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人生の裏側

人生は思われた通りでは無い。
人生の裏側の扉が開かれた時、貴方の知らない自分、世界が見えてくる・・・

忘れられた思想家.出水日出男③

2019-04-12 04:59:57 | 創作
先に触れたように出水日出男は、国内での活動が困難だった理由もありましたが、元々"大道"を世界に宣べ伝えようという志が強かったのか、海外に出向くことが多かったのです。「この大道は、より普遍世界の中にあって、受容され、根付かなければなければ意味は無い」という言葉も残しているくらいです。
大戦直前、フランスで出された「ある有閑人の旅日記」という一書は、その諸国行脚、そこで出会った様々な宗教家、思想家との交流の模様を記したものです。
(尚、出水日出男の言葉の引用に現代式と旧式の文体とがあるのは、彼の書物が軍国主義の強かった頃出され、残っている原本に拠るものと、同書のように国内出版が禁じられていたので、フランスで出されたものを戦後翻訳された❬訳者は、飯別志太郎❭ものとがあるためです)
大正時代後期は、"諸宗教の一致"というヴィジョンの実現に力を注いでいた頃で、中国の道院紅卍字会やイランのバハイ教、あるいは神智学協会といった、当時台頭していた海外の新宗教を訪れ、交流を深めていました。
又、イスラエルではさるユダヤ敬虔派(ハシディズム)のラビと接見しており、「東洋と西洋の精神的和合には日出づる国(日本)と日入る国(イスラエル)との和合が必要なのではあるまいか」と記していますが、国内では陰謀論と絡めた反ユダヤの論議が高まっていた中でもあり、益々国家から警戒されたようです。
この大戦前頃からは、ずっとフランスに拠点を移して、幾つかの宗教、哲学のサークルなどを通じて例えば...アンリ.ベルクソン、マルティン.ブーバー、ジャック.マリタン(フランスの哲学者。新トマス主義を称えた)&ライサ.マリタン(前者夫人。カソリックの神秘思想家)ヘルマン.カイザーリング伯爵(ドイツの宗教哲学者、ヨガ、禅などの東洋思想を西欧に紹介した。主著「ある哲学者の旅日記」)などの有名、無名のその界隈の人たちと交流を重ねて行きましたが、特に印象が深かった出会いは、ロシアから亡命して、同じようにフランスに居住していたニコライ.ベルジャーエフとのものだったようです。
晩年一時帰国した折りにも記者に「ある哲学の会合で初めて会ったが、当初は私を快く思っていなかったようだったよ。"東洋の異教徒めが、何しに来たi"というような目で見ていたように思う。しかし、私がスピーチを始めると、見る間に表情が変わり、その最後には向こうから握手を求めてきた。"我々は精神の内奥で、普遍調和(ソボールノスチ)を分かち合うことが出来ますねi"と言ってくれたよ。我々は非常に言葉を超えた霊的感応に与る機会を得たものだった」と述懐しておりました。
さらにこう結んでいます。「人間は誰しもその内に神とつながる交点を有している。どうして諸人はこの内なる聖所に帰らずに、異邦の神にばかり群がりたがるのだろうか? あなたたちには、その聖所から正神が現れ出ようとしている声が聞こえないだろうか? 宗教、思想の違いを超えて、一人一人がそのご意志に聞くことが出来れば、幻想でない本当の神の国が実現するのだ」
彼はついに故郷に帰ることなく、仏国の地で客死しました。
しかし、本当の故郷は別の世界にあったようです。

出水日出男という思想家をご存知でしょうか? ご存知のはずはありませんね。実在しない人物だからです。
もし、出口王仁三郎師がある面で反目しあったりなど、微妙な関係にあったインテリ層の中から登場したら...と仮定して映る像をメインに、同時代の国学者筧克彦博士(主著「神ながらの道」人の内奥には共同体的つながりを有すると説いた)、ベルジャーエフ(上に列記した人物と親交があった)などをモデルにして作り上げてみたのです。
私が思い描いている、このような日本人が20世紀の精神、霊性の発現者として存在していたらなあ、という一種の知的遊戯を表してみたまでです。
そして書いているうち、何か表面的な20世紀の歴史の、もっと底のほうで動いている歴史の裏側のようなものを感じてきました。そこには戦前も戦後も無く、人間の作った体制によって生まれたり、消えたりするものでは無いはずです。時代は変わり、それがより顕になってくるのを覚えています。(終わり)
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