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高価すぎる国産装備と武器輸出三原則について思う。 その2

2010-07-02 21:27:25 | 戯言

前回の続きです。

 

それでは、数十億円から数百億円の金を払ってまで何故、自衛隊の装備を国産化しなければならないのか?
その理由としてよく挙げられるものを幾つか挙げてみましょう。
①日本の国土、インフラや日本人の体型、そして政治的な条件(専守防衛や日米安保、周辺諸国への配慮、等々)に合致する、最も効率的で質の高い装備を確保するため。
②一朝一夕には手に入れることが出来ない兵器開発技術を維持するため。
③国際関係の変化を考慮して、安定的に装備を調達出来るようにするため。(つまり、輸入兵器に頼っていたのでは、輸入元の国との関係が悪化した場合、装備の供給が出来なくなる)
④三菱重工や富士重工、東芝、日立など、日本の兵器産業を守るため。
しかしながら、これらの理由はいずれも工夫次第でどうにかなるもの、もしくは取るに足らない理由に過ぎないと私は思います。

まず、①について見ていきましょう。
確かに、国産兵器であるならば、日本の地理的な条件、インフラ、日本人の体型にあったものを作ることが出来ます。
そしてこれらの要素は、実際に戦闘が起こった場合、その兵器の優劣を決定する重要な要素となることがあります。
しかしながら、現在自衛隊に装備されている日本の国産兵器がその利点を生かしているかと言えば、必ずしもそうとは言い切れない部分もあるのです。
例えば、90式戦車などはその大きさや車体重量から、北海道以外では使用することが難しいと言われています。
また、90式戦車が装備する120㎜滑腔砲や79式対舟艇対戦車誘導弾・96式多目的誘導弾システム等は、日本国内の演習場では射程等の問題で十分な演習が行えず、アメリカ本土の演習場に持ち込んで訓練を行っているのが現状です。
しかも、自衛隊発足当時はその装備の大部分がアメリカ製の兵器を使用していたという歴史がありますし、日本よりインフラ等が貧弱な発展途上国の国々の大部分がアメリカを初めとする外国製兵器を使用している事を考えると、必ずしも国産兵器を使用しなければ国防が成り立たない、とは考えれません。
つまり、今の日本には割高な国産兵器を導入してもそれを許せる?経済力と財政的な余裕があるという政治的な判断が働いているからこそ、自衛隊の装備に国産兵器が使われていると考えることもできるようです。
②のについては、金輪際、日本で兵器開発を行わず、自衛隊の装備は全て輸入するという政治的な判断を政府が行えば兵器を開発する技術(これには凄くお金がかかる)を維持する必要は無いわけですから問題なく解決する事です。
③についても全く問題になりません。日本が、第二次世界大戦の時のように世界中の国々を相手に戦争を始めない限り、日本が兵器の輸入に困る事は有り得ません。現に、北朝鮮やイランなど、国連からも睨まれているようなかなり危険な国家に対してでさえ、兵器を輸出している国があるわけですから。。。
④については論じる必要さえ無いと思います。日本が資本主義経済体制である限りにおいて、特定の企業に対して国が特別な配慮を行う事自体おかしな事ですし、兵器の国産化を諦めるならば防衛産業を国が保護する必要も無いはずです。

このように、日本が自衛隊の装備を国産化、もしくはライセンス生産しなければならない絶対的な理由は何処にも存在しないのです。
それならば、800兆円を抱える累積債務を抱える我が国としては、その天文学的な累積債務を少しでも減らすためにも自衛隊の装備を今すぐにでも輸入兵器に切り替えるべきではないでしょうか?
つまり、今の日本の経済・財政状態を考えるならば、自衛隊の装備もベストなもので揃えるのではなく、ベターなレヴェルで我慢する必要があるのではないか、ということを申し上げたいのです。

 

さて、話は変りますが、先程、兵器を自前で開発、生産している国々では、自国の防衛費を少しでも削減するために兵器の輸出に力を入れているということを申し上げました。
ところが、それらの国々が兵器の輸出に力を入れているもう一つの理由があるのです。・・・というか、本当はこちらの方が主たる理由なんですが。。。
そのもう一つの理由とは、武器の輸出は非常に美味しいビジネスなんです。
通常の工業製品とは比較にならないほど高価な兵器を、まとまった数、輸出できる武器産業は非常に儲かる商売なのです。
しかも、ある国に兵器を輸出する事に成功すれば、その兵器を輸入した国は、まるで薬物中毒者のように、その国の兵器を継続的に購入しなければならなくなるのです。
このことについても説明しましょう。

