ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

障害者自立支援法での「障害者支援施設ケアプラン」

2008年05月17日 | 社会福祉士
 全国社会福祉協議会から『障害者自立支援法対応版 障害者支援施設のケアプラン』が4月に刊行された。これは私が委員長で研究者や実務者で委員会を構成し、障害者自立支援法のもとでの障害者施設のケアプラン作成について検討してきたが、その成果である。もともと、身体障害者施設でのケアプランについては刊行してきたが、今回の障害者自立支援法に対応して、その内容を全面改正したものである。

 障害者自立支援法では、施設のケアプランが義務化され、以前には身体障害者施設のみをターゲットにして検討していればよかったが、今回は三障害が一体され、全ての障害者施設を知的障害者、身体障害者、精神障害者が区別なく利用することになるため、アセスメント・データでは、三障害の特性を考慮したものに変更する必要があった。

 今回の改訂版を作る作業の中で、障害者自立支援法になり、ますます施設で作成され、実行されるケアプランが極めて重要な意味を持ってくることを感じた。それは、以下のような理由からである。

 第一に、障害者自立支援法では日中活動と夜の居住支援部分が別個の報酬になり、理念的には、利用者の自己選択や、施設に居住施設化としては意義があるが、現実には、利用者の生活が分断されるのではないかと心配していた。

 その意味では、入所者の意向を尊重した日中活動を含めたケアプランを作成することで、毎日の生活の連続性を確保するシームレスな生活支援が可能になる。同時に、一施設内サービスに留まらない以上、在宅のケアプランに近づいていくことになる。このことは、施設が居住の場に変わるだけでなく、本法律の趣旨でもある地域移行を容易にすることとつながっていく。このことは、施設での実のあるケアプランを作らないと、利用者は以前以上にバラバラな生活になってしまう恐れがある。

 第二に、障害者自立支援法では就労支援を強調するが、施設内外での授産や就労前サービスを含めたケアプランを作成することで、社会復帰を支援していくことでも、ケアプラン作成の意義が今まで以上に強くなっている。場合によっては、「自立訓練」、「就労移行支援」、「就労継続支援」とも結びつくことができ、利用者の個別性を尊重した就労支援につながっていくからである。

 第三の理由は、施設から地域に移行を進めることについての意義である。ある論文で、知的障害者施設についてであるが、個々の入所者のケアプランを積極的に作り実施している施設ほど、地域移行比率が高いという調査結果がある。この結果について真意は分からないが、興味ある結果であることは間違いない。

 ある意味では、地域移行していく段階で、利用者のプランは「施設のケアプラン」、「地域移行のケアプラン」、「在宅のケアプラン」があり、3つのケアプランをいかに連続性のあるものにしていくのかがポイントである。そのため、「施設のケアプラン」のおいても、地域移行に向けての利用者の目標や意向、そのために必要なニーズを付加し、それらに対応した支援内容が示されることになる。そうすれば、在宅生活に加速した支援になっていくといえる。 

 『障害者自立支援法対応版 障害者支援施設のケアプラン』では、以上のようなことに対して必ずしも十分な議論ができたとは思っていないが、それなりの整理ができたと思っている。また、さらに今後も充実させていきたいと思っている。

 障害者施設の方だけでなく、介護保険施設の方、さらにはケアマネジャーも、関心のある方は是非お読み下さい。特に、介護保険施設でケアプランに関係している人には、入所者の「したいこと」、「好きなこと」、「できる」といったストレングスを捉えるアセスメントを、さらにはこうしたストレングスを表現できない認知症等で意思表示が十分でない人へのアセスメントについては、職員が感じたり、気づくことの重要性を本著から学んで欲しいと思っている。




 

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (鄭 明鎬)
2008-05-15 16:49:15
今日は貴重な時間を頂きましてありがとうございました。4年間よそ見せずに障害者施設の現場で精一杯利用者と向き合って来ましたが、時折、非日常的な生活を通して自分を見直し、ケアを見直すことも必要かなあと思いました。今日はありがとうございました。
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現場でも知的好奇心をもって (白澤政和)
2008-05-15 17:38:00
 厳しい職場環境の中で、日々利用者を支援するご苦労がよく分かりました。厳しい中でも知的な好奇心をもちながら、仕事に励んで下さい。いつか韓国で仕事をする際にも役立つと思います。また、社会福祉士資格についても受験に向けてがんばって下さい。
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ネットワーキングの道具が必要・・ (しげくま)
2008-05-19 09:15:17
おひさしぶりです。

先日しげくまの地域で「地域療育システム検討会」があ
り、かねてからの「連携ファイル」が今年度から本格実施となりました。

「連携ファイル」は、関係機関共通の記録用紙で、
初回面談用と、活動評価用の2つを保護者に交付し、同じ視点で関係機関がケースを把握し、援助を継続させるという地域療育の考えでいます。

保育園・幼稚園、学校がこの「連携ファイル」を使うことで、ネットワークできればと思います。
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うまくいったら紹介してください (白澤政和)
2008-05-19 21:41:42
 コメント有り難うございました。

 うまくいったら、教えてください。それは、「連携ファイル」と同時に、どのように対応すれば活用できたかのノウハウも教えてください。
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