「2014読了」56冊目 ★★
『エコラム』(リリー・フランキー 新潮文庫)
この文庫は昔からのリリーファンでないと読まないだろうなあ、と思う。
その昔、私はマガジンハウスの『ダ・カーポ』誌で、リリーの存在を知りそのセンスや文体が好きになった。
ここに収められているエッセイは『ポパイ』誌での連載のようだが、『ダ・カーポ』のそれに比べると、下ネタ度がずっと濃い。
どの程度かと云うと、ざっと内容の8割は下ネタ。残りの1割がそれ以外の身辺雑記で、もう1割がそれらを包括するようなまともな表現だ(といっても、まったく個人的な印象だが)。
しかもその最後の1割は、他の箇所を読む根性がないと読みとれない。これが結構つらかった。
リリー自身も書いているように、とにかく厚い(554ページある)。
さすがの私であっても、途中からはあまりの無意味さに流し読みのようになってしまった。
しかし、それと同時に、これだけ延々と書き続けるリリーの「力」がだんだんと浮かび上がってくる気もした。
文句なく「想像力」。これは「妄想力」とほぼ同義か。
さらに「観察力」。ディテールを取り上げるセンスと言ったらいいのか。
まあ、それらは作家としての基本的な条件かもしれない。
さらに感じるのは、「仮説力」ということか。
このエッセイにはいくつか、冒頭にインパクトの強い仮説が提示されることがある。
例えば、これらだ。
男には生まれながらにして、収集癖がある。いや、生まれる前からすでにコレクターであると言ってよい。
頭で考えているうちは何も起こりはしないが、運命はいつの時も突然である。
ひとつの道具で人は変わる。
こうした「仮説」に対する実証が、下ネタ満載で語られて、どうだと示されるが、実際はあまり説得力がなかったりする。
それは結局のところ、作者の特殊性に読者がついていけなくなってしまうからだ。
本文中にある言葉で表してみると「境界線」ということばに象徴される。
「生きていくうえで何とも判断しがたい境界線」…これを、法律や世間様に決めてもらい、それで良しとする生き方も当然あろうが、リリーは違う。
この境界線を自分の手で持ち、自由に動かして遊んでいる。
その位置をまったく遠いと感じる人は多いだろう。
仮にそこを比較的近いと感じる人がいたとしても、結局のところは境界線のこちら側なのである。
それを越える勇気(別名では狂気)は、もてない人が圧倒的だ。むろん自分もその一人である。
境界線をぷらぷらさせながら、リリーの薄笑いが見えそうである。
『エコラム』(リリー・フランキー 新潮文庫)
この文庫は昔からのリリーファンでないと読まないだろうなあ、と思う。
その昔、私はマガジンハウスの『ダ・カーポ』誌で、リリーの存在を知りそのセンスや文体が好きになった。
ここに収められているエッセイは『ポパイ』誌での連載のようだが、『ダ・カーポ』のそれに比べると、下ネタ度がずっと濃い。
どの程度かと云うと、ざっと内容の8割は下ネタ。残りの1割がそれ以外の身辺雑記で、もう1割がそれらを包括するようなまともな表現だ(といっても、まったく個人的な印象だが)。
しかもその最後の1割は、他の箇所を読む根性がないと読みとれない。これが結構つらかった。
リリー自身も書いているように、とにかく厚い(554ページある)。
さすがの私であっても、途中からはあまりの無意味さに流し読みのようになってしまった。
しかし、それと同時に、これだけ延々と書き続けるリリーの「力」がだんだんと浮かび上がってくる気もした。
文句なく「想像力」。これは「妄想力」とほぼ同義か。
さらに「観察力」。ディテールを取り上げるセンスと言ったらいいのか。
まあ、それらは作家としての基本的な条件かもしれない。
さらに感じるのは、「仮説力」ということか。
このエッセイにはいくつか、冒頭にインパクトの強い仮説が提示されることがある。
例えば、これらだ。
男には生まれながらにして、収集癖がある。いや、生まれる前からすでにコレクターであると言ってよい。
頭で考えているうちは何も起こりはしないが、運命はいつの時も突然である。
ひとつの道具で人は変わる。
こうした「仮説」に対する実証が、下ネタ満載で語られて、どうだと示されるが、実際はあまり説得力がなかったりする。
それは結局のところ、作者の特殊性に読者がついていけなくなってしまうからだ。
本文中にある言葉で表してみると「境界線」ということばに象徴される。
「生きていくうえで何とも判断しがたい境界線」…これを、法律や世間様に決めてもらい、それで良しとする生き方も当然あろうが、リリーは違う。
この境界線を自分の手で持ち、自由に動かして遊んでいる。
その位置をまったく遠いと感じる人は多いだろう。
仮にそこを比較的近いと感じる人がいたとしても、結局のところは境界線のこちら側なのである。
それを越える勇気(別名では狂気)は、もてない人が圧倒的だ。むろん自分もその一人である。
境界線をぷらぷらさせながら、リリーの薄笑いが見えそうである。
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