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みずみずしい感覚―小林欣子展

2009-07-11 00:04:00 | 美術
 小林欣子(きんこ)さんの展覧会(2009年6月20日~7月12日)を三木市立堀光美術館へ見にいってきました。
 女性の肖像をとてもみずみずしい感覚で描く画家です。
 こんなにすがすがしい光にあふれた女性像の作品は、昨今、あまり見られなくなりました。

 堀光美術館というのは大都会の美術館のような大きな建物ではありませんが、戦国の歴史を彩った三木城の城あとの小高い丘にあって、都会の施設にはない時間の厚みを感じさせます。
 三木城は豊臣秀吉の残酷な兵糧攻めで攻略され、のち江戸時代に廃城となった悲劇の城の一つです。
 往時をしのばせるものといえば、本丸あとに残された暗くて深い井戸ひとつですが、その寂しさがいっそう悲劇の奥行きを感じさせてくれるのです。

 さて、100号から130号の大作11点を含む34点の作品はなかなか見ごたえがありました。
 小林さんの作品の魅力はなんといっても、そこに登場する女性たちのみずみずしさです。
 彼女たちはしばしば海のイメージに重ねて描かれるのですが、海の広大さ、晴朗さ、奥深さ、豊かさがその姿と照らし合って、見る者の心を一種の浄化へといざないます。

 花の絵もまた、大きなインパクトをもつ作品です。
 ミモザやカラーやアマリリス、アジサイなどがモチーフに採られていますが、どれも鋭い感覚でとらえられ、きりっと屹立しているのです。

 具象画の地道な努力は、派手な抽象画やイラストふうの流行画の洪水のなかに呑み込まれてしまうんじゃないかと、そんな危惧(きぐ)さえおぼえる今日の状況ですが、小林さんの肖像や花には具象の王道を毅然(きぜん)と進む力と心が感じられます。

 なお、これまでの小林さんの個展については、本ブログの姉妹編「Splitterecho」Web版のCahierにも記事があります。
 同Web版は http://www16.ocn.ne.jp/~kobecat

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