兵器を適正に運用するためには、様々な周辺機器、インフラ、そして兵器を操作する人間の訓練が必要になります。そして、それらを整えるためには莫大なお金と時間が必要になります。
少し具体的に話を進めてみましょう。仮にA国が、アメリカからF-16戦闘機を100機購入したと仮定します。ところがA国空軍は、F-16戦闘機導入以降、航空機の搭載火器や弾薬、燃料、交換部品、滑走路の耐久性などのハードの分野から、整備マニュアル、戦術、パイロットの訓練等のソフトの分野に至るまで、全て、アメリカ軍方式になってしまうのです。
何故なら、そうしないと、ハイテクであるが故に精密機械の塊であるF-16戦闘機は本来の力を発揮する事が出来なくなるからです。こうして莫大な金をつぎ込んでその兵器体系をアメリカ流にしてしまったF-16の輸入国は、次に別の国から戦闘機を輸入しようとすれば、せっかくこれまで築き上げてきたアメリカ流の兵器体系を全て破棄し、莫大なお金と時間をかけて、また一から新しい兵器体系を作り直さなければならなくなります。
従って経済的に余裕の無い国々(特に発展途上国)は、簡単には兵器の輸入先を変えることが出来なくなり、F-16戦闘機の後継機選定の際には、革命など余程の事がない限り、同じアメリカ製の戦闘機を選ばなければならなくなるわけです。
さらに、運良く?破壊と生産の不毛の連鎖である紛争や戦争が始まれば、大量受注の可能性もあります。

 

それでは、なぜ日本はこのように美味しい?ビジネスから手を引いているのでしょう?
日本には1967年に当時の佐藤内閣が決めた“武器輸出三原則”というものがあります。
しかし、多くの国民が勘違いしているようですが、この“武器輸出三原則”は武器の輸出を全面的に禁止するものではありませんでした。
その“武器輸出三原則”とは、①共産圏諸国、②国連決議により武器等の輸出が禁止されている国、③国際紛争の当事国又はそのおそれのある国、への武器の輸出を禁止するというものだったのです。
この内容を見る限り、“武器輸出三原則”が日本の武器輸出を全面的に禁止しているわけではないことは一目瞭然です。
ところが、1976年に三木内閣がこの“武器輸出三原則”に“追加項目”なるものを付け加えました。その“追加項目”の中に、“三原則対象地域以外の地域については憲法及び外国為替法及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする”という項目が含まれており、これにより現在の日本は武器輸出を“慎んでいる”わけです。
しかし、この“追加項目”にしても“慎む”という控えめな表現であり、日本の武器輸出を全面的に禁止しているわけではないのです。
ですから、政府と国民の判断次第では、日本はいつでも武器輸出を始める事が出来るのです。
そもそも、“武器輸出三原則”にしても、その“追加項目”にしても、今から30年以上も前に、時の首相が国会の答弁で述べたものですから、憲法のように強い拘束力を持つものではありません。
それをこれまでの歴代内閣が、野党や進歩的文化人を称する人たち、あるいはマスゴミからの批判を恐れて金科玉条のごとく引き継いで来ただけなのです。

 

日本は今、大変な経済不況の中にあります。“武器輸出三原則”や“追加項目”が打ち出された当時とは日本を取り巻く経済環境は大きく変わっています。
兵器産業は、他の産業と違って“経済の空洞化”が発生しません。兵器という工業製品は機密の塊ですから海外への工場移転ができないからです。
それならば、兵器を生産・販売する企業のみならず、雇用の確保という観点からも兵器産業は願ったり叶ったりの産業分野になるでしょう。
しかも、もし日本が武器輸出解禁に舵を切るのであれば、先に述べた自衛隊の高価に過ぎる国産装備の問題も、輸出による大量生産効果によって自然と解消するはずです。
調達価格が外国製兵器と変わらないのであるならば、先に述べた兵器の国産化の利点をフルに満たす事が出来るわけですから、自衛隊の装備もベターからベストになることでしょう。
30年も前の首相の国会答弁に縛られて、“武器輸出”という選択を恒久的に排除する事が賢明なことなのかどうか?今一度、検討して行く必要があるのではないでしょうか?

(つづく)