ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

訪問介護サービスも老老介護

2009年08月10日 | ケアや介護
 現在、訪問介護事業者を中心に、民間の在宅介護サービス事業者の高齢者雇用の実態に関する研究会に入って勉強している。そこで、訪問介護事業者での担当ヘルパーの年齢構成のヒヤリング結果を聞いて、驚いた。ある大手の事業者では、登録ヘルパーは60歳以上70歳未満が28.3%、70歳以上が3.8%を占め、80歳以上の方も数名いるという。この事業者程ではないが、他の事業者でも同じような傾向が見られた。ある程度は予測していたが、ここまでヘルパーの高齢化が進んでいるとは思っていなかった。

 この結果、個々の家族内で老老介護がなされているだけでなく、介護保険という社会制度においても、老老介護が行われているということである。今回の研究は、高齢者雇用の促進ということがテーマであるため、非常勤・パートの担当ヘルパーの高齢雇用は相当進んでおり、それなりの評価が得られるものである。

 さらに、雇用されている高齢の登録ヘルパーのヒヤリング結果では、仕事に生きがいを有しており、給与とかの問題は出ていない。その意味では、日本の高齢化を考えると、こうした人々が増加することで、年金や税を使う人といった高齢者から、できる限り働き、税金を払う高齢者への方向を修正している企業集団であるとも評価できる。
 
 一方、高齢者が中心になっている担当ヘルパーについて、配慮しなければならないことも、多く浮かび上がってくる。

①現状での訪問介護において、どのような内容の介護が高齢者には適切か? 

 加齢により身体面での体力が衰えていくことはいがめない。そのため、身体介護というよりは 家事などの生活介護が中心にならざるを得ない。また、長年の経験をうまく生かすことができれば、認知症介護にも効果は大きいといえる。ただし、こうした高齢者が多いことを考慮したリスク管理が必要になっている。

②逆に、若い担当ヘルパーが少ないことをどのように考えるのか?さらには、どうすれば増えるのか?

 これには、おそらく多くのヘルパーは子育てが終わった層が、2級等のヘルパー資格を取得し、再雇用されている場合が多い。その際に、非常勤・パートタイムという職であり、相当給与が低いことが予想され、この仕事で家族を養っていくことは不可能であろう。そうすれば、誰か一家の大黒柱が別にいて、家計を補完する位置で仕事をしていることになる。ある意味では、「生き甲斐」で仕事をしていることが多い。

 これであれば、若い学生が卒業して、このような非常勤・パートタイムで働いてくれることが、土台無理であり、現実にもそうした人はほとんどいないのが現実である。そのため、非常勤・パートタイムを基本にするとしても、一定の収入が得られることが必要であり、そのための介護報酬アップが求められる。今回の介護職員処遇改善給付金では、15%程度の収入増が確保されることは意味があるといえる。

③こうした人々に介護福祉士資格の取得を求めるのか?

 現実に担当ヘルパーは密室での1対1のケアであるため、専門性の担保が不可欠である。厚生労働省でも、ヘルパーが介護福祉士資格取得までもっていこうとしているが、困難が予想される。子育てが終わった時点で、2級ヘルパーを取り、それからさらに国家資格取得となれば、どの程度の者がそこまで辿り着けるかに問題がある。そのため、2級資格ヘルパーをベースに、義務化された継続教育でもって、水準を高めていく方法がベストのような気がする。但し、介護福祉士資格取得を決して拒むものではないことも、追加しておきたい。

④若いサービス提供責任者と高齢の担当ヘルパーの関係をどのように作るのか?

 短期大学等を卒業してくる若い方は、常勤職で採用されることになり、早い時期にサービス提供責任者となる。そのため、若いサービス提供責任者が高齢の担当ヘルパーを支援・指導する立場になる。このことが、社会経験も加味した仕事であるホームヘルパー業務において、両者の関係が円滑に進むのかという不安がある。その意味では、子育てが終わって担当ヘルパーになった者についても、サービス提供責任者になる機会を、継続教育の中で作り上げていく必要がある。

 以上のことを考えると、基本的にホームヘルパーの業務には、キャリアパスの仕組みがほとんど確立されていないことになる。サービス提供責任者の終着点は決して介護支援専門員になることではなく、ホームヘルプ業務の中で、熟練し、管理者になっていくステップアップを作っていくことが大切である。その際に、常勤職と非常勤・パート職の2本のキャリアパスを作り、さらには、ある時期には、非常勤・パート職から常勤職へ、パスが移れる仕組みも大切である。