ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

日本のサービス・デリバリー・システムについて(4)

2008年11月26日 | 社会福祉士
4 サービス・デリバリー・システムの利用者にとっての意義
 
 サービス・デリバリー・システムの意義は、サービス利用を円滑に進めることにある。それは、高齢者の生活の継続性を支えることである。

 生活の継続性(continute of care)とは、高齢者がその時その時に必要な支援が受けられ、普段通りの生活を継続できることである。利用者の全人的な捉え方である「生活の継続性」についての基本的な考え方を示してみる。

 ここで言う「全人的な捉え方」(holistic approach)とは、利用者を身体・心理・社会的な側面から捉えるということであり、同時に過去・現在・未来につながる存在として捉えることである。そのため、「生活の継続性」とは、利用者のその時点での空間的な生活の連続性と、もう一つは利用者の時間的な生活の連続性があると整理できる。利用者の空間的な連続性とは、利用者に対して、ある時点で、利用者のニーズに合わせて、各種のケアが隙間なく連続して提供されていることである。後者の時間的な連続性とは、利用者のニーズの変化に合わせて、必要なケアが必要な時点から終結時まで、連続して中断することなく円滑に提供されていることである。ソーシャル・デリバリー・システムは、利用者をこうした空間的・時間的な連続性を維持していくという考え方のもとで、利用者を全人的に支援していくことである。
 
 第一の連続性である利用者の空間的な生活の連続性とは、利用者に対して、ある時点での空間的なサービス提供の連なりでもって、利用者の生活が支えられていることを意味する。すなわち、利用者の持つさまざまなニーズが充足されるよう、必要とするフォーマルサービスやインフォーマルサポートが隙間なく利用できていることである。その実現によって、個々の利用者に対して、保健・医療・福祉などの諸サービスが連携して提供されることになり、さらには、家族や近隣といったインフォーマルサポートも、連続して一体的に提供されていることになる。このことは、利用者がある時点での生活上で生じた各種のニーズを過不足なく充足させていることである。この過不足のない社会資源の提供とは、利用者の有しているセルフケアができる限り活用され、さらにそれを補足したり強化するために、インフォーマルケアとフォーマルケアが活用される状態である。すなわち、供給主体の観点から見れば、セルフケア、インフォーマルケア、フォーマルケアが連続して、個々の利用者の生活を作り上げていることである。ニーズへの対応という観点から見れば、利用者の生活上の様々なニーズである保健・医療・福祉・介護・住宅・経済・社会参加等の様々なニーズに、その一瞬の時点で対応できていることである。
 
 第二の利用者の生活の連続性とは、時間的なものであり、利用者に対して、開始時から終結時まで、時系列的に継続して生活が支援されることである。その際に、利用者の持つ過去・現在・未来という時間の経過を追いながら支援していくことである。具体的には、個々の利用者の持つニーズの継続的な変化に対して、ケアマネジャーが敏感に対応していくことである。その際には、利用者の過去の価値観や文化を尊重しながら、現在の生活を支えることを目指す。同時に、利用者が将来的に目指している目標に向けて、現在の生活の状況をとらえていくことにもなる。
 
 このような利用者が有する時間的な経過のなかでの支援から考えられることは、在宅から施設へ、あるいは施設から在宅へと生活の場を移行する際にも、継続した支援が必要である。施設に入所する場合でも、施設や病院から在宅に復帰する場合でも、利用者のニーズに合ったフォーマルケアやインフォーマルケアが適切に過不足なく提供され、同時に利用者がそれまで有していた価値観や文化が継承できるものでなければならない。そのため、高齢であれ障害を持っていようとも、「利用者は自らの自己実現に向けて常に発達していく」といった価値観を持つことが大切であり、そうした視点のもとで、個々の利用者に対して生涯にわたり必要なサービスが継続的に提供していくことが求められる。

 以上に挙げた二つの連続性という観点から、利用者には“シームレス・サービス”(seamless service:縫い目のないサービス)が提供されることになる。すなわち、現時点でも、利用者のニーズに合ったサービスやサポートが連続して縫い目なく準備されており、さらにサービス利用開始時から終結時まで途切れることなく、時間的に縫い目がなく必要なサービスやサポートが提供されていることである。このことは、利用者の置かれている状況を、現在の空間に時間の過程を加えた四次元の全体像としてとらえ、全人的な支援を行っていくことを意味する。
ケアマネジャーは生活の連続性の支援を、直接利用者にサービスやサポートを提供している人々と連携しながら、推進していく役割と責任を担っていると言える。


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