太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

あえて地雷を踏む

2024-04-04 08:00:08 | 日記
夫には、持病がある。
脳の、普通の人なら普通に分泌されるナントカ(どうしても覚えられない・・)という物質が、うまく分泌されないらしい。
その物質が分泌されないと、落ち込みやすくなり、夫のウツっぽくなりやすい原因はそこにあるようだ。
仕事のストレスでひどいウツになった20数年前から、心療内科にかかるようになり、その物質と同じ働きをする薬を毎日服用している。

夫は普段は温厚でユーモアがあり、親切で、とても良い人間なのだけれど、なんでもないようなことがきっかけで、「プツ」と切れることがある、ということに気づいたのは、結婚してしばらくたってから。

その何かに対してワーっと怒って、Fワード満載で、それを見ている私まで嫌な気分になって腹立たしい。本人はわりとすぐにケロリとするが、私はその嫌な気分を引きずってしまい、それがまた腹立たしい。

最初の結婚で、私は我慢の上に我慢を重ねて、「これでも怒らないスゴイ私」になることで変なプライドを満足させていたので破裂した、という経緯があったから、今の夫とは同じ過ちを繰り返すまいと、最初の頃はいちいち自分の気持ちを伝えて、事を荒立てていた。
あるとき、そういう私に夫が言った。
「頼むから、掘り返さないで。放っておけば、流れて消えていくから」
夫も、自分の気持ちをどうにもできないのだろう。
けれど、それを浴びせられた私はどうなる?

今は、たいてい見て見ぬふりをする。
放っておけば、すぐに元に戻るのがわかっているし、反応しないに限る。
でも、時々、あえて地雷を踏むことがある。

それが今朝のこと。
機嫌よく起きてきた夫が、朝食を食べる前にゴミをまとめて出そうとしたら、猫が遊んだ玄関ドアマットが丸まっていて、ドアがあけられない。
そのマットを、おおげさに思い切り足で蹴り(まるでゴールを目指すサッカー選手のように)マットは遠くに滑っていった。
いつもなら、見て見ぬふり。しかし今日は違う。

「なんでそんなふうに蹴るのさ?横にまとめておけばいいだけじゃん」

ここで予想どおり夫は着火。

「両手は一杯だし、こんなマットがあったら開けられないじゃないか!(この中にFワードがいくつもはさまる)」

「なに怒ってんの、こんな些細な事で。いちいちF***、F***ってバカみたい」
私は冷静に言う。

「怒ってなんかない!黙って食べたら!$%△@+?◇(何て言ったかもう忘れた)」
夫は私の真横に立って、わめく。その顔は仁王みたいだ。

「Look at you(自分を見てみな)」

私はますます冷静になって、それだけ言って朝食を食べ始めた。
夫はぷりぷりしながら、水筒の用意などをしている。
さっさと食べ終えた私が食器を片づけていると、食卓についた夫が言った。

「味噌汁、おいしいよ、ありがとう」

「どういたしまして」

2階に上がった。
ちょっとゴロゴロして、コーヒーを淹れに下に降りた。
支度を終えた夫が降りて来る。
いつものように、お弁当と水筒を持って、見送りに出る。
その間、二人とも黙ったまま。
車に荷物を入れる。

「コーヒー、作ってくれてありがとう」

「どういたしまして」

ドアを閉めるとき、

「怒らせて、ごめんなさい」

「いいよ、もう。いってらっしゃい」

自分でも、キレるのをどうにもできないのだというのはわかる。
それが脳のナントカ物質が足りないからだというのも、わかる。
そこを責めるのは気の毒だとは思うけれど、私の気持ちはどうなる。
見て見ぬふりをしても、それは何もなかったのと同じではないのだ。
イラつく夫のイライラ光線を浴びて、とても嫌な気持ちになった私はどうしたらいい。
だから、時々、お知らせをする。
「こーんなに嫌な思いしてるんだからね」と。
些細なことで仁王のように怒っている自分が、どんなにアホらしいか、改めて気づけばいい。
ただ、大きな救いなのは、夫がそれに気づいて謝るだけの聡明さをもっていることだ。
前の結婚相手は、理由のわからない彼の臍曲げに対して、私が謝り倒すまで何日でもだんまりと無視を通す人で、私はほとほと疲れ果てた。


聡明な夫に感謝はしているが、それでも何回かに1度は、あえて地雷を踏むのである。









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