ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

社会福祉士の今後―「社会福祉士及び介護福祉士法改正」後の課題―⑤

2009年05月07日 | 社会福祉士
6. ソーシャルワーク全体としての資格制度の体系化

 社会のニーズに応えた人材を養成していくためには、社会福祉士というジェネリックな視点を基礎にして、さまざまな領域で応用能力をもったソーシャルワーカーを養成したうえで、そうした人材が社会的に認知、評価され、さらには雇用される仕組みが必要である。そのためには、まずは、社会福祉士を土台にして、追加的な実践能力が高い人材養成となるべく教育内容の質を担保することが不可欠である。それにより、社会からの信用を得ることになるが、それを担保するため、また、社会的認知を促進するためにも、図のような認定制度を提案したい。

 この図で示した認定ソーシャルワーカーは例示に過ぎず、将来的にはこれら以外の領域も考えられる。なお、最近話題になるコミュニティ・ソーシャルワーカーについて、社会福祉士養成教育そのものがそうしたソーシャルワークの育成をめざしている。特に今回のカリキュラム改定では、コミュニティで活躍する人材として社会福祉士を位置づけており、認定するのであれば、スペシフィックな社会福祉士養成を深化させることで、認定コミュニティ・ソーシャルワーカーをつくっても問題はないと考える。さらに、施設ソーシャルワーカー以外のスペシフィックなソーシャルワーカーも、ある意味、コミュニティ・ソーシャルワーカーに相当するといえる。
 
 こうした認定ソーシャルワーカーは、特定領域で活躍するソーシャルワーカー像をもとに、社会福祉士資格科目に付加した科目を履修するものであり、最終的には、現在仕事をもっている社会福祉士や潜在社会福祉士を対象にして、定められた科目の受講をもとに認定していく仕組みが基本であり、それを社会福祉士養成校が補完していく仕組みである。前者については、できる限り実務経験を活かし、通信制やeラーニングを活用し、働きながら取得可能な仕組みをつくる必要がある。後者については、それぞれの大学等が拠点校になることができ、できれば単位互換制度で、他の大学の学生も受講できることが望ましい。
 
 こうしたスペシフィックな職場では、他専門職はメジャーであり(例、施設では介護職、医療では看護などの医療職、学校では教諭)、ソーシャルワーカーはマイナーであり、ひとり職場の場合も多いことから、認定ソーシャルワーカーには、認定資格を出している拠点大学や職能団体が、職場を超えたスーパービジョン体制を準備する必要がある。あるいは、継続教育という意味では、認定後にさまざまな研修機会を準備し、更新制度で対応することも可能である。
 
 以上の認定ソーシャルワーカーに加えて、社会からのソーシャルワークに対する要請も時代とともに変化していくため、そうした課題に応えられるソーシャルワーカーの再教育が不可欠である。これについては、職能団体や可能であれは関係学会が中心となり、時代に即したソーシャルワーカーの課題別研修を体系的に実施し、それも認定していくことが求められる。それは、現在求められている「退所・退院」「虐待」「就労支援」といった全領域にまたがる課題別の認定であり、その時代その時代に求められる能力を付与するものである。
 
 一方、経験をある程度積んだ社会福祉士がキャリアパスのもとで、スーパーバイザー(中間管理職)や施設長になっていくためには、法改正での附帯決議でもふれられ、2007年8月に改正された「福祉人材確保指針」でも言及された「専門社会福祉士」を設置し、認定していくべきである。ここでのカリキュラムは、社会福祉士としての能力確認に加えて、「スーパービジョン論」「施設マネジメント論」「地域マネジメント論」「会議運営論」「法人経営管理論」といった科目習得が必要となる。
 
 以上は、私個人の私案に過ぎないが、こうした仕組みをつくることにより、ソーシャルワークの広範囲の領域が確定され(福祉六法の領域を中核にしながら)、同時に大学卒の新人から管理職までの職業人生における、一定のキャリアパスがつくられることになり、ソーシャルワーク全体のアイデンティティの確立につながっていくと考えている。
 
 ただ、こうした仕組みをつくっていくには、学校等の養成施設、多くの職能団体、社会福祉だけでなくさまざまな施設や団体・機関の関係者、さらには国・都道府県・市町村の行政が力を合わせないと、実現は不可能である。


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