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「お疲れ様」は疲れない

2013年09月26日 | 雑記帳
 「お疲れ様」がすでに挨拶用語になっていることは知っていた。愚娘らも小生意気に「お疲れ!」などと声をかけている姿がある。社会人だけでなく学生などにも浸透しているらしい。この前、校内でもそんな声をかけられたが、慣れないのでこちらが面くらってしまう。まだ昼下がりだし、第一疲れていないから。


 職場での「お疲れ様」と「ご苦労様」の区別はかなり以前から言われていた。目上と目下で使い分けるとされている。しかし、それでいいのかというちょっとしたひっかかりもあった。木田章義(京大教授)という方の文章を読み、その訳がわかった。「お疲れ様」は表現が入れ替わる過程にあるらしい言葉のようだ。


 もともとは、旅館などで女将や女中が旅人に対して「お疲れ様」と発していたという。つまりは長旅の慰労の言葉である。それから慰労全般を指し、その場の慰労へとだんだん軽くなったようだ。これに対して「ご苦労様」は骨折りや心労に対しての感謝の言葉として使用されてきた。江戸時代末頃からの敬語なのだ。


 木田氏の言では「敬語は使ううちに敬意が下がってくるのが原則」らしい。敬意が下がり目上の人に用いにくくなってきて、それに替わる表現として「お疲れ様」の台頭である。しかし比較すれば「お役目、ご苦労様です」が自然なのに「お役目、お疲れ様です」には違和感がある。「お疲れ」はやはり軽いのである。


 「お疲れ様」は自分とあまり関わらない行動についても使える。「苦労」は何らかの形で自分も関係しており、「ご苦労様」はそれに対するねぎらいの性質を持つ。共に慰労には違いないがニュアンスに差があり、微妙な関係性を要求する「ご苦労様」は誤解を生みやすいだろう。「お疲れ様」は疲れない、が結論だ。

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