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桜と絵本と豆乳と

醜さに気づくために

2015年06月22日 | 読書
 【2015読了】57冊目 ★★★
 『サファイア』(湊かなえ  ハルキ文庫)

 久しぶりの湊かなえ。書店には未読の文庫本が他にもあったが、字の細かいのは避けて(齢を感じます)、最新のこの一冊を選んだ。
 短編集なのでするっと読める。確かに、湊かなえ色なのだが、短編だと物足りなさを感じてしまうことも確かだ。視点人物の変換などもあるが、短いと少し単純に思えたりもした。

 その点、最後の2編、表題作の「サファイア」と「ガーネット」は連作の形になっており、読み応えを感じたし、布石や仕掛けも感じさせるいい作品だ。
 また「イヤミスの女王」と称される著者自身を意識させる人物を登場させており、興味深い。
 なぜ、著者は人間の暗部に焦点を当て、どうしようもなさを描こうとするのか、その一端にふれた気がする。要はこの一言か。

 「己の醜さに気づきやがれ!」

 あの『告白』を挙げるまでもなく、学校生活の中の情景の描き方には独特の鋭さがある著者である。
 ここでも「ムーンストーン」という短編では際立っている。一人の子の幸福や不幸の引き鉄は、学校生活のいたる所にあるものだなと改めて思った。


 著者と学校との関わりの一つが、先日テレビで放送された。
 日テレの『アナザースカイ』という番組
 トンガ王国を訪れた著者、訪問の理由は、自身が青年海外協力隊としてこの国の学校で教鞭をとったからだという。

 そこからは、当然だろうが「イヤミス」色は感じられなかった。
 かといって関係ないわけではない。
 おそらく、人は思いっきり振れた場での体験をしていないと、逆の地点も的確に見えない。
 その意味で、醜さに気づくためのいい場がトンガだったと仮定してみることもできるのだ。


 やはり長編を読みたいなあ…夏休みが待ち遠しくなってきた。

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