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いつになれば「新」なのか

2020年12月06日 | 雑記帳
 矢口高雄と言えば『釣りキチ三平』と、もちろん知っていたが、釣りに全然興味のない自分には、その他の漫画の方に馴染みがある。特に矢口自身が「№1に好きな作品」という『おらが村』『ふるさと』は書籍整理の際も手放さなかった。図書館展示に合わせて何冊か寄贈を決め、今『新・おらが村』を読み直してみた。

 《展示、開始しました》

 『新・おらが村』は、雑誌『地上』(家の光協会出版)に昭和63年1月から連載が始まり、平成4年4月まで続いているようだ。コミックにして4巻揃っている。昭和が終わり、平成になったあの頃、自分は山間部農村にずっと勤務していたわけで、リアルタイムでこんな事が起こっていたと思い返すばかりだった。



 後継者不足、嫁ききん、村おこし、自然環境破壊そして有害鳥獣駆除…当時抱えていた問題は、それから30年経った今も同じように存在していること、進行が止まらず別の形で顕在化していることと様々だ。いずれにしても都会と地方とのギャップは、日本社会が歩んできた構造的な問題と重なると、しみじみ思う。


 フィリピンからの花嫁を迎えることも展開の一つの柱だった。当時は全国各地で話題になった。自分が住むこの町でも数多くあり目立っていた。全体を括る傾向は軽々しく口に出せないが、その後アジア諸国との関係性に関して理解が進んだのかどうか。技能実習制度問題を見る限り、改善されていないように思える。


 農薬散布用無人ヘリの登場で、この物語は締め括られる。それは農業全体の行方を考えた時にある意味象徴的なことだ。この話の中に他にも将来のヒントになるべきエピソード(食・住・地域)があり、それが今どう推移しているか、いい尺度になるのかもしれない。題名の「新」には、作者の願いが込められていた


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