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クラリネットとサクソフォンによるWinter Concert/滋賀県立芸術劇場「びわ湖ホール(小ホール)」

2007-01-13 00:41:05 | 音楽
まだ荒削りだが未来を予感させる
新進気鋭の演奏家の演奏は
当然多少の不満はあるものの、
なかなか収穫多い音楽会だった。

クラリネット・八段(はったん)悠子と
サクソフォン・千葉雅世が
クラシックからミュージカルナンバーまでをプログラミング。
クラシック専門ながら若い感覚の息吹も伝わる
考えられたプログラムだ。

八段と千葉は対照的な演奏家だ。
八段は堅固な基本技能に裏付けられた端正な演奏、
千葉は歌心にたけた感性にしみ入る演奏。

しかしソロではそうだが、
アンサンブルとなると、
シングルリード系木管楽器が持つ
特有の音が重なり合って豊穣な響きが劇場に鳴り渡る。
それはムソルグスキー『展覧会の絵』の「キエフの大門」で
頂点に達した。
クラリネットとサクソフォンと
ピアノから放たれる堂々たる音響。

今まで八段と千葉のことばかり書いたが
ピアノも特筆に値する。
池田弥生のカッチーニ「アウ゛ェ・マリア」での
千葉とのデュオでは繊細な音色が楽しめた。
もう一人のピアノ・仲香織もよく健闘。
加えてベーゼンドルファー社のピアノが
穏やかで落ち着いた柔らかな音であったことも
演奏に素晴らしい華を持たせた。


八段の
サン=サーンス「クラリネットとピアノのためのソナタ」は、
ケアレスミスはあったが、
全体に安定したブレス・コントロールと
それに裏付けられたフィンガリングや
タンギングの技術は非常に良かった。
また低音域の響きが非常に豊かで、
それは安定した高音域、
ムラのない低音域から高音域への
美しいスケールへも当然派生していた。

千葉の
『展覧会の絵』の「プロムナード」のアルト・サクソフォン、
「古城」のバリトン・サクソフォンのソロは
タンギングの不具合などはあったものの、
千葉の魅力を非常に表出した演奏。
また千葉の歌心ある表現は、
ややモダンな旋律に向いている感覚を
持ったのは私だけだろうか?

同じ滋賀県立石山高等学校音楽科出身の二人の息は
テクニックではなく、
信頼と友情で心よく合っていた。
それは『展覧会の絵』の「殻をつけた雛鳥の踊り」での
千葉の可愛らしいぬいぐるみを使ったパフォーマンス、
アンコールのポケット・サクソフォンのデュオによる
ご愛敬の演奏、
そして最後の寺嶋民哉『ゲド戦記・テルーの唄』の
温かさに顕著ににじみ出ていた
(この曲を一瞬、海援隊「思えば遠くへ来たもんだ」かと
思ったのは私だけだろうか(笑))。

まだまだ演奏家としての課題は山積みな八段と千葉だが、
これを契機により高い次元での勉強と演奏活動を
期待したく、また期待させる音楽会だった。


【データ】
2007年1月13日(土)18:30開演
滋賀県立芸術劇場「びわ湖ホール(小ホール)」

[プログラム]
○W.Aモーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』より
        「恋とはどんなものかしら」
 クラリネット+サクソフォン
○C.サン=サーンス:クラリネットとピアノのためのソナタ
 クラリネット+ピアノ
○P.ボノー:カプリス
 無伴奏テナー・サクソフォン
  (休憩)
○A.ロイド・ウェーバー:『オペラ座の怪人』より
 「THE PHANTOM OF THE OPERA」
 「THE MUSIC OF THE NIGHT」
 「ALL I ASK YOU」
 「MASQUERADE」
 クラリネット+サクソフォン+ピアノ
○E.ジョン:『ライオンキング』より
 「愛を感じて」
 クラリネット+ピアノ
○G.カッチーニ:アヴェ・マリア
 アルト・サクソフォン+ピアノ
○M.ムソルグスキー(長生淳編):『展覧会の絵』より
 「プロムナード」
 「こびと」
 「古城」
 「テュイルリー(遊んだ後の口げんが」
 「ビドロ」
 「殻をつけた雛鳥の踊り」 
 「キエフの大門」
 クラリネット+アルト・サクソフォン/バリトン・サクソフォン
 +ピアノ
 
(アンコール)
○エーデルワイス
 ポケット・サクソフォンのデュオ
○寺嶋民哉:映画『ゲド戦記』より「テルーの唄」
 クラリネット+アルト・サクソフォン

[出演者紹介]
■千葉雅世(サクソフォーン)
 滋賀県立石山高校音楽科→大阪音大卒
 第9回KOBE国際学生コンクール優秀賞
 陣内亜紀子、篠原康浩、小村由美子各氏に師事
■八段(はったん)悠子(クラリネット)
 滋賀県立石山高校音楽科→京都市立芸大卒
 音楽学部賞受賞
 第21回日本管打楽器コンクール第1位
 梅田俊明指揮/東京交響楽団と
 モーツァルト「クラリネット協奏曲」共演
 山川すみ男、高橋知己各氏に師事
■池田弥生(ピアノ)
 大阪音大・同専攻科修了
 堺ピアノコンクール奨励賞
 ウィーンにて
 インゴマー・ライナー、アボ・コーユーミジャン氏の
 レッスン受講
 伊藤勝氏に師事
 神戸音楽家協会会員
■仲香織(ピアノ)
 兵庫県立西宮高校音楽科→京都市立芸大・同大学院修了
 第3回堺国際ピアノコンクール一般部門第3位
 第15回京都芸術祭京都市長賞受賞
 2004年ソロリサイタル開催




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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (千葉雅世)
2007-01-14 17:20:49
ぞくぞくしながら目を通させていただきました。課題が山積みとの指摘はおっしゃるとおりでございます♪まだまだやるべきことがあるとともに、そこが見えない楽器、音楽の魅力を改めて感じ入った演奏会でした。信頼と友情は演奏家以前に、人として常に持ち続けたい宝であると思います。御来場、そして正当的な評論、感謝します。
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Unknown (八段)
2007-01-14 19:58:41
ありがとうございます。今回、千葉と共演する事で得ることがたくさんあり、自分にとっていい経験になりました。
まだまだこれからたくさんの音楽を吸収して、いい演奏家になりたいと思います。
返信する
Unknown (ゲンズブール)
2007-01-18 13:35:27
コメントありがとうございます。
これからのご活躍期待しています。
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