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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



クラマーさんを訪ねる旅(17)
バイエルン・ミュンヘン 4対1 ヘルタ・ベルリン
2008/8/31 ミュンヘン・アリアンツアリーナ


クラマーさんと別れ、珍しく渋滞のアウトバーンを走り、ミュンヘン市の南西部に位置するガウティングという町のガウティング・ホテルに移動した。思ったより時間がかかったため、荷物を置いて、一服してすぐに、アリアンツアリーナに向かった。

夕方の5時から、バイエルン・ミュンヘン対ヘルタ・ベルリンの試合観戦である。この試合のチケットも、バスの駐車証と一緒に、クラマーさんが用意してくれた。

チケットに値段が書いていないので、きっと招待席なんだろうと推測する。今シーズンのブンデスリーガのチーム・選手名鑑となっているキッカー誌で調べてみると、メインスタンドの真ん中あたりのようだった。おまけに、2列目と表示されている。

そして、いざスタジアムへ。試合開始1時間半ほど前に到着し、VIP入口からスタンドに向かう。案の定、スタジアムの真ん中あたりの階段からピッチに近い席へと下っていき、2列目にたどり着いたら、そこはなんと両チームのベンチのすぐ上の最前列だった。センター付近にはベンチがあるため、1列目がないのである。

「近すぎて見にくいなぁ」と贅沢を言う者あれば、国立競技場の聖火台の下を定位置とするベテランサポーターのTさんは「落ち着かないなぁ」とこぼしながら、みな、クラマーさんの完璧な準備に感謝した。

試合前、ぼくらの前には、つまり両チームのベンチの上には、選手のサインをもらおうとする子どもたちが群がっていた。なかには、自前の派手なプラカードで、「あなたのユニフォームをちょうだい!」とおねだりする少女もいた(写真)。

「試合前の選手が、こんなところで、サインをしてくれるのだろうか?」と思って見ていると、ウォーミングアップを終えた選手が、ロッカーに戻るときにサラサラッと、試合直前には、先にベンチに入る控えの選手や、なんとクリンスマン監督までもが、ベンチの屋根の上で、サインをするではないか。全員にサインできるわけでもないので、ファンサービスのデモンストレーションと見えなくもないが、ここまでするかと驚く。

控えの選手やクリンスマン監督が、何人かにサインをしてベンチに座ってしまうと、サインをもらえた子どもはもちろん、もらえなかった子どもたちもあきらめよく、スーッと自分の席に戻っていく。このあたりの、あ・うんの呼吸は、なんとも見事だった。

クラマーさんが用意してくれた特等席でなければ気がつかないドイツのサッカー・シーンがあった。



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クラマーさんを訪ねる旅(16)


8月31日、3日間滞在した、ライト・イム・ウィンクルを出発する日だ。

ミュンヘン市内を観光するために、朝早くホテルを出発した仲間を見送った後、散歩に出ると、小学生くらいの女の子と先生が乗った馬の隊列にでくわした。パッカ、パッカと小気味よいひづめの音が静かな町に響き渡る。

朝、比較的余裕のあるこの旅行では、ぼくは朝食の前に必ず散歩するようにした。

デュイスブルクでは、ピシッ!ピシッ!という、ドングリが爆ぜる音や近くの湖にいる鴨(?)の鳴き声を聞きながらスポーツシューレの森の中を歩いた。ここライト・イム・ウィンクルでは、昨日までは、壮大なチロルの山々を見ながら、静かな澄んだ空気を満喫し、最後の朝は、ひづめの音と少女の「グーテン・モルゲン!」という声で心と体が目覚めることとなった。

出発の11時少し前に、クラマーさんがクルマでやってきた。残っていた者と一緒に、ホテルをバックに記念撮影をする。そして、昨晩のパーティの場で、渡し損ねた中条さんの著書を贈呈する。一人一人としっかり握手をしながら、「さよなら」と日本語で言ってくれるクラマーさんに対して、ぼくらは、心からの「ダンケ・シェン!」でお返しをした。

バスが走りだした後も、クラマーさんはずっと見送ってくれていた。これで、クラマーさんとは、しばしのお別れである。なぜ、しばしの別れなのか?

実は、クラマーさんは、来月10月の中旬に、埼玉サッカー100周年のイベントで、来日する予定なのである。


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