スカーレット手帖

機嫌のいい観客

RENT3回目 と、WYOについて

2015-10-12 | 観劇ライブ記
RENT東京千秋楽おめでとうございました。
すごい演目だった。RENTの世界を知ることができて、没頭できて本当に楽しかった。


時系列は遡って3回目の話。
10/4の昼の回でした。
ミミがジェニファーな以外は2回目と同じ顔ぶれ。
初ジェニファーはパワフルさがすごかった。
あと声が綺麗で歌がめちゃくちゃ上手いのに、抑揚がしっかりついているので
聞きいってしまう。演歌のようでもあり、ソウルのようでもあり、
感情が入っているようでもあり、技巧のようにも聞こえ。
Soweluは「感情に突き動かされている私!」という感じで、
技巧というよりはその情動がガツンと来るかんじだったので、違いが面白かったなあ。
Out Tonightでは「めっちゃつよそう」という印象が全面に出てきて「こわい」
とすら思ったのに、不思議とロジャーと並ぶとかわいい女の子に見えるジェニファー。
驚異的な小顔だからということかもしれない。
そんなこんなでジェニファーについて考えていたら3時間終わりました。
それ以外は、相変わらず平間かわいさが止まらず、村井先生が冒頭でちょびっと噛んだなかわいい
というところを味わいつつ。安心して見届けながら最初から最後まで静かに泣いていました。
今回は尻ペチンがなかったな。

あと、複数回見ていると動線にまで気が回るようになってくるのか、
今更ながら終盤のほうのアンサンブルメンバーの素早すぎる入れ替えに気づいて
すごいなと思った。
終盤のマミーズによるVoice Mailからのクリスマスベルズアーリーンギング のところ
数十秒で着替えて移動してますよね?
あとは、アレクシーによる「魂売ってちょうだ~い」(ここはいつも「ピアノ売ってちょうだ~い」を連想)からの
Contactの移動とか。八面六臂の活躍に拍手。


そして、今回、舞台全体の感想というか
回数を見るたびに感じていたことをを言いたいので書きますね。

What You Ownの歌詞が聞くたびに噛み締めたくなる味わいがすごくてめちゃくちゃかっこいいのと
それをマークとロジャーがふたりで歌うのめちゃくちゃ萌えるな。

もともとの英語の歌詞の単語がきっぱりしてるんだけど
日本語もいいんだよ。


①「What You Own」の解釈

「own」って大意としては「負うん」だぞー
と習ったような気がします。
マークが歌う最初のサビの部分、

You're living in America
At the end of the millennium
You're living in America
Leave your conscience at the tone

And when you're living in America
At the end of the millennium
You're what you own


ざっくりいうと
「この世紀の終わりにアメリカで生きる
 良心を捨てされ
 お前はお前の背負っているものだ(お前自身だ)」

だと思うんだけど、
これを、
「生き抜くアメリカ 20世紀の終わり
 生き抜くアメリカ 魂捨てろ
 生き抜くのさアメリカ 自分だけがすべてさ それだけ」


と歌うんですよ。(たぶん。記憶によると)
ここの、村井くんの歌う「それだけ」がいいんですよこれが。
「深く考えこまずに、とりあえず目の前の仕事をさばかなきゃ、生き抜け」感がめちゃあると思う。
本当にやりたいことではない、モヤモヤしている、だけどやりぬかなければ。
「それだけ」という短い言葉がぐっと、その諦念を表していると思うし、
村井くんの抑えた歌い方がハマっていた。

映画版では「この国の人間は財産で人を決める」
という訳し方だったのだけど、これもまた、味わい深いと思う。
What You Own、
前向きに訳すなら「お前自身だ」
後ろ向きに(皮肉に?)訳すなら「お前の持ち物だ」
てな感じなのだろうか。
それにしても「それだけ」が渋い。村井くんに合っている。


②フィルムメーカー/ソングライター つまり、「おれとおまえ」

2番冒頭、(ミュージカル曲だから1番も2番もないかもしれないがサビ後の2回目のAメロ)

