ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

日本のサービス・デリバリー・システムについて(2)

2008年11月22日 | 社会福祉士
②第2のターニングポイントの特徴と課題
・2000年;社会福祉法の制定
・2000年;介護保険制度の施行

 この時点が「社会福祉基礎構造改革」に当たるが、2000年に先立ち、既に1997年の介護保険法制定で、高齢者政策が先行する形で、社会福祉基礎構造改革を先導していった。このことは、その後に、障害者や児童のそれぞれに分野で、未だ実施されていない保険によるサービス供給のあり方が議論されていることからも、一歩先んじた改革であったことが窺われる。

 サービス・デリバリー・システムは、在宅介護支援センターから、介護保険制度では居宅介護支援事業所に受け継がれ、ある意味、契約制度を盾にして、利用者が自己責任でサービスを選択することを可能にした。この結果、在宅介護支援センターで困難とされた問題が解消された。それは、すべての介護保険サービス該当者が居宅介護支援事業者のケアマネジャーを介して介護保険サービスを利用することになり、同時に、作成したケアプランは利用者に決定権があることになったことである。ここでは、在宅介護支援センターで養成された人材が、居宅介護支援事業所の主要メンバーとして移行していくことになり、試験と実務研修でもって、社会福祉士を含めて10数種の国家資格取得者等を対象に、介護保険制度実施前に既に16万人ものケアマネジャーを養成した(現在までに、約43万人養成)。

 具体的には、居宅介護支援事業所は単に社会福祉法人、医療法人だけでなく、営利法人にも開放され、実施されることになった。同時に、従来あった中学校区といった地域を限定した活動ではなくなり、個々の利用者とケアマネジャーの関係で対応するものとなった。

 この居宅介護支援事業者を導入したことのメリットは、利用者の見方がサービスの「対象者」から「利用者」といった視点が強くなり、必要な人に適切なサービスを届けることができるようになった。このことは、逆に言えば、ケアプラン作成機関とサービス提供機関が同じ法人内で実施されるため、過剰なサービス利用になる傾向を生み出した。

③第3のターニングポイントの特徴と課題
・2005年;障害者自立支援法の制定
・2005年;改正介護保険法の制定

 第3のターニングポイントの特徴は、現在も続いているが、財務省や経済財政諮問会議から社会保障財源の圧縮を求められる中で、第2のターニングポイントで確立したインフラとそのデリバリーの仕組みをより有効に機能させるための対応と、効率化でもって財源の削減を図ることにある。その意味では、改正介護保険制度同様に障害者自立支援法もそうした意図のもとで制定されたといえる。効果という点では、利用者により質の高いサービス提供を目指すとともに、効率という点では、ニーズの程度が低い部分を削り取り、財源の削減を導き出すことにあった。

 障害者自立支援法は,完全ではないが高齢者と類似のケアマネジメントを含めたサービス・デリバリー・システムを作り、施設も居住の場として位置づけ、保険と租税の違いはあるが、介護保険制度と極めて類似するサービス・デリバリー・システムを作り上げた。これ自体は、ある意味、障害者を介護保険制度の対象に組み入れる方向付けをしたとまでは言わないが、高齢者と障害者を一体的に対応できる体制ができあがったことは確かである。これは、すべてのライフサイクルの人々に対するパーソナル・ソーシャル・サービスやそのデリバリー・システムを一括して対応していくための準備期としても受け取ることができる。

具体的には、相談支援事業所の相談支援専門員がケアマネジャーとなり、障害者ケアマネジメントを実施していくことになる。ただ、このシステムが十分機能していないのは、利用者を重度者や施設退所者等に限定しているため、利用者が利用できていない状況にある。同時に、ケアマネジャーは、一定の研修を受けた者に与えられるため、十分な能力を有した者が実施しているのではないという問題をもっている。
 
一方、高齢者のサービス・デリバリー・システムは、財源抑制の結果として、要支援者と要介護者で窓口が異なり、前者は地域包括支援センター、後者は居宅介護支援事業所が対応し、ケアマネジャーが替わるだけでなく、サービス内容、アセスメント・ケアプラン票さえも変わることになり、生活の連続性を崩すことになった。一方、パーソナル・ソーシャル・サービスを行政措置から、利用者が自己選択する契約でのサービス利用に転換し,それに伴い,第3者評価制度の導入,地域福祉権利擁護事業や成年後見制度といった権利擁護事業の開始,サービス利用に対する苦情対応で,利用者の契約を可能にする体系を整えていった.


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