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桜と絵本と豆乳と

罪を共有したいという愛

2014年09月24日 | 読書
 「2014読了」99冊目★★

 『Nのために』(湊かなえ 双葉文庫)


 「イヤミス」の女王と称される作者だが,今回はちょっとだけ毛色が違っている。
 カバーにあった純愛ミステリーという形容が確かに似合っている内容だ。
 ただ章ごとに視点を変えていく手法はいつものごとくであり,読ませ方は本当に上手だ。

 雑誌インタビューに応えて,作者はこう語ったと紹介されていた。

 「『Nのために』は,立体パズルを作りたいな,と思ったんです。登場人物たちは,最後まで誰が嘘をついているか分からない。」

 ミステリそのものがパズル的要素と言えるので珍しくはないだろうが,確かに入り組んでいる印象があった。
 それにしても考えてみると,これは現実にある事件,いや事件でなくともちょっとした出来事でも十分にありえることだ。
 一つの事実には,そこに関わった人たちそれぞれに個別の真実,事情があり,それらの組み合わさることで成り立つような…。
 だから個々の視点でみれば,かなり風景が違ったものになることは,例えば「授業」という場でも同じではないか…などと,またあらぬ方向に話が飛びそうだ。


 超高層マンションで発見されたある夫婦の変死体。
 そこに到るまでの,登場人物である複数のNに向けたそれぞれの「愛」が,様々な言動を伴って表現されている。

 「愛とは罪の共有」という言葉が語られる。それはドラマの中でインパクトの強い台詞でもあり,この小説の底流になっている考えだ。
 きっとそれは,湊の他の小説にも表現されていたのではないか。


 さて,得意パターンとなっている文庫発刊に合わせたテレビドラマ化。いつものごとくこちらでは即は見られない(泣)TBS系であるようだ。調べたら番組ページももうある

 残念なことは,主人公の杉下希美が予想した配役ではなかったこと。もちろん勝手なイメージだが,これは満島ひかりにやってほしかった。
 呆れたのは,「NHK朝ドラ配役」パターンから抜け出せないことだ。悪くはない男優たちだが,ちょっと続きすぎていますよTBSさん,と言いたい気がする。
 地元局での再放送は期待していますが…。

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