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桜と絵本と豆乳と

実は大人に贈りたい

2015年08月27日 | 読書
 【2015読了】85冊目 ★★
 『先生たちがえらんだ 子どもに贈りたい120の言葉』(佐々木勝男  民衆社)

 知っていた言葉は1割にも満たなかった。本当に、この世は言葉であふれている。学校に入っている間に、誰にどんな言葉をかけられるかは、子どもたちにとってとても重要だし、教員としてそのストックが多いことは一つの財産である。そうした読書体験が自ら紡ぐ言葉かけに通ずるのではないか。そんな気がする。


 例えば、いじめ問題に悩む中学生に対して、具体的な対応とともに、どこかでこんな言葉があれば、小さな支えにはなるのではないか。

 あなたにとって/苦手な人や/やっかいな問題は/あなたの中に/愛という作品を/創るための/かけがえのない/材料です/大切にしましょう
 (葉 祥明)


 そうした悩む子どもを持つ親には、この言葉を贈りたいし、一番身近にいて、一番実行しなければならないのは何かを考えてほしい。

 家庭とは、ほんとうに私たちが安心して失敗することのできる場所。失敗しても、それで迷惑をかけた相手に憎まれないというか、その上であらためてお互いに和解し合うことのできる場所。その基本的なモデルです。
 (大江健三郎)


 教育の場にいる私たちもまた、閉塞感のある現実からどこか逃げたいような気持にとらわれることがある。だから何かに特化して励んでみたり、思考停止に近い状態で日常の仕事をこなしたり…。人間相手にすることが一番めんどうであることを忘れがちだ。わかっちゃいるが、と言ってはいけない真実はこの言葉だ。

 人間的に値打ちのあるものは、めんどうくさいこと。 (山田洋次)


 少し目を広げて締め括ってみよう。この夏は「戦後70年」の話題が多かったが、そういう節目に臨む私たちの基本的な態度は、30年前、1985年に当時の西ドイツの大統領が行った演説の中にあった。同じ敗戦国として、日本はどうなのか。まずは先頭に立つ我が国の宰相に、勝手ながらこの言葉を贈ってみよう。

 過去に目を閉ざすものは、結局のところ現在にも盲目となります。 (ヴァイツゼッカ―)

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