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ブログ版 シュプリッターエコー

天国へのマーチ

2006-11-20 08:16:10 | 音楽
音楽をする・聴く全ての方にお勧めの一冊。

西谷尚雄『天国へのマーチ-ブラスバンドの鬼
     得津武史の生涯-』2006年、かんぽう

内容はかつて学校吹奏楽界で頂点を極めた
兵庫県西宮市立西宮今津中学校吹奏楽部と
それを指導した得津武史氏の実話の物語。

ここまで読んで「なんだ、ブラバンもの」と
軽々しく言わないで欲しい、
特にヘビーなクラシック音楽ファンの諸君!!
何故なら今をときめく音楽家の誰もが
始めから上手い訳がない。
音楽に入るきっかけの多くを
中学・高校の吹奏楽部が担っているのだ。

それだけではない。
その吹奏楽部で培われた「こころ」が
プロの音楽家の基礎を作っているのだから。

現に西宮今津中学校吹奏楽部から
多数のプロの音楽家が生まれている。

得津武史氏と西宮今津中学校吹奏楽部の関係は
昭和30年代から50年代までの長きに渡る。
よってその指導法は竹刀より恐ろしい
「精神注入棒」なるものから
生徒の頭を叩いて直ぐに指揮棒が折れてしまうので
「折れない指揮棒?」として氏が愛用した
天ぷら棒(菜箸と思われる)など
今では直ぐに体罰で教育委員会に訴えられそうな
ものや指導法が余すことなく記されている
(ちなみに外国人指揮者が天ぷら棒が指揮棒として
素晴らしいといって大量に買い占めたという話もある)。

でもそこに記されているのは時代錯誤な方法ではない。
音楽にとってもっとも大切な「信頼」である。
生徒とは勿論、保護者、地域の人々
みんなが西宮今津中学校吹奏楽部を支えていた。
これは音楽に限らず各方面に示唆を与えるだろう。

ちなみに作者の西谷氏は広告代理店出身の
フリープロデューサー。
得津氏とは家族ぐるみの付き合いだった
(何故学校の教師と広告代理店の人間が
付き合いがあったかは読んでご確認下さい)。
当初は映画にする予定だったらしいが
財政面で頓挫して書籍としてこの世に出た。

しかし私は本でよかったと思う。
何度も読み返せるなどといったことは勿論だが、
読者の想像力を喚起させて、
様々なことを考えさせてくれるからだ。

最後に改めて、
音楽をする・聴く全ての方にお勧めの一冊である。







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