2024年10月4日
ジャズドラマー猪俣猛さん逝去
享年88歳
ご本人のご活躍や偉大さはワタシが語るまでもなく周知の事実で
それが音楽家であれば尚更のこと
そして
ワタシも猪俣さんに大変お世話になった一人である
いつかこの『つぶやき............』にも書いたと思うが
このなんてことない1打楽器奏者が
その本により大きすぎる夢を見始めたキッカケになった事を
改めて書き
せっかくいただいたそのキッカケをこれからもちゃんと生かしていかれるよう
自戒を込めたいと思う
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その子が吹奏楽部に所属していた中学生の頃
確か3年生の時だったと思う
音楽の先生が学校を通して音楽室の備品として新しくドラムセットを購入した
もちろん音楽の授業で使うものだがほとんど吹奏楽部でしか使った記憶がない
ヤマハのドラムセット
先生から頼まれて段ボールから出したのはワタシだ
そのドラムセットにはいくつか付属品がついていて
その中に
ドラムセットの選び方から練習パターン,手入れの仕方まで書かれた小冊子があった
ワタシが初めて手にしたドラムセットの教本だった

表紙をめくるとこんな一文が書かれていた

書いたのは『 猪俣猛 』
ドラムセットを叩く人になりたいという夢というには遠すぎる漠然とした淡い思いを持っていたその子は
最後の4行でまんまと心を射抜かれ
勝手な妄想を持ってしまったのでした
もちろん『 猪俣猛 』という名前はこの時初めて知る
どんなドラマーであるかも知らず
知ろうともせず
ただこの言葉だけに舞い上がり
今に至る
ドラムセットを叩くドラマーにならなかったその子は
ある意味のドラマー(打楽器 を叩く職業の人)にはなった
当時のその子にはあまりに大きすぎたその夢は
近づこうとすればその分遠ざかり
知ろうとすればするほど滲んでしまうものだった
最後のページに書かれたその一文の本質は
その時のその子にはわかる由もなかった

自分しか使わないこのドラムセットに付属されたこの小冊子を
卒業の時にこっそり黙って音楽室から持ち出したその子は
大学を出てプロになった数年後
学校公演先でその当時の音楽の先生と再会する
校長先生となっていたその先生にこの事実を話した時
先生はこの小冊子の存在を知らなかったようで(本当かどうかはわからない)
(そりゃそうだ 段ボールから楽器を出したのはワタシで その時見つけた小冊子は先生に何も言わず教本として使っていたから)
『それは君の元へ行くためにあったのだから大事に持っていなさい』
と言ってくれた
(そりゃそうだ 今更返されても先生は困る)
初めてお仕事で猪俣さんにお会いした時にこの中学生の時の盗人話をした
売り出されているドラムセットに付属されたものは大抵残らない
それを持ち続けていたことに驚き
ありがとう
と言ってくださった
明確な表現手段とその努力の結果を伴わないワタシは猪俣さんの死を知り
当時のその大きすぎる夢の入り口付近でまだウロウロしている事に気づく
だから
何度も見返したこの小冊子
それを書いてくださった猪俣さんに
心から感謝しながら
またこの小冊子をめくっていこうと思う
Masa...