ロジャー:フィルムメーカーは見えない(The filmmaker cannot see)
マーク:ソングライターは聞こえない(And the songwriter cannot hear)
ロジャー:俺にはミミが見える(Yet I see Mimi everywhere)
マーク:エンジェルの声聞こえる(Angel's voice is in my ear)


ここの対称感がいいよ。
フィルムメーカーは映像作家を目指すマークのこと、
ソングライターはかつての売れっ子ギタリストロジャーのこと。
ここでいう「cannnot see/hear」というのは(真実の・自分たちがほんとに目指しているものが)「見つかってない・模索の中」
ということだと思うんだけど、それを、物理的には遠く離れている互いについて歌っているところがいい。

「あいつはあいつのやりたいことを見失っている(撮りたい映像/歌いたい最高の歌)」(俺も)
「迷いの中、心のままに今を生きる仲間(ミミ/エンジェル)のことがよぎる」(俺も)

同じ意味のことを繰り返し歌っているのだけど「see/hear」という本来発揮すべき力の部分を
入れ替えてあるがために、なんというか、シンメトリー萌えがすごいよ。

ここが、葛藤を歌った後の大サビ前で(日本語だとややこしいので英語で)

マーク:Angel, I hear you, I hear it I see it, I see it, my film
ロジャー:Mimi I see you, I see it I hear it, I hear it, my song


本領発揮すべき領分にたどり着くんですよ!
マークがseeできてロジャーがhearできた!
マークはやりたくない仕事に飛び込んで揉まれているうちに
ロジャーはコリンズが言っていた桃源郷サンタフェにひとりで逃避するうちに
自分を見つめて、仲間のことを考え、やはり夢を追うことをそれぞれに思い出す
ふっきれた!よかったな! というところ。
よかったな~相棒感あるよな~~~~~
ベタだけど萌えるな~~~~ ひとりじゃないからね~~~~


③「Living in America/Dying in America」の起死回生感

ここでもラストサビ話ですが、

Dying in America
At the end of the millennium
We're dying in America
To come into our own


生き抜く → 死んでくとなっているのが時間の有限さを感じて美しい。
ここらへんからもう「No day but TODAY」につらなる
不退転の覚悟というか、瞬間の美学的なものを感じる。
RENT作品全体をつらぬくテーマですね。
「(525600)moments so dear」ですね。

ちなみにこのラストサビ前の

What was it about that night
Connection in an isolating age
For once the shadows gave way to light

For once I didn't disengage

(ざっくり訳)
あの夜はなんてすばらしかったのか
孤独な時代につながりを感じられた
影に光が当たり 絆があった 

てな感じだと思うのですが、
ここを今回の歌では、

あのときたしかにあった ひとつになれた瞬間が
あの光がなければ俺は逃げなかった


と歌っている気がするんですよ。(あんまりちゃんと聞き取れてないんだけどたぶんこう言ってたよな という願望を込めて)
ここの訳も秀逸が過ぎるだろう、と思いました。
去年のクリスマス、ラヴィ・ボエームを歌った最高の夜。
ハロウィンの日にマークが「なぜこうなったんだ」と後悔したあの日を、
ここでも「あの光がなければ」と言いながらも、反語の印象効果がすごい。
あの特別な日のConnectionの喜びやlightの素晴らしさが無い今日も、
自分で一歩一歩進むべきと前向きに捉え直し、今を生きようという意思が溢れてくる希望の歌だなと思います。

・・・


ということで、
あらゆる伏線に触れながら、いろいろと辛い2幕をまとめてフィナーレに向かって上げていく
リアリティある前向きソング「What You Own」ほんとにすばらしい。
そんで、村井・堂珍のハーモニーが好きだ。

まとまりがないけどとりあえず書いたので、以上、発表を終わります。

※ここで書いてる2015の日本語歌詞はほぼ私の記憶または思い込みなので東宝さんは2015の日本語歌詞一覧をはよ出しとくなはれ。
もっと読み込んでべんきょうするさかい。