたら
突然頭に6面揃える方法のイメージが
ひらめいたそうで
10分で解いてしまったようです。


天才というのはこういう人のことを
言うんですね。